16-3
リアーヌは右足を前に出し、木刀を構えた。一片の隙も無い完璧な姿勢である。
「私と一緒に遊びましょう?」
微笑んだその顔は、凄絶な美貌と相まって迫力を醸し出し、少年たちがうっとたじろいだ。
その隙をついて、リアーヌは大きく一歩踏み出す。
(お手並み拝見ってところかな)
素早く木刀を薙ぐ。
「うぉっ!?」
相手は見た目よりは「やる」ようで、ギリギリで避ける。
(へぇ……避けるんだ)
最初のローランと引き離された時の魔法といい、意外と能力は高いようだ。
(面白い)
リアーヌの口元が弧を描いた。
リアーヌという人間は、以前の世界では男で武人だったせいか、好戦的な部分も内包している。しかし今回は女として生まれた以上、お淑やかで気品ある淑女であるべきだと自分に言い聞かせ、荒事からは一歩退いて暮らしてきた。
とはいえ、セネヴィル家は騎士の名門だ。女だからといって弱いことは許されない。それなりに訓練は受けたし、今も寮の部屋で体は鍛えている。
(学園でも武の授業はあるけど、女の子相手に本気で打ち込むことはできないしなぁ)
そんなリアーヌはーー正直、暴れたくてうずうずしていたのだ。
(久しぶりに暴れられそう……!)
女であるが故の非力さを補うため、手に持った木刀に魔法で力を乗せる。今度は避けさせない。
「ぐっ……!」
リアーヌの一撃を、自分の木剣で受けて凌いだ不良そのニの顔が歪む。木刀を受けることに気を取られて、がら空きになった胴体に蹴りを入れた。
そのまま振り向きざま、後ろから襲い掛かろうとしていた不良その一の腰に木刀の一撃を喰らわせる。
「うん、鈍ってはないな」
体がちゃんと動く事を確認しながら、不良その二が立ち上がり、標的を変えてレベッカに向かおうとしている動きを見て取る。レベッカは立ち上がっていたため、せめて安全な場所に移動してもらおうと、
「レベッカ! 下がって!」
と叫ぶがーー驚いたことにレベッカは首を横に振ると、きっと不良その二を見据え、
「この……っ!」
と気合いの声を上げ、相手に向かって木剣を振り抜いた。
土手っ腹に一撃。
(おお)
心の中で感嘆の声を上げる。それくらい迷いのない素晴らしい攻撃だった。
一方で、まさか大人しい少女が攻撃してくるとは思わず油断していた不良少年は、まともに一撃を喰らってげほげほと咽せた。
「レベッカ、ありがとう! すごく助かった!」
「……っ、はいっ!」
その後、レベッカは適宜、男たちと距離を取りながら、魔法でリアーヌを援護した。
草で男たちの足をすくったり、風を起こして間合いを乱したりと、地味だが効果的なものをしっかり選んでいるようだ。正直、後方支援としてのセンスは抜群だった。
不良たちが、援護をやめさせるべくレベッカに向かおうとするが、それを許すリアーヌではない。前衛は後衛を守るのが役割だ。
「私と遊びましょうって言ったでしょう? なのに他の人に目を向けるなんて……つれないな」
足を引っ掛け、倒れた背中を一発打つ。
そんな攻撃を何度か繰り返すうちに、不良たちの顔から血の気が引いて行った。
「っ、……この女ら、強ぇ……!」
「聞いてねえよ!?」
最終的にリアーヌは、レベッカの協力を得て、不良二人を強かに打ち据え、地面に転がしていた。
素早く男たちのタスキを切り、それで手足を縛る。それだけでも飽き足らず、げしげしと尻に蹴りを入れながら、
「だいたい雑魚のくせに、女相手にいきがってんじゃねーよ! あぁ!?」
と口汚く恫喝しているところで、
「リアーヌ……その辺でやめておけ」
と背後から呆れたような声が聞こえた。




