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教室の反応に、リアーヌはうろたえる。
(え? 何かおかしかった?)
自分で鏡を見た時は、結構いい感じだと思っていたのだが。
「かっ………」
マリアンヌが口を手で押さえた。
「か?」
か、とは何だろう。首を傾げていると。
「格好いいですわ……!!」
そう言って、マリアンヌはきらっきら目を輝かせた。
「わたくし、リアーヌとはお友達なのに、うっかりときめいてしまいましたわ」
ユミナもマリアンヌの傍らで、両の頬に手を当てて、うんうんと満足げに頷いている。周りを見渡すと、女子の大半が、ぽっと頬を染めていた。
(アンリの学生時代、モテたことなかったから、不思議な感じ)
そう、ローランの言葉を借りれば、学生時代のアンリはもっさりしており「モテ」とは縁遠かった。
今思えば、学生時代も騎士の時と同じように顔を晒していれば、そこそこモテていたのではないかと思うが、それはそれで勉学の妨げになって煩わしかっただろう。
今世は当時より精神的に安定しているから、こんなふうに女生徒から憧れの目で見られるのも、純粋に「可愛らしいな」と思えるのだろう。
ちなみに男はーーローランが目を光らせているから、余程の覚悟がないと近づいてこないのだが。
⭐︎
こうして終礼の時間は終わり、クラスの生徒たちはばらばらと教室を後にする。やがてローランと二人だけになった。
ローランはリアーヌの男役を面白がるかと思っていたが、予想に反して機嫌があまりよろしくない。
「なんだか機嫌が悪いですね。私が相手役なの、不満?」
「そんなことはない」
しかし、そう言っている声が既に不機嫌だ。そんな彼の心をほぐそうと思い、リアーヌは少し悪戯心を出してみた。
「アンリを思い出して懐かしくならないか?」
アンリの口調で語りかけ覗き込むと、ローランは息を呑んだ。だが、すぐに子供がするようにぷいと顔を逸らした。
「……その姿も口調も、本当は俺だけのものなのに」
その言葉に、リアーヌはローランの不機嫌の理由を悟った。
(……拗ねてる)
完璧王子と称されるローランが、こんなことで機嫌を損ねるなど、この学園の誰もーーただしコルトーは除くーー思いもよらないだろう。
「みんなの視線が君に釘付けだ。今以上に、みんなが君を放っておけなくなる」
以前の人生では分からなかったが、目の前の男はびっくりするほど独占欲が強い。
しかし拗ねられたままだと、学園の行事に支障をきたしてしまう。ここは一つ、宥めておかなければ。
「でも、お前の相手ができるのは俺だけじゃないのか?」
「それはそうだが……」
「お前がしないなら、他の誰かがお前の代わりに俺の相手役になるよ?」
「それは駄目だ!」
ローランがばんと机を叩いて立ち上がった。
「ーーじゃあ諦めて、私と一緒に騎士役を立派に勤めましょね」
にこっと笑ってみせると、ローランは降参というように両手を広げた。
⭐︎
結局ローランはクラスのために、ちゃんと役の練習をした。
むしろ、脚本を読むと俄然やる気になった。
リアーヌは、ローランと共にキャロ教師に学習室に呼び出され、台本を読んだ日のことを思い出す。
キャロ教師作の騎士物語は、こうだ。
あるところに赤薔薇の騎士と白薔薇の騎士がいた。
親友同士であり、ライバル同士でもある二人は、切磋琢磨して腕を磨いていた。
しかし仕える主人が異なる彼らは、勃発した王位継承権争いのせいで敵同士となってしまう。
彼らは騎士として、主君のために、相手と殺し合わなければならない定めであった。
(うーん。……なんかトラウマを呼び起こす物語なんだけど……)
親友だった、という部分を除けば、アンリとローランの境遇にそっくりだ。




