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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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29-2

 朝起きるとーー母が、すごく張り切っていた。


 身支度をして食堂に行くと、父とローランは既に着席していた。テーブルには所狭しと料理が並んでいたが、さらに一品、大きな鍋を持ってきた母がローランに、


「お腹、空いているでしょう? しっかり食べて体力をつけてくださいね」


と声をかけた。


 鍋からは、ほかほかと湯気が経っている。

 領主の妻が毎日食事を作るようなことはないが、今日は特別に腕を振るったらしい。低めの小さなテーブルに鍋を置くと、深さのある皿によそっていく。


「これは……?」


 受け取ったローランは、初めて見た、といった表情だ。


「クリーム煮ですよ。ここの郷土料理なんです」


 クリームソースでしっかり煮込んだ、ほろほろのお肉と、ごろっと大きめだが、しっかり火が通って甘みを増した野菜たち。割と豪快な料理である。


 ちなみに、王立学園の食堂で出される料理は上品だ。


 加えてローランはシャルトル家の次男。


 決して親からの愛情が深かったとは言いがたい環境だったので、幼い頃はどうだったか分からないが、成長し、優秀さと美貌で周囲からの評判が抜群に高くなったローランを無碍に扱うこともできなかったはずだ。


 そういうわけで、普段から上流階級の食事を食べつけている人間は、こういった素朴な家庭料理は馴染みがないかもしれないが。


「うちは北に位置して、王都より少し寒い地域ですからね。こういった温かい食べ物が好まれるんですよ」


と説明しておく。

 ミルキーな味わいで消化にも良い、体に優しい食べ物だ。


「私は好きだけど、食べ物は口に合う合わないがありますからね。でも、空腹は満たせると思うから、栄養だと思って食べてみて」


 そう勧めると、


「ああ、いただきます」


とローランはスプーンを手に取り、肉を掬う。そして口に入れた。ーー今更ながら、食事をしている姿も様になる男だ。


 しっかり味わうように咀嚼したローランが、ゆっくりと口を開いた。皆が彼の感想を固唾を飲んで待つ。そして。


「この味がリアーヌを健やかに育んできたのかと思うと、全ての食材が愛しいと感じます」


 ……とても独特な感想が口から溢れ出た。なお、本人は至って大真面目である。


「お、おお、そうか。気に入って? くれたのなら良かった」


 ローランの個性的な褒め言葉に、少し反応に困った感じの父親は、それでも嬉しそうだった。


 結局ローランは、出された食事を全て平らげ、クリーム煮に至っては母に勧められるまま、おかわりまでしたのだった。


⭐︎


 その後ローランは、


「おじさんの服じゃなくて、もっと若者らしい服を探さないと」


と言う母に衣装部屋に連れて行かれた。ちなみに、おじさん呼ばわりされた父は「私が、おじさん……」と、少しショックを受けた様子で、ふらふらと食堂を出て行った。


 一人取り残されたリアーヌは、二階のテラスに向かった。吹き抜ける風が心地良い場所で、考え事をするのにちょうど良い。そこで、


(帰り、どうするかなぁ)


と考えていると、


「イケメンですね」


と不意に背後から声をかけられ、びくっと体を震わせた。振り向くと、侍女のキリエが立っていた。


「ちょっ……、気配を消して急に声かけないで!」

「このくらいの気配に気付かないのは、お嬢様の怠慢です。鈍ったんじゃないですか」


 辛辣な言葉に、ぐうの音も出ない。


 ただ、キリエには暗殺者集団に属していた経歴があり、気配の隠し方は超一流だ。


 五歳年上で、子供の頃から侍女兼護衛として仕えてくれているキリエは、アンリの時もリアーヌである今も、最も信頼を置ける人物だ。

 同時に、一人っ子のリアーヌにとって姉のような存在でもあり、どうにも頭が上がらない。


 そんなキリエが、にやにやしながら口を開いた。

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