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「プ、プロポ…」
想定外の発言を連発され、ナップは完全に面食らっていたが、なんとか胆力をふりしぼって疑問をぶつけた。
「んじゃさ、その五年間は、あの魔女とどう関わるつもりなんだよ?他のやつとくっついたりするかもしれないだろ」
もう一つ、五年の間にメイシンが「天寿をまっとうする」可能性があることに気づいたナップだが、無論それは口に出さない。
「それはそれで仕方ないね。でも、これからも使い魔のやりとりや、食事に行ったりはしたいかな」
「えっと……」
ナップは、正直どう反応したものかと判断に迷ってしまった。
明らかにこののんびりとした青年の恋愛観は、常人のそれとはかけ離れているのだ。
恋人になる前から結婚のことを考えているのは性急すぎると言えるし、告白までに五年もの時間をかけるのはのんびりし過ぎだと言えるだろう。
「それにね、ナップ。僕はメイシンさんに感謝してるんだよ」
「感謝?」
「もし彼女と出会わなかったら、僕はそう遠くないうちに護民騎士を辞めていたと思うんだ」
「おいおい」
「実はさ……いろいろ頑張って護民騎士になったのはいいんだけど、いざなってみたら、自分が何をしたいのかわからなくなっちゃっててさ。ずっと心のどこかで、夏休みにやり残した宿題みたいに気にかかってたんだ」
「……………」
昨日のガンダルガとの一件もあり、ボッシュの心情は、ナップにとって非常に共感できるものであった。
「でも、これからは五年後の目標に向けて、自信を持って自分を磨くことができると思うし、仕事にも全力で取り組める気がするよ」
そう言うと、ボッシュは普段以上にニコリと微笑んでみせたのだった。
「そっか……そこまで腹くくってんなら俺としてはもう応援するしかないな」
ナップは、苦笑を浮かべながらボッシュにうなずきかけた。
「ありがとう、これもみんなナップのおかげだよ」
ボッシュは、ナップに何度も礼を言うと「着替えてからまたここで剣の練習をするから」と練兵場から出て行った。
残されたナップは、何事か考え込む様子だったが、やがて立ち上がると、ボッシュとは逆の裏口の方へと歩いていった。
ナップはそのまま部屋には戻らず、練兵場の裏手に広がる芝生の上に寝転んでいた。夜空には、澄み切った美しい北国の星空が広がっている。
「ふぅ……」
彼は元々、あまり思い悩む性質ではなく、むしろ相当な楽天家であるといえたが、この数日は珍しく自分の先行きを考えざるを得なくなるような機会が、続けざまに訪れていた。
トラム隊長の期待、アリッサとの冒険行、ガンダルガの誘い、そして先ほどのボッシュから聞かされた決断……すべてが頭の中でグルグルと渦巻き、何かの形を成そうとしているのだが、そのためには今しばらく時間がかかりそうであった。
彼の幼なじみの介護士や保育士は、もはや自分の選んだ道に迷う事なく、必死に日々の仕事に取り組んでいる。自分にもいつかそのような日が来るのだろうか。
「ま、何とかしないとな」
一通り考えることは考えたので、ナップは一度頭の中をリセットして目を閉じることにした。冷たい風を肌に感じるが、むしろ今はそれが心地よかった。
護民騎士ナップ…
彼が「自由冒険者ナップ」として、世界にその名を知られるようになるのは、まだ先のことである。




