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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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18 風邪ひきの(元)黒騎士さん

 貴重な魔導具である「ライカの涙」を借りたーーそう、あくまで借りただけだーーせいか、魔法に対する学習意欲が急激に高まったリアーヌは、魔草を摘むために学園の近くにある湖に向かった。


(ライカの涙に罪はないし)


 目的は初冬の夜の間だけ水の中で咲く草で、決して珍しい種ではないが、意外と深い場所に生えているので、採取には注意が必要だ。その効力は、ライカの涙と同様に魔力を貯蔵するーーただし、ごく微量であるーーというものだ。


 ちなみに寮は基本的に夜間外出禁止だが、魔草採取のためという理由で外出許可を取った。学問に関することであれば、多少は融通がきくのである。


 既に肌寒い季節で、特に夜は冷えていた。


 湖に着くと、水辺であるせいか余計に寒く、リアーヌは軽く身震いをする。


(あまり長居をすると風邪をひくな)


と思いながらスカートーー水に入る時はスカートの方が便利であるーーの裾をたくし上げ、太ももの横で結び、改めて湖を見て……ふと違和感を覚えた。


 水紋が、不自然だ。


 そして気付く。誰かが湖で溺れて、必死に水を掻いている時に、このような波紋になることに。


 そういうわけで、溺れている女学生を助けるため、初冬の湖に入ってびしょ濡れになったリアーヌはーーうっかり風邪をひいてしまったのである。


⭐︎


 授業を休み、寝台で横になり毛布にくるまって体を温める。そうして何度かうとうとして夕方になった頃、扉が叩かれる音が聞こえた。


「セネヴィルさん、お見舞いですよ」


 その声は寮母のものだ。きっとマリアンヌかユミナが、今日の授業のノート持ってきてくれたのだろう。


 女友達って優しいなあ、と思いながら扉を開けると、立っていたのは寮母とーーそしてローランだった。彼はリアーヌの有様を見て、ほら見たことか、と全身で語っていた。

 しかし、それ以上に気になることがある。


「あの、すみません。ここ、女子寮なのですが」


 寮母に訴える。女子寮の一人部屋に男子生徒を入れるのは、まずいだろう。しかし寮母はにこにこ笑って答えた。


「まあ! でもシャルトルさんですもの。心配ありません」

「……」


 ーー何、その全幅の信頼。


 寮母に隣では、ローランが優等生然とした笑みを貼り付けていた。


(騙されてる……!)


 全く、びっくりするほど外面の良い男である。

 正直な感想を述べると、自分にとってローランは、決して安全な相手ではないように思う。しかし、


「では、私は失礼しますね」


と寮母はローランを残して去っていった。


「……」


 部屋に入れたくないが、扉の前に突っ立ったままでいられると、他の寮生に見つかって騒がれる可能性がある。仕方ないので、リアーヌは、


「……どうぞ」


とローラン招き入れた。怠いので騒ぐのも面倒だったが。


「……君でも風邪をひくんだな」


 ぼそっと呟かれた一言にイラッとなった。


「はぁ? 馬鹿は風邪ひかないはずだ、とでも言いたいんですかね!?」

「そんなこと言ってないだろう? 穿ちすぎだ」


 平然とした顔で否定するがーー断言しよう。絶対そう思っている。頭の良し悪しというよりは「単純」という意味で。


「君はいつでも元気だったから、少し驚いただけだ」


というローランの、やはり含みを感じる物言いには納得していないが、そろそろ熱で立っているのも辛くなってきた。

 リアーヌはそれ以上ローランに応じず、寝台へと向かう。そして、


「……私は横になりますから」


と宣言して寝台に横たわり、毛布を肩までかけた。

 一緒についてきたローランは、


「君の私室に入るのは初めてだな」


と物珍しげにリアーヌの部屋を見回している。

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