表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

26

「え?いや、だって俺、護民騎士だよ」


「ほう。では、護民騎士として騎士団長を目指すか」


「いや、それは…」


ナップは珍しく口ごもってしまう。


「ならば、一生平騎士として市民達を守り、皆に慕われる存在となるか」


「…………」


ナップがついに口をつぐんでしまったのは、ガンダルガが示した二つの未来が、あまり自分にとってしっくりとこなかったからである。


「これは、あくまでもわし個人の考えじゃが……」


ガンダルガは、今度はカウンターの中に目をやり、ナップには横顔を向けたまま、何気なさを装った口調で話しはじめた。


「お主の戦士としての太刀筋や戦い方、機転のきく頭の働き……そして、何よりもその気質が、騎士などというお役所仕事よりも、わしらの稼業に向いてると思うんじゃ」


「…………」


ナップは何も答えない。ガンダルガは肩をすくめると、いくぶん柔らかな表情に戻った。


「すまんな、酔った勢いで余計な事まで口を挟んでしもうた。ま、フィンの騎士団はかなり自由な気風と聞くし、わしが気にするまでもないかもしれんな」


そういうと、ガンダルガは勘定をカウンターに置いて、立ち上がる。


「まあ、もし……もし冒険者になりたくなった時は、わしに一声かけてくれ。こう見えてもいくつかは、つてぐらい持ってるでな。ただし、わしが棺桶に入ってから頼みに来ても遅いけどな」


最後に自分が放ったブラックジョークらしきものに一笑いすると、ガンダルガはのれんをめくり、屋台の外へと出て行った。


「じゃあな、小僧」


「じゃあな、じいちゃん」


一人残されたナップは、少しの間、頬づえをついて何やら考えているようだったが、やがて立ち上がり、店主に話しかけた。


「ごちそうさま、すごいウマかったよ!!いくらになんの?」


「500フィンです」


「安っ!!」


ナップはお代を店主に渡すと、再びもと来た道へと足を運んだ。

もはや、通りに全く人影はなく、月明かりに照らされた護民騎士は、特に足を早めるわけでもなく、散歩をするような足取りで、石畳の道を進んでいた。


先ほどのガンダルガの言葉は、言われた直後よりも、こうして一人になってみてはじめて、じわじわと心の中に染み込んできていた。あの老戦士は、今まで自分の中でどこか煮え切らないまま持て余していた感情を、明確に言語化してくれたように思えたのだ。


「さて、どうしたもんだか」


ナップは、軽く笑って肩をすくめた。

すぐにどうこうするつもりはなかったが、彼の心の中には確実に新たな思いが形成されつつあった。


「こりゃ、今度じいちゃんにリャンメンおごらないとな」


無論、先のことはわからないにしても、いささか無骨な語り口ながら、ガンダルガが彼の進むべき道、彼が彼らしくいられる道を気づかってくれたことは確かであり、そのような先達に出会えたのは、少なくともこの街に来てから初めてであった。


「ったくさ」


ナップは、周りに誰がいるというわけでもないのに、照れ隠しのような笑みを浮かべた。視界の先には、もう護民騎士の宿舎が見えてきている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ