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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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29-3

「家名以外は満点以上の相手じゃないですか。どうやって、たらし込んだんですか?」

「たらし込んでない!」


 人聞きの悪い。まるでリアーヌが悪女か何かのようではないか。ーーというか、そんな能力は残念ながら備わっていない。


「なるほど。ーーでは、たらし込まれたんですね。……この鈍感初心(うぶ)なお嬢様をたらし込むなんて、シャルトル家の次男は、ちょっとやりますね」

「たらし込まれてもない!」


 ーーはずである。昨日の口づけを思い出し、少し自信がなくなる。

 そんなリアーヌの様子に目ざとく気づいたキリエは、リアーヌの耳元で囁いた。


「またまた。キリエには恥ずかしがらずとも良いのですよ。ーーで、どこまで行きました?」


 その言葉が「単なる距離」を表すものではないことは、鈍いリアーヌでも、さすがに分かる。


「どこにも行ってない!」


 きっぱり否定すると、キリエはよろよろと、わざとらしくよろめいた。


「そんな……駄目じゃないですか。ちゃんと唾を付けておかないと」


 ーーこのままでは終始キリエのペースで話が進んでしまう。話題を変えなければ。


「そんなことより、帰りの手配なんだけど」

「高速騎獣の準備はできています。それよりーー」


とさっくり話を元に戻そうとしたキリエが、ふと口を噤む。そして、さっと後ろに引き頭を下げた。

 リアーヌもまた、その存在に気付いて声をかけた。


「お父様」


 そこには穏やかな佇まいの父が立っていた。ーー先ほどの「おじさんショック」からは立ち直ったようである。


「リアーヌ。少し話をしないかい?」


 キリエは優秀な侍女の顔に戻って父に椅子を勧め、自身は親子の会話の邪魔をしないよう、聞き耳を立てぬよう立ち去った。


「どうぞ」


 父が、果実を絞ったばかりの新鮮なジュースを持って来てくれていたので、グラスに口をつける。


「あのローラン君は、間違いなくシャルトル家の次男、だよね」

「ええ」

「恋人なのかい?」

「ぶっ……」


 あまりに直球な問いかけに、思わず飲み物を吐き出しそうになる。


「違うのかい?」


 答えづらかった。


 恋人だと確認し合ったことはないが、何度か口づけを交わしていることも事実で、友人以上の関係だろう。しかし父親にそうだと紹介すれば、将来を誓い合っているとみなされる可能性もある。


 さすがに、それは早計だと感じたので言葉を濁した。


「ローランはその……友人ですよ」

「そうか、父さんの勘違いか」

「どうして、そんなふうに思ったのか不思議」


 家で親密な空気になってはいなかったように思うが。


「そうかな? まずローラン君と話しているお前は、とても自然体だ。いつも、誰といても猫をかぶっているお前が、彼の前では取り繕っていない。そしてローラン君の方は……ずっとお前を目で追っていた。私たちとの会話も疎かにしていないけれど、お前の反応を窺っている。お前を見ながら、私たちとの受け答えが正しいかどうか判断しているようだった。それは、お前の両親である私たちの心証を気にしているということだろう?」


 さすがは一領主だ。よく見ているな、と思う。


「そっか……」


 直截的に言われると、くすぐったく感じられる。そんなにローランは自分のことを見ているのかと。


 リアーヌは照れ隠しに、ローランを少しだけ腐してみた。


「ローランは清廉潔白で完璧な人と言われていますが、ちょっと変わっているんですよ」

「そうみたいだね」


 父はふと微笑んだ。


「シャルトル家が私たちを毛嫌いしていることは知っているかい?」

「私もローランも知っています」


 すると不意に真剣な表情になって、じっと見据えてきた。


「結婚するとなると壁が高……」

「まだ、そんなこと考えてないって」


 先ほど友人と言ったにも関わらず、父が探りを入れて来た。全く信じてもらえなかったようである。

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