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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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17-3

 これは、同級生が戯れに友人に贈るような金額の品物ではない。


 高価すぎるものだとリアーヌは決して受け取らない、と察していたローランが、箱だけをすげ替えていたということだ。


 ーーリアーヌは正直なところ、装飾品にはさして興味はない。いずれ女領主となる自分の立場上、あまりにもみすぼらしい格好はできないが、基本的には、必要なものが必要なだけあれば良いと考えている。


 しかし。


 これほど純度の高いライカの涙を見て、興味を持たない魔の履修生がいるだろうか?

 宝石としてではなく稀少なマジックアイテムとして、魔法も学ぶ身としては、どうしても視線が釘付けになってしまう。


 一方でローランは、硬直しているリアーヌの手のひらの指輪を摘むと、左手を取り、その薬指に嵌めようとしてきた。そこでやっと、リアーヌは我に返る。


「ちょっと待った! 何してる??」

「いや、嵌めてあげようと思って」

「いらないいらない!」


 リアーヌは手を引っ込めようとしたが、思いの外ローランの力が強く、振り解くことができない。それでも手を自分側に引き寄せながら抗議を続けた。


「無理! 絶対無理! こんな高価なもの、もらえないって!」

「でも君のために手に入れたんだ。君が受け取ってくれないなら、捨てるしかないな」

「捨てる!?」


 とんでもないローランの言葉に、リアーヌは絶句する。こんな貴重な、そして有用な魔道具を、その辺のゴミと同じように捨てるなど、ありえない。


「いやいやいや。自分で使えるでしょう??」

「俺の指には嵌まらない」

「鎖に通して首飾りにしたりできるでしょう??」

「どうして君に買ったものを俺が身に付けないといけないんだ? 君がいらないというなら、捨てる」


 このままだと、本当にぽいっと捨ててしまいそうな勢いだ。いくらなんでも勿体なさすぎる。

 リアーヌは、もう一度ローランの目を見た。その目が確固たる意思で「捨てる」と語っている。


「うぅ……」


 しばらく唸りーーーそしてリアーヌは折れた。


「……分かりました。じゃあ、借りた。これは借りたということで。必ず返すから」


 苦しい理屈だが、こうすれば取り敢えず受け取ることができる。ローランが苦笑した。


「返さなくていいが、君がそれで満足するなら、まあ、それでいいよ」


 そう言って、ローランは再び指輪をリアーヌの左手の薬指に嵌めようとする。


「ちょっと待って。別に今嵌めなくてもいいでしょう?」


 左手の薬指など、意味ありげすぎる。なので、たとえば首飾りにすれば、目立たなくて済む。しかし。


「今すぐ、君が嵌めているところを見たい」


 ローランは決して引かない。このままだと左手の薬指に嵌められてしまう。純粋な力勝負では、ローランに敵わないのだ。


「嵌める、嵌めるから! 自分でさせて!!」


 リアーヌは指輪を引ったくった。

 左手の薬指の指輪は既婚者であることを示すものだ。学生の自分が嵌めるには不自然であるうえ、そもそもローランとは、そういう関係ではない。


 指輪を受け取り、自分で無難な指に嵌めようとするが、どうにもしっくりこない。


「……」


 ………あまり気は進まないが、右手の薬指に嵌めてみることにした。


(すごくぴったりなんだが)


 初めから右手の薬指に嵌めることを想定していたかのようだ。


 右手の薬指の指輪は、慣例的に恋人がいることを示すものだ。単にお洒落目的で嵌めても問題ないが、大多数の人間は、この位置に指輪がある人を見ると「この人には恋人がいるんだろうな」と判断するようなものである。


 しかも。


(何か微量の魔力を感じるんだけど……)


 探ろうとすると、ピリッと指先に刺激が走る。というか、いつの間にか外せなくなっている。ローランを見やると、機嫌良さそうに微笑んでいた。


 ………どういう魔法か、想像はできるが、考えないことにした。



ーーーーーーーーーーーーー



「あ、あれ、シャルトル様とセネヴィル様じゃない?」


 中庭を通りがかった一般クラスの、過激ではない女生徒が、隣を歩く友人に声をかける。


「ほんとだ。いつ見ても素敵ね」

「なんだかーーあそこだけ違う世界みたい」


 陽の光に煌めく金の髪の超絶美形と、夜の闇を紡いだような黒髪の超絶美少女。

 一部のローラン過激派は「リアーヌ・セネヴィル許すまじ」となっているようだが、特にこだわりのない一般の女学生からすれば、これほど絵になる組み合わせはないと、うっとり眺めてしまうところだ。


 彼女たちの位置からは、リアーヌ・セネヴィルの方は背中しか見えず、表情は分からない。が、きっと親密な表情で、きらきらした会話を交わしているのだろうと想像した。


 ーーまさか、二人の間で攻防が起こっているなど想像だにしない、夢見がちで無垢な少女たちであった。

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