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フィリウス王立学園に編入してから、あっという間に一年が過ぎ、リアーヌは十六歳になっていた。
四年生の総合順位は、ローランが首席、リアーヌは四位だった。まあ、最初の頃の様子見していた時の点数も含まれるので、仕方ない。
なお、学年が進んで五年生になっても、特別クラスの面々はほとんど変わらず、相変わらず級長はローランで、副級長はユミナである。
そういうわけで、特に何事もなく日は進み、すぐに暖2の月の試験が行われた。
その試験結果が掲示板に張り出され、リアーヌは新学期早々、現実を突きつけられた。
(またローランが一位……)
空を仰ぐ。リアーヌは二位だ。最早、前世からの見慣れた光景である。
以前のような対抗心はないが、やはり悔しいものは悔しい。
リアーヌが小さな溜め息をついていると、いつの間にか側に寄ってきていたローランから、
「リアーヌ、少し話がある」
と声をかけられた。
「えー、ここじゃダメなの?」
「駄目だ。静かに話せる場所に移動したい」
頑として譲らない雰囲気のローランにリアーヌは降参し、彼について行くことになった。
まあ、話といっても、このタイミングだ。一位のお祝いの話であることは想像がつく。しかし、何故ローランが一位を取ったら、自分がお祝いしないといけないのか。
(解せぬ)
とずっと思っているのだが、前回、ローランがあまりに嬉しそうな顔をしたものだから、毒気を抜かれて「まあ、今回も仕方ないな」と考えてしまうのだった。
(また、どこかに行きたいのかな?)
なぜ私と、と思わないでもないが、ローランの立場になって考えれば答えは明白だった。
要するに彼は、いつも優等生の顔を貼り付けているので、素のまま気軽に過ごすことができる相手がリアーヌくらいしかいないのだろう。ちょっとだけ可哀想である。
しかし、その相談ならば、わざわざ場所を変える必要もないと思うのだが。
ローランに連れられて、改修中の訓練場裏に辿り着く。人の気配のない、ちょっと嫌な思い出のあるその場所で、ローランは姿勢を正しリアーヌに向き合った。
何故だろう、ローランから少し緊張した空気が伝わってくる。
「今回も、首位のお祝いをもらっていいか?」
いつも傍若無人にリアーヌを引っ張り回しているのに、何を今更、改まる必要があるのだろうか。どうせ承諾するまでしつこく付きまとってくるので、断るのも労力の無駄だ。
「いいですよ、次はどこに行……」
気軽なリアーヌの言葉を遮るようにして、ローランは告げた。
「口づけが欲しい」
「………」
言葉の意味が理解できなかった。
「はい?」
口づけが欲しい、と聞こえたような気もしたが、そんなはずはない。聞き間違えだろう。
「ええと、よく聞こえなかった」
「君からの口づけが欲しい」
即座に繰り返され……リアーヌは、聞き間違えではないことを理解した。
何の冗談、と相手の顔を窺えばーーすごく本気の表情だった。
リアーヌは、ぶんぶんと首を横に振る。
「いやいやいやいや」
何を言っているのだろうか、この男は。
「駄目ですよ」
きっぱりと断った。するとローランが不服げな表情になる。
「君はさっき、いいって言った」
「いや、それは出かけるだけかと思ったから……」
「いいって言ったよな? 前言撤回するのか? 騎士ともあろうものが」
「今は騎士じゃないから!」
いや、騎士だってたまには前言撤回するだろう。と思っている間にも、右手首を掴まれた。
ぐぐっと前のめりになってくるローランの胸を、リアーヌは自由になる左手で押し返す。
「ちょ、ちょっと待った」




