17 友人からの贈り物
涼3の月。
リアーヌの学生生活も半年を過ぎ、試験にも慣れてきたところで、第四回目の定期試験が行われーーちなみに第三回目の試験は涼1の月に十位で終わっているーーその結果が掲示板に張り出されていた。
なお、この四回目の試験に当たって、リアーヌには心境の変化があった。
(どうせローランには、私がアンリだってバレているんだから、本気で臨んで良くない?)
元々、ローランに注目されたくないがために、点数を調整していたのだ。最早、今となっては意味がない。
(だったら、セネヴィル家の長子として相応しい成績を収めないと)
というわけだ。
結果が貼り出された掲示板の周辺には、いつもどおり学生で人だかりができている。
(結構手応えがあったけど、どうだろう……)
と人の頭の隙間から結果を覗き込もうと爪先立ちになった時、
「まあ、リアーヌ。首席、おめでとうございます!」
というマリアンヌの声が聞こえてきた。
同時に、聞きなれない単語を認識した。
「首席?」
思わず首を傾げると、マリアンヌがもう一度繰り返した。
「リアーヌが一位ですわ」
その言葉にリアーヌが自分を指さすと、マリアンヌが力強く頷いた。
「え? 私、首席??」
アンリだった時の万年二位魂が抜けておらず、にわかに信じられなかった。しかしマリアンヌが嘘を言うはずもない。
「さすが、特別クラスに編入してこられた方ですわね!」
当の本人であるリアーヌより興奮しているマリアンヌの賛辞の言葉に、ようやく実感が湧いてきて、じんと心に染み入った。
改めてリアーヌが掲示板を確かめようとすると、波が割れるように人がリアーヌの前に道を作った。首席に対する敬意の現れである。
学内掲示板に張り出された試験結果。学年一位の場所に燦然と輝くリアーヌ・セネヴィルの名を見た瞬間、リアーヌは思わずぐっと両の拳を握りしめた。
以前とは違い、騎士を目指してはいないリアーヌにとって、一位であることに強いこだわりがあるわけではない。性差のあるローランと張り合う必要もない。
しかし、こうして自分の名が一番高い場所に掲示されているのを見ると、嬉しい気持ちがこみ上げてくる。
(前回は決して見ることができなかった光景だなぁ)
首席。一位。何という甘美な響きだろう。
感慨深い。
前回の人生では、常に自分の上にはローラン・シャルトルの名が輝いており、いつも下から見上げて悔しい思いをしていたものだ。
しみじみと一位という結果を噛み締めていると、
「リアーヌ」
と後ろから声をかけられた。
「首席おめでとう。……嬉しそうだね」
そう言うローランは、無駄にキラキラしていた。
彼の名はリアーヌの真下にある。つまり二位だ。点数には少し差があった。
しかし今の彼は、五位以内は維持しているものの、全試験で首席であることに、そこまでこだわってはいないはずだが。
「君はずるいな。俺が油断している隙に、ちゃっかり勉強してたんだな」
どこか責めるような、拗ねたような口調に、リアーヌは反論した。
「私は色々考えることがあって、勉強して気を紛らわせていたんですよ」
誰のせいだと思っているんだ、と心の中で毒づいているリアーヌの傍らで、マリアンヌが不意に口を開いた。
「シャルトル様」
マリアンヌがローランに自ら声をかけるなんて珍しい。
「一位を取られたリアーヌに、お友達としてお祝いされるのでしょう?」
にこにこしながら、マリアンヌがとんでもないことを言い出した。
「お祝い?」
不思議そうに首を傾げるローラン。
一方で「一体、何を言い出すんだ」と焦るリアーヌは、即座に遠慮の意を示した。
「学内の試験の結果は、途中経過にすぎません。なのでどうか、お構いなく」
しかし、時は既に遅かった。
「そうか、友人ならお祝いをするべきなのか」
感じ入ったように頷き、何か考え込んだローランを見て、リアーヌは一抹の不安を覚えるのであった。
ちなみに。
前々回の試験でリアーヌが慰めた学生から、裏切り者を見るような視線が飛んできたような気がしたが、見なかったことにした。




