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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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29-4

(まあ、冷静に考えれば)


 攫われたリアーヌを、わざわざ追跡して命懸けで助けた相手だ。ただの友人であると思われるはずもない。


 しかし、少なくとも彼がシャルトル家の人間でいる間は、結婚はない。


 内部の腐敗が激しいシャルトル家と親戚筋になることは、セネヴィル家にとって大変な重荷だ。向こうも了承しないだろう。

 これは感情の問題ではなく、互いが置かれた環境の問題である。


「でも、私を助けてくれた。大事な……友人です」

「そうか」


 しかし、シャルトル家の人間だからといって「ありえない」と決めつけない父親の姿勢を、リアーヌは好ましく思った。


「お前は子供の頃からどこか大人びていて、人と一緒にいても、一歩下がったところで遠くから眺めているような子だった。そんなお前が、大事な友人を持てことを嬉しく思う」

「……はい」


 父親からの優しい眼差しがくすぐったい。ふと、子供頃のような素直な気持ちが呼び起こされた。


「暴漢に攫われたことは災難だったが、久しぶりにお前と過ごすことができて良かったよ。お前は学園に入り浸って、一年丸々帰ってこなかったからな」


 ついでのように、ちょっとだけ苦情を言われた。


 学園には週一日の休みはあるが、帰省のためのまとまった休みなどはない。適宜、自分たちで休みを取るのが通常だが、遅れを取り戻したいリアーヌは前年、帰省を見送ったのだった。


「キリエから話は聞いたかもしれないが、高速騎獣を準備している。お前のその、ライカの涙を使えば今日中に学園に戻れるだろう」


 そう説明する父の視線が、リアーヌの右手の指輪に注がれている。ローランから贈られたものだと思っているようだが。


「……これは借りているだけですから!」


 念の為に強調しておいた。


⭐︎


「じゃあ、父さんは仕事に戻るから」


と父が室内に戻った後も、リアーヌはテラスに残って感傷に浸っていた。


 自分ではうまく立ち回っていたつもりだったが、心配をかけていたんだなぁ、と改めて申し訳なく思うと同時に、それだけ自分に気を配ってくれていたことに感じ入る。


 リアーヌは立ち上がり、柵に両手をついて空を見上げた。雲一つない澄み切った青空を眺めていると、


「……っ!」


 不意に後ろから抱きすくめられた。ーーローランである。


(いつの間に……!?)


 キリエの言ったとおり、実家だからといって油断しすぎだと反省する。しかし、相手がローランだからこそ気配に気付かなかったのだとも思う。


 絶対にローランは自分には害をなさない。そんな信頼があるからだ。


 ローランはリアーヌの髪に頬を寄せながら、


「俺のことを大事な友人と言ってくれて、ありがとう」


と囁いた。


「すごく……心に沁みた」


 ため息と共に吐き出された言葉は、本心からのように聞こえる。

 だが、次の瞬間には、くるりと回転させられていた。


「でも正直、不満もある」


 覗き込んでくるローランの表情は、確かに不満げだ。


「いや、何で? 良い話しかしてなかったでしょう??」

「本当に、分からないのか?」


 真正面から真剣な瞳で尋ねられ、言葉に詰まる。俯いて目を逸らしたリアーヌだったが、逃がさないとばかり覗き込んだローランが、そのまま口づけてきた。


(そうだ。普通の友達は、こんな風に口づけたりしない)


 ローランはリアーヌの答えを先送りにしてくれたが、実際のところは、既に自分たちは恋人同士なのだろう。


⭐︎


 そうしてスヴェン領でゆっくり休み、疲れを癒した二人は、明日の授業に響かないよう夕方前に帰路につくことになった。


 高速騎獣を準備してもらえたので、指輪に貯まっている魔力を注ぎ込めば、三時間ほどで王都に戻ることができるだろう。


 屋敷内で両親に別れを告げたリアーヌは、騎獣の厩舎に向かいながらローランを降り仰いで尋ねてみた。


「どうだった? 私の家は」

「居心地悪かった」


 即答された。


「貴方ね……」


 こういう時はお世辞でも「素敵な家族だね」とか言うべきなのでは? と思い、考え直す。

 恐らくローランは、他の人が相手であればきっと、そんな上っ面だけの社交辞令を口ずさむことだろう。リアーヌだからこそ、偽りない感想を述べているのだ。


 リアーヌとしても、ローランに気を遣われても、ぞわぞわするだけなので、きっとこれが正解なのだろう。


 しかしローランは、多少はリアーヌの反応を気にしたらしい。すぐに弁明するように言葉を重ねてきた。


「俺は温かい家族というものを知らないからな。どんな反応が正しいか、分からないんだ」

「ローラン……」


 それは取ってつけた言い訳ではなく、本心のように感じた。シャルトル家の闇を感じ、胸が詰まる。


「でも」


 思いのほか優しい声が上から降ってきた。


「これが家族なんだなって思った」


 リアーヌの屋敷を振り返ったローランは、そう言って眩しげに目を細めた。




みなさま、両親に紹介まで済ませ、じりじりと外堀を埋められている系TS男女はお好きですか?

私は好きです!


TS男女好きさんが増えますように……!


※いつもお読みくださり、またリアクションや評価、ブックマークを贈って応援くださり、ありがとうございます!

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