表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/92

裏話6 魔力の申し子と世界の形

最初の⭐︎の前は23話の前、後は25話の後のお話です。


 リアーヌとの関係は膠着状態で、正直なところローランはーー少し焦りを感じていた。

 彼女は類い稀な美少女だ。色気がなく中性的なため女生徒からの人気の方が絶大とはいえ、男子生徒の中にも複数人、彼女に恋心を抱いている者が見受けられる。


(そろそろ、もう一歩、踏み込んでもいいんじゃないか……?)


 そう考えたローランは、試験の見返りを利用することにした。

 前回同様、出かけるだけと思い込んでいる純真なリアーヌを奇襲するような形で、望みを告げたのである。


「口づけがほしい」


 押して押して押しまくる。


 ローランは悟っていた。リアーヌは、押しに弱いところがある。

 友達になろうと言えば、嫌そうな顔をしながらも受け入れ、試験結果のご褒美にデートしたいと言ってみれば「何で私が」という顔をしながらも付き合ってくれる。


 同時に、その流されやすさがローランの不安を煽るのだ。自分以外の誰かが彼女に強く迫った時、


「そっかー。じゃあ仕方ないですね」


とか言いながら、ひょいと受け入れてしまいそうな空気がある。それだけは阻止しなければ。


 ーーと、そんな色々なことを考えていたローランだったが、口づける前の、


「初めてで恥ずかしい」


と恥じらうように言ったリアーヌの可愛さに、全てが吹き飛んだ。


 部屋に連れ込んで、口づけだけでなく全てを貪って、三日三晩、手放したくないという欲望が湧き上がる。


 ーーそれほど恋しい人を前にして、触れるだけの口づけで止めた自分を、誰か褒めて欲しい。


 また、口づけを許してくれたリアーヌは、自分のことを憎からず思ってくれていると確信した。

 リアーヌという人間は甘いようで、そういうところは厳しい。ローランのことが本当に嫌なら、どんな手を使ってでも阻止してくるはずだ。


 しかし、懸念すべきこともある。


(リアーヌは口づけの先を理解しているのだろうか……)


 口づけであの動揺ぶりだ。非常に疑わしい。

 そもそもアンリだった時も浮いた噂一つなかった。


(親は後継を作るための教育はしているんだろうか……)


 リアーヌは、男の時もそうだったが、スヴェン領主の唯一の子だ。跡取りを作る重要性は理解しているはずだ。

 子は授かりもののため、出来なければ養子を迎えるなどの手立てはあるが、それでも直系の子を授かるための努力は必要だろう。


 それが、もし何も知らなかったなら。


(俺はどうすればいいんだ……?)


 悩みは尽きないローランだった。


⭐︎


 そんなある日。


「ローラン。来週の休日、空いてる?」


とリアーヌに尋ねられた。

 意中の相手からそう言われた場合、普通の男なら浮かれてしまうだろうが、ローランは落ちついていた。

 一般的な女性ならともかく、相手はリアーヌだ。彼女に色気ある行動を期待するだけ無駄である。


 そもそも、会話するには不自然なほど距離を取られている。


 リアーヌには時間が必要だというマリアンヌの助言どおり、あまり事を急いで警戒されるのも本末転倒なので、今は彼女の望む距離を保つことにする。


「空いているが、何か?」

「アザレアに予約を取ってる」

「アザレア?」


 そこは特殊な店で、よく知っているが。


「会わせたい人がいるというかーーどうしても会いたいって言われるから……」


 彼女にしては歯切れの悪い物言いに、察するものがあった。


⭐︎


 高級食事処アザレア。


 防音に優れた個室を完備しており、教育が行き届いた従業員の口も固く、密談に持ってこいの店だ。騎士の時分には良く利用したものだが、気軽に使える値段の店ではない。服装も略礼装指定である。


 セネヴィル家の嫡子であるリアーヌが、アザレアを使って用意する会合となれば、相手は相当な貴人である。それに該当する人物を、ローランは一人だけ知っている。


 人払いした最上級の個室で相手を待っていると、不意に空間が歪んだ。


(ーー転移の術か)


 その魔法は確立されているものの、あまりに魔力を食うため、ほとんど秘術となっている類のものだ。


(並以上の魔術師でも、魔力が枯渇して二度と魔法が使えなくなると聞くな)


 つまり魔術師としての生命を差し出して使う術であり、普通の魔術師ならば絶対に使わない魔法だ。


 そんな転移の術を介して、一人の少年が姿を現した。この術は行使後、一ヶ月ほど昏倒し身動き一つできなくなるとも聞くが、少年には何の影響もない様子だ。

 彼はローランの姿を認めると、


「初めまして。ローラン・シャルトル殿、だよね」


と柔らかに微笑んだ。一見、ごく普通の少年に見えるが、そうではないことは先の転移の術で証明されている。


(只者じゃない)


 今まで、直接会ったことはなかったが、王城に飾られた肖像画などで顔は知っている。自分と同世代に見えるこの少年は、フィリウス王国のシリル第二王子その人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ