24-2
ローランは機嫌が悪そうだが、同時に切なげな目をしている。
リアーヌは、アンリだった時から、猪突猛進なところがある。もやもやしているものを、そのままにしておけない質だった。
だから率直に聞いてみた。
「ローランって……」
鼓動が早鐘を打つ。
「もしかして私のこと、好きだったりします……?」
これで「違う」と言われたら目も当てられない質問だ。自意識過剰すぎる。
するとローランは驚いたように目を見開く。そして、
「君は俺のことを、好きでもない相手にこういうことをする人間だと思っているのか?」
と物凄く白い目で見られた。
「いや、だって……」
リアーヌはもごもごと口籠る。
確かにローランは闇を内包する人間だとは思うが、基本的には真面目な人間だと思う。
しかし。
自分たちはかつて男同士で、ライバルだったことは、記憶から消えることはないのだ。
ーーとはいえ、薄々とそんな気はしていたが。
「好きだし、愛している」
ローランは一切ためらうことなく告げた。真っ直ぐな眼差しがリアーヌ射抜く。
(うわーー!)
直接言葉で聞くと破壊力が桁違いだった。
「君はもう理解していると思うんだが、俺は決して善良な人間じゃない」
確かに彼は、外面は良いが内面は複雑で、悪人でもないが難しい男だと思う。
「でも、軽薄な人間でもないつもりだ。俺はーーただ一人、君の全てが欲しい」
「……」
リアーヌはいずれ領主になる身の上だ。領主の配偶者として相応しい能力ある人間と結婚すると意気込んでいたため、自由恋愛をする気は皆無だった。
つまり。
ーー恋愛に対する耐性が全くなかった。
(ぎゃぁーー)
とリアーヌが心の中で悶える。一体どうすればいいのか分からず、頭を抱えて混乱していると、ローランがふっと笑った。
「君の答えは、まだ聞かないでおく」
「え?」
「君はまだ、心の準備ができていないだろう?」
「こ、心の準備って……」
恐る恐る尋ねる。
「俺に息が詰まるくらい愛される覚悟」
小っ恥ずかしい台詞を、真顔で吐き出すローランに、今までなら「この気障野郎が! けーっ、ぺっ、ぺっ」くらいに思っていたはずなのだがーーリアーヌは体が火照るのを感じた。きっと顔は茹でたように真っ赤になっているに違いない。
そんなリアーヌの頬に、ローランの大きな手がそっと触れた。
「だけど、こうしてたまに触れることは許してくれないか。君の存在を確かめていないと、気が狂いそうになるんだ」
許しを乞うような声に、毒気が抜かれたリアーヌは、
「……うん」
と素直に頷いた。だがすぐに、純粋な疑問が湧く。
「でもローラン」
首を傾け、率直に尋ねた。
「私が他の人を好きって言ったらどうするの?」
途端にピシッとローランが固まった。
「君が? 俺以外を?」
びっくりと不快がない交ぜになった、複雑な表情を浮かべたが、すぐに、
「君は俺以外では満足できないだろう?」
と切って捨てた。どういう自信だと思っているところに、言葉を重ねられた。
「それに、逃がさない。君が俺以外を好きだと言うなら、君が俺に振り向いてくれるまで努力する。ーーどれだけ時間がかかっても」
にっこりと微笑まれて、すごく魅力的な笑顔であるにもかかわらず、ぞぞっと背筋が凍った。怖い。
(っていうか、まだ答えを聞かないって言ってたけど、答え、一つしか聞く気、ないでしょ)
厄介な人間に執着されてしまったと思う。
同時に、自分はもう、この男から逃れることはできないだろうなと、そう思った。




