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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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4 二人の過去

 王立学園には、学舎の門を出て少し歩いた場所に寮が備わっている。


 一般クラスは希望制だが、特別クラスの生徒は全寮制だ。特別クラスの生徒たちの寮生活の費用は国が負担する。

 また、一般クラスの寮生は相部屋だが、特別クラスの寮生は勉学に専念できるよう、一人部屋をあてがわれる。国は、いずれ国の中核を担う優秀な人材に投資することに力を惜しまない方針である。

 要するに、食事以外の全ての用は、寮室で事足りるような仕組みだ。


 リアーヌは寮の自室に戻ると、食堂から持ってきたパンを齧る。共用の浴場に行けば湯に浸かれるが、編入初日に顔を出すのは気が引けたので、室内の浴室でさっと湯を浴びるにとどめた。


(はぁー、疲れた……)


 リアーヌとしては初めての王立学園だ。思った以上に緊張していたらしく、重たい疲労感が押し寄せてくる。

 夜着に着替え寝台に倒れ込むと、そのまま目を閉じる。程なくして睡魔が襲ってき、リアーヌは夢の世界へと誘われた。



⭐︎



 その日、アンリは王城から少し離れた湖畔に建てられた館に詰めていた。半月前から、この王家の別邸では体調を崩したシリル第二王子が療養しており、彼の筆頭騎士であるアンリは、その護衛として同行していたのだった。


 リアーヌが二度目の人生を送っている今と違って、アンリが生きていた一度目の世界は、王城内の権力闘争と腐敗が激しかった。


 第二夫人アンジェラが産んだ第一王子カミーユと、身分の高い正妃イリーナが産んだ第二王子シリル。この二人が中心である、と見せかけた、その生母及び派閥による闘争だ。王子たち自身は、ほとんど蚊帳の外である。


 なお、この内部闘争には、全く生産性がなかった。

 何故なら、第二王子であるシリル王子は病弱で王の激務に耐えられるだけの体力がなく、王位継承者はカミーユ王子と内定しているようなものだったからだ。


 こうしてシリル王子が王城から離れて静養しているのも、遠回しに王位に野心がないことを伝えているのである。

 しかし、周りはそれを許さない。特にカミーユ王子の母アンジェラは、物理的にシリル王子を廃したいと考えていた。


 ーー第二夫人アンジェラ。


 王の寵愛を盾に、専横な振る舞いを続ける毒婦。

 出自ゆえに決して正妃の地位につくことができないアンジェラにとって、いくら病弱であっても、正妃の子であるシリル王子の輝かしい血統が目障りだったのだろう。


 そして彼女は己の野望をとうとう実行に移したのである。


 第一王子の派閥にいる手勢に、第二王子の静養先を急襲させたのだ。


 ちなみにカミーユ王子の関与は全くないとアンリは考える。あの毒婦に育てられたとは思えないほど、第一王子は人間的にはよくできた人だった。ただ、母の暴虐を抑える力がなかった。


 何にしても、


(この騎士の国も終わりだな……)


と絶望的な気分になる。暗殺といった汚い手段に頼って、第一王子の地位を盤石なものにしようと目論んだのだろうが、逆に内部が腐敗するだけだと、分からないのだろうか。


(でも、もう、俺が考えることじゃないな)


 アンリは息を整えるため、大きく深呼吸する。


 既に何人か敵を屠った後だった。

 アンリは「刀」と呼ばれる片刃の武器を獲物として使用していた。通常、騎士が使う両刃の剣より軽い武器であるにもかかわらず、重さを感じた。


 そんな、泥に沈むような疲れを感じ始めた時に、その男はアンリの前に立ち塞がった。


 廊下の窓から差し込む月の光を受けて、こんな時でもその男は美しかった。自分はもう、こんなに血塗れでぼろぼろだというのに。


「ローラン……」


 アンリは静かに、その男の名を呼んだ。

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