17-2
試験後の休日が明けた平日の朝、迎えにきたローランに告げられた。
「リアーヌ。昼休みに少し付き合って欲しいんだが」
「え、嫌です」
即答した。昼休みは女友達と昼食を取りながら、のんびり過ごすと決めている。何が悲しくて朝も昼もローランと過ごさなければならないのか。しかし。
「……俺たちは友達だよな?」
にこっと微笑むその顔には、どこか剣呑な色を帯びている。リアーヌは無言の圧力に即座に負けた。
「友達だから、お付き合いします」
言いながら、
(友達って、そんなに便利な言葉じゃないと思うんだけどなぁ)
と改めて思った次第である。
⭐︎
そして昼の休憩時間になった。
学食で買った軽食を持ち、ローランと連れ立って中庭に向かう。テーブルと椅子が並べられ、学生が談話や休憩ができるよう整えられている場所である。テーブル同士は適度に離れているので、学食のように隣の話が丸聞こえになることはない。
しかし。
(やっぱり視線は感じるな……)
学園一のイケメンであるローランと、不本意ながら学園の女神と呼ばれているらしいリアーヌの組み合わせだ。とにかく目立つ。
ローランは昼食の他に何かお洒落な紙袋を持っている。先日の話の流れから、それが何かは見当がついた。
「学年一位だった君へのお祝いを考えてみたんだが」
予想どおりの展開である。
「……私、いらないって言いましたよね?」
「いや、友人ならお祝いすべきだとマリアンヌさんが言っていただろう?」
……どうやらローランはマリアンヌを味方に付けてしまったらしく、彼女はローランに呼び出されたリアーヌを「いってらっしゃい」と快く見送ったのだった。
(マリアンヌに何を吹き込んだんだか……)
用意周到なことである。
呆れつつも感心していると、
「これくらいしか思いつかなかった」
そう言いながらローランは、袋から深い藍色をした四角い箱を取り出した。
その箱には、城下町で流行りの装飾品店の印が入っていた。女性受けの良い意匠のものが揃っている店だ。そして。
(あの店なら、そこまで高価ってこともないかな)
知識を総動員する。
城下町の住民ならば、少し頑張れば買えるお手頃価格であり、学生同士の友達がちょっとした贈り物をするのに丁度良い店だ。
相手にも負担をかけない、絶妙な選択肢である。また、
(受け取らないと、いつまでも付きまとわれそう)
と想像すると大層うっとうしかったので、このくらいの贈り物なら受け取っても良いか、と判断した。
リアーヌは安堵しつつ、
「ありがとうございます」
と受け取った。するとローランは嬉しそうな顔で、
「開けてみてくれないか」
と開封を促した。
「うん」
と頷き、割と気楽に箱を開けた。中には柔らかい布に包まれた装飾品らしきものがあり、布から「それ」を取り出したーー瞬間、リアーヌは固まった。
(え、何これ……え、何で??)
それは小さな碧い宝石が嵌め込まれた、品の良い指輪だった。
(やばい……)
小さく、そして湖の底のように神秘的なゆらめきを持つ、その宝石。
その名を「ライカの涙」という。
装飾品としての価値もさることながら、魔力を一定以上貯蔵することができる、優れた魔道具だ。
武闘大会の後、ローランに木剣で追いかけ回された時に「魔力を貯蔵する魔導具があれば」と思った、その魔道具である。
この宝石は大きさより純度が大切だ。その辺に出回っているものは純度が低いものばかりだが、これはーー違う。
(やばい……)
目の前の貴重すぎる一品に、語彙が崩壊した。




