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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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16-5

 その後、ローランは、地面に転がっているごろつき一般学生を冷たい目で見下ろした。


「さて、君たち……」


 不良少年たちが、びくっと体を震わせた。


「演習中でも、やっていいことと、そうじゃないことがある。君たちは、そんな簡単なことも分からないのか?」


 凍えるように冷たい声。彼はかつて王国の騎士の筆頭だった男だ。人をその手にかけた経験もある。ゆえに普段は抑えているが、ただの学生にはない凄みを持っている。転がっている少年たちは、射殺されるような殺気を感じていることだろう。


「これでもリアーヌは、騎士の名門セネヴィル家の一人娘で、次期スヴェン領主だ。演習内での負傷はやむを得ないが、規律外の行為で彼女に何かあったら、どう責任を取るつもりだった? ……学生だから何も知らなかったという言い訳はなしだ。ここは王立学園だからな」


 すごく……脅していた。

 少年たちは涙目でぶるぶる震えている。きっと彼らの本能には「二度とローランに逆らってはならない」と刻みこまれることだろう。


 正直、リアーヌとしては蹴り足りないと思ったが、自分に言い聞かせる。


(私は淑女、私は淑女……)


 可憐な淑女は、このくらいで勘弁してあげないとダメだろう。

 リアーヌは不良少年たちのことを頭から追い払い、レベッカに視線を向けた。


 レベッカはじっと自分たちのやりとりを見ている。放心しているのかもしれない。


(怖かったよね……)


 安心させてあげないと、と思いリアーヌは優しく声をかける。


「ほら、レベッカさん。シャルトル様が助けに来てくださいましたよ」


 学園一のイケメンであるローランに「よく頑張ったな」とか優しく褒めて貰えば、きっと怖かった思いも吹き飛ぶだろうと考え、ローランに言葉を促そうとする。が。


「セネヴィル様……」


 彼女はローランに見向きもせず、うるうるした熱っぽい瞳でリアーヌを見つめた。


「……え? どうされました?」


 戸惑っていると、がしっと手を握られた。そしてずいっと身を乗り出される。顔が近い。


「セネヴィル様は、お強くて格好いいのですね! わたし、貴女に一生、着いていきます。それで、その……セネヴィル様のことをお姉様とお呼びしてもよろしいでしょうか!」

「え?」


 まさかの申し出に、思考が停止する。


 隣でローランが肩を震わせた。……きっと笑いを堪えているのだろう。


(このやろう……)


と心の中で毒付きながらも、レベッカに対して首を振る。


「いや、駄目ですよ。私たち、同級生ではありませんか。リアーヌとお呼びください」

「まあ! お名前を呼ぶことをお許しくださるなんて、感激です! リアーヌお姉様!」


 レベッカの勢いにたじたじとなっているところに、笑いの発作が治ったローランが、レベッカに乗っかってくる。


「大人気だな。俺もお姉様と呼んでもいいか?」


 レベッカは本気だが、こちらはただの悪ノリだ。再び、


(このやろう!)


と思いながら、


「絶対やだ!」


 全力で拒否すると、ローランは声を立てて笑った。



ーーーーーーーーーーーー



 タスキにかけられた魔法を頼りに脱落者の回収に向かいながら、コルトーは同じ騎獣に乗っている隣の教師に話しかけた。


「キャロ先生」

「何ですか、コルトー先生」


 のほほんとした同世代の女教師に、コルトーは苦言を呈した。


「あんまりセネヴィルとシャルトルを一緒にするのは、どうかと思うんだが」


 彼女が今回、リアーヌとローランを組ませるよう提案したと聞いた。

 ……特別クラスの生徒たちからすれば、ローランを狙う一般クラスの一部の過激女子の相手を押し付けることができるため、願ってもない提案だったはずだ。

 しかし。


「シャルトルも迷惑だろう」


 言葉ではそう言ったが、もちろん、コルトーが心配しているのはリアーヌのことである。

 リアーヌがローランを敬遠していることから、彼女の精神的負担を軽くしたいという兄心もあり、同時にリアーヌも年頃の娘だ、あのイケメンに、うっかり心が奪われないよう、距離を取らせるべきだとも考えている。


(まあ、あの賢明な男がリアーヌを選ぶことはないだろうがな)


 冷徹なほど合理的な少年だ。いくらリアーヌが抜群に美しい少女であっても、自分にとって彼女がとても面倒な相手であることは、しっかりと理解しているはずだ。


 小説を書くキャロ教師は、ローランとリアーヌの組み合わせに創作意欲を掻き立てられるらしく、何かと二人を組み合わせようと画策しているが、セネヴィル家の端くれとして、そろそろ釘を刺す必要があると考えた。

 しかし。


「えー?」


 キャロ教師は不服げに唇を尖らせた。


「でもシャルトルさん、楽しそうですよ」


 ほら、とキャロ教師が指をさす。


「え?」


 コルトーがキャロ教師の示す方向を見ると、何か抗議している様子のリアーヌと、それを聞いているローラン、そしてリアーヌをぽーっと見ている女生徒の姿が見えた。


「あんなふうに笑ってるシャルトルさん、見たことなくないですか?」


 キャロ教師が言うとおり、本当にローランは笑っていた。いつもの、何を考えているのか分からない完璧な笑顔ではなく、年相応の少年らしい笑顔だった。



可憐な乙女でも暴れたくなる日もありますよね! TSっ娘だもの。


TS男女好きさんが、もっと増えますように……!


(いつもお読みくださり、またリアクション・ブックマーク・評価を贈ってくださり、ありがとうございます!)

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