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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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閑話4-3

(おれ、弱えぇ……!)


 自分の情けなさに心の中で涙しつつ、ローランからの非難がましい視線をひしひしと感じて、次なる攻撃に身構える。


「コルトー先生。私も無粋なことは言いたくないのですが、先生と彼女は学外でのお知り合いですよね? 親しいのは分かりますが、あまり近しく接すると、贔屓をされているのではないかという目で彼女が見られてしまいます。また、ここは個室です。あらぬ誤解を受けることも考えられます。大切な同級生が、そのような目で見られることを、私は心から危惧しています」


 耳に届くのは穏やかな口調。しかし目が全く笑っていないことは想像に難くなかった。


(いや、おれにそんな敵愾心を抱かないでくれ!)


 リアーヌは確かに美人だと思うが、子供の頃から知っているうえ、年も離れている。妹のようなもので、そういう気持ちは皆無なのだ。


「起こしても?」

「いいんじゃないか?」


 コルトーとしては「リアーヌよ。さっさと起きて、今すぐローランを連れて出て行ってくれ」と願うばかりである。

 ローランはかがみ込み、リアーヌの耳元で呼びかけた。


「リアーヌ」

「んあ………?」


 寝ぼけたリアーヌが、色気のない変な声を出して応じる。そして気怠げに机から身を起こす。まだ眠たいらしく目を擦る仕草は、普段より幼く見えた。

 そんなリアーヌの様子を苦々しく眺めたローランが苦言を呈する。


「いち学生の君が、特定の教師の研究室に入り浸るのは、感心しないな」


 一方で、まだ寝ぼけまなこのリアーヌは、ぽかんとした様子で首を傾げる。


「え? どうしてローランがここにいるの? 後輩の女の子から呼び出されていませんでした……?」

「大した用事じゃなかった」

「いや、大した用事じゃなかったって……告白されたんじゃない?」

「そうだが、それが何か?」

「いや、大した用事でしょう、それ」


 リアーヌが呆れた顔で突っ込みを入れる。びっくりするほど気安い雰囲気だった。

 その一方で、ローランは不機嫌を隠そうともしない。机に広がっている書物を閉じながら、


「もうすぐ下校の時刻だ。帰ろう」


と促す。しかしリアーヌは閉じさせまいと、腕で囲って広げた書物を守る。


「え、最終下校の時刻じゃないし、私まだ、ここで勉強したいんだけど」


 リアーヌの抵抗に遭い、表情には現れないが、ローランの周囲の空気がぴりついてくるのがコルトーには分かった。


「いや、セネヴィル。質問は明日でも大丈夫だろう? 今日は友達が迎えにきたんだから帰りなさい」


とコルトーは教師らしい言葉を選びながら、問題児たちを追い払おうと試みる。すると今度はリアーヌが不服げに頬を膨らます。


「先生。いくらシャルトル様が優秀とはいえ、生徒に忖度しては教師の名が廃りますよ」


 教師の名などいくらでも廃っていい。だから、その男を連れて帰ってくれ、と心の中でぼやいた。


 ……と、そんなやりとりをしている間にも、氷点下の空気を放っていたローランが業を煮やしたようで、無言でリアーヌの前にひざまずくと、その体を軽々と抱き上げた。


「ちょ……っ、何するの!?」


 突然抱き上げられたリアーヌは、じたばたとローランの手から逃れようともがく。


「暴れると落とす」

「落としていいから! 華麗に着地するから!」


 負けずに言い返すリアーヌは、持ち前の運動神経で、本当に落とされても華麗に着地するものと思われた。恐らくローランもそう思ったのだろう、落とすのとは逆に、リアーヌを抱える手に力を込めて、がっちりと動きを封じた。


「では、失礼します」


 にっこりと微笑んで、ローランは腕の中でじたばた暴れるリアーヌを抱えたまま、出て行った。


 ーー。


 ーーーーー。


 嵐は過ぎ去った。

 コルトーは、はーっと息を吐いた。


(勘弁してくれ……)


 ローランが放つ感情は嫉妬だ。リアーヌがコルトーに特別な感情を抱いている、とまでは思っていないはずだが、彼女が自分よりコルトーを頼りにすることが勘に触るのだろう。


 普通ならば「学生の嫉妬なんて可愛いもんだ。はっはっは」と余裕をぶっこくところだが、ローランに関しては、ひたすら「怖ぇよ、あいつ」という感想しか出て来ない。


(例えるなら、何人も殺したことがあるような目だ)


 学生のローランに、そのような経験があるはずもないだろうに、そんな風に思うのだ。


 今更ながら、


(何でローランと普通に話せるんだ、あいつは……)


と思う。ピリピリしたローランを前にして、さらにつつくような真似すらしてみせる。というか、二人の間には妙に馴れた空気が漂っている。


(苦手って言ってたのは何だったんだ??)


 少し騙されたような気分になると同時に、改めてリアーヌの豪胆さに感心するコルトーであった。




 毎日暑いですね。こんな暑い日には読書ーー特にTS男女ものーーをして過ごされるのはいかがでしょうか?

 ニッチなジャンルですが、読んでくださる方がいらっしゃること、リアクション・評価・ブックマークをしていただけていることに、いつも励まされています!


 TS男女好きさんが増えますように……!

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