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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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裏話3-1 少年アンリ

 ローランは、リアーヌが問題集を睨みながら、うんうん唸っている姿を眺めていた。


 放課後の学習室は、人目につかず誰の邪魔も入ることのない、ローランにとって心落ち着く場所だった。


 先日の試験では彼女に負け、大変遺憾思ったが、同時に嬉しくもあった。いついかなる時でも全力で物事に取り組むのがアンリの美徳だった。手を抜くのは彼女らしくない。


 不意に何か閃いたらしいリアーヌが、右上がりの文字をさらさらと書き始めた。そんな彼女の薬指では、ライカの涙が神秘的な輝きを放っている。勤勉な彼女なら、この貴重な魔道具を有用に使ってくれるだろう。贈り甲斐があるというものだ。


 と、そんなことを考えていると、問題を解き終えて一息ついたらしいリアーヌが、頬杖をつきながらふと、


「ローランは、前の人生を思い出した時、どんなふうだった?」


と尋ねてきた。

 こんなふうに、リアーヌから何気なく雑談を振られることも増えてきた。顔を合わせれば、猛獣でも見たかのように逃げられていた最初の頃に比べると、物凄い進歩である。


 しかし、残念ながら彼女を楽しませられそうなエピソードなどなかった。それより彼女が覚醒した時の話を聞いた方が、何倍も面白そうである。


「ーー君は知恵熱でも出して倒れていそうだな」

「倒れてません!」


 即座に否定された。が、ムキになった表情から、すぐに嘘だと分かった。リアーヌはアンリの頃から、自分が相手だと分かりやすい。


「私のことはどうでもいいでしょう? ローランのことを聞いてる!」

「君のことはどうでも良くないんだが……」


 軽口で応じながらローランは目を閉じて、その日のことを思い浮かべた。


⭐︎


 この世には不倶戴天の敵というものが存在する。

 白騎士ローランにとっての黒騎士アンリが、まさにその存在だった。

 第一王子を擁するローランの生家シャルトル家と、第二王子を擁するアンリの生家セネヴィル家。決して交わることのない、永遠の宿敵である。


 そんな二人は、第一王子と第二王子の王位継承権争いの中で差し違えて死に、享年二十五歳……のはずだった。


(何故だ……)


 ローランは、じっと手を見た。

 見覚えがある自分の手より、随分と幼い手。


 ローランは鏡を見た。

 見覚えがある自分の顔より、十歳以上幼い容姿。


 ローランは壁を見た。

 暦は十八年前になっていた。


(七歳か)


 鏡の中から金の髪を持つ痩せた少年が、こちらを睨むようにして見つめていた。


 家族が、次男であるローランに価値を見出すまで、彼は冷遇されていた。食べるものも満足に出されず、何かというと打擲され、いつも邪険に扱われていた。

 しかし幸いというべきだろうか、ローランは感情が薄かった。辛く当たられても、どこか他人事のように思えたし、痛みにも鈍かった。


 ーー長らく、それを先天的なものと思っていたローランだったが、後にアンリと出会うことによって、自分にも豊かな感情が備わっていたことに気付くのだが、それはもっと先の話であるーー。


(今日は十八年前の暖2の月か……)


 この日のことはよく覚えている。


 良家の子息や優秀な子供たちのための園遊会に参加させられた日だ。王室主催で、主だった家の子息は全員参加するよう要請されたため、両親も断れず、仕方なくローランを帯同することとしたらしい。


 ローランは、礼服など持っていなかったため、兄の服を着せられた。ドミニクのお下がりの服は、痩せたローランの体には大きすぎて、だぼだぼだった。


 子供のための園遊会ということもあり、王家が所有する大庭園で昼間に行われた。


 整えられた美しい庭と咲き乱れる花。会場にはたくさんのテーブルが並んでおり、所狭しと食べ物が並んでいる。子供達のために、甘いものが多く準備されていた。


 そんな華やかな会場には、自分のような見窄らしく痩せた子供などおらず、誰も声をかけようともしない。

 「端の方で大人しくしてろ」と親に言われ、隅でじっとしていると、ただ一人だけ、ローランに声をかけてきた少年がいた。


「どうしたの? お前、なんで、そんなところで一人でいるの?」


と。




⭐前世の二人の関係はブロマンス⭐

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