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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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10 紳士な彼の表と裏

 「学園の女神」とやらであるリアーヌは、結局、武闘大会の閉会まで拘束され、学園報の取材対応までさせられる羽目になった。


 口が曲がるほどローランに対する世辞を並べ、ようやく今、解放されて帰路につこうとしているところである。


 そしてーー。


(信じられない、信じられない、信じられない!)


 肩を怒らせ、ずかずかと大股で足早に歩いているリアーヌに頭の中では、ひたすら同じ言葉がぐるぐる渦巻いている。


(手とはいえ、口づけられるなんて)


 しかも、あんな大勢の前で。一体、どういう嫌がらせだろう。

 取り敢えず、何度も服で手の甲を拭ったが、感触は消えてくれない。そのうえ。


「セネヴィルさん!」


 追いかけてくるローランの声が聞こえるが、リアーヌは構わず歩を進める。


(追いかけてくるな、クソが!)


と心の中で罵倒しながら歩速を上げるが、残念ながら男と女の歩幅の差は大きく、あっという間に距離を詰められた。ーーとても悔しい。


「気を悪くしたのなら、すまない」


 ざかざか歩くリアーヌの隣を歩きながら、彼は謝罪の言葉を口にする。当然、リアーヌは無視するが、ローランは構わず言葉を重ねた。


「だが、優勝して勝利の女神の口づけを受けるはずだった俺の気持ちも察してくれ」


 女性など引く手数多、選びたい放題の彼が、よりにもよってセネヴィル家の娘である自分の口づけを受けたかったなど、あるはずがない。


(白々しい)


 栄えある優勝に水を差した自分に対する意趣返しとしか思えなかった。

 リアーヌはちらともローランを見ないまま、低い声で答えた。


「フォローはしたと思いますが」


 ローランは、女である自分を傷つけないために本気を出せなかったのだと観衆に伝えた。観衆もその説明に納得した。

 そもそも、誰がどう見たってローランが手加減していたことは明らかだ。決してローランの名誉は傷つかなかったはずである。


 そんなことを考えていると不意にローランが回り込んできて、真顔で、


「セネヴィルさんは」


と呼びかけてきた。ーー正面に立たれ道を塞がれたので、リアーヌは直角に方向転換して再び歩みを進めると、今度は横に並ばれた。


「君は俺のことを過剰に避けているよね」


 あー、ばれていたか、という気持ちと、観察力の鋭いローランがそのことに気付かないわけもなかったか、という気持ちがない交ぜになる。


 しかし、だから何だというのだろうか。ローランは、全ての人間が自分に興味を持たないと気が済まないような人間ではなかったはずで、むしろ、過度に構われることは好まない性格だった。


 だから編入生のリアーヌに避けられていたとしても、彼にとって、何の不都合もないはずだ。


 それに。


「以前もお話ししましたが、貴方はシャルトル家の人間で、私はセネヴィル家の人間です」


 自分たちの家はライバル同士で、間違っても仲良くするような間柄ではない。


「家のことではなく……君は俺のことが嫌いか?」


 はい、嫌いです。


 そう言いたい気持ちをぐっと抑える。さして接触もないリアーヌが、ローランを蛇蝎の如く嫌うのも不自然だ。


「嫌いというか、少し苦手なだけです……」

「何故? 俺が君に何かした?」


 畳み掛けるように問い詰め、ぐいぐい詰め寄ってくる。何故、大人しく引き下がってくれないのだろうか、この男は。


 まさか「前の人生で貴方にぶっ殺されました」などと言えるはずもなく、リアーヌはローランの勢いに押され気味だ。苦し紛れに、


「華やかな人が苦手なんです!」


と言ってみるものの、


「学園の女神に選ばれた君も、人の目を奪う人だよな?」


と理由になっていない理由で一蹴された。しかも何故か、声に含まれる温度が少しずつ低くなっている。

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