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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます  作者: しののめ


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9-4

「優勝者はロ……うわっ!」


 拡声魔導具でローランの優勝を宣言しようとするレノーの言葉が途切れる。物陰から飛び出したリアーヌが、拡声の魔法を遮り中断させたからだ。

 突然の乱入者に目を丸くするレノーにリアーヌは、


「ねえ」


と嫣然と微笑みかけた。


「飛び入り参加って、可能?」


 リアーヌの迫力に押されたかのように、レノーは無言でこくこくと頷いた。つまり、リアーヌの要望は受理されたということだ。


 ーーちなみに一介の学生であるレノーに、独断で運営方針を決める権限はないだろう。


 ただリアーヌはコルトーの態度から、武闘大会の出場要件に「当日の参加も場合によって可」という旨の記載があることを察していた。


(前に、武闘大会の参加者が減少傾向にあるってコルトーが言っていたものね)


 なんだかんだで武闘大会は負傷の危険を伴う行事だ。


 以前の世界のように、政争のせいで国内の経済が不調で失業者が溢れ返っている頃ならともかく、今世のように政情が安定し景気が上向きな時勢では、王城でなくとも良い働き先がある。

 家柄などで騎士になる必要がある者や王城に就職したい者以外、無理して参加するものではない。


 しかし出場者があまりに減っては盛り上がらない。

 そして武闘大会の観戦料は学園運営のための資金源の一つだ。盛り上げるためなら何でもやってみろ、という雰囲気がある。


 とはいえ、飛び入り参加をするような物好きは、そうそういないわけでーー運営側としては騎士の名門セネヴィル家の一人娘、リアーヌの参加は願ってもないことだろう。


「ありがとうございます」


 リアーヌはにっこり微笑むと、司会者席の後ろの壁に立てかけてあった木剣を手に取った。ーーコルトーがこっそり準備しておいたのだろう。


 あとの進行は元凶のコルトーに任せることにして、リアーヌはローランの元へ向かう。


 優勝者の名がいつまでも告げられず、ざわつき始めた観客席に向かって、レノーから拡声魔導具を受け取ったコルトーが告げた。


「さあ、ここからは女神の試練だ。武闘場に降り立った女神は、容易に人間の男に口づけを与えないもの。彼女の試練に耐えた者のみ、その栄誉に与れる!」


 芝居がかった司会の声を背に、木剣を持って武闘場に降り立ったリアーヌを、ローランが驚いた目で見つめた。そんな彼に、


「女神は騎士に試練を課すものですよ」


と微笑みかけ、木剣を構えた。

 困惑していたローランの顔が、すっと引き締まる。周囲の状況から、うまくこの場を収める必要があると判断したのだろう。彼も木剣を構える。


「さあ、試練の始まりだ!」


 そのコルトーの言葉を合図に、リアーヌは一歩踏み込んだ。同じく踏み込んできたローランと木剣を打ち合わせる。


(軽い)


 その一撃で、ローランが全力を出してこなかったことが分かった。まあ、それも当然だろう。


 ローランは、本性はともかくとして、表面上は紳士だ。

 リアーヌが、意に染まない口づけを回避するために参戦してきたことに気付いたはずだ。嫌がる乙女に口づけを迫るような男ではないし、本心ではきっと迷惑をしているはずである。


 ただ、あからさまに手加減をされたことで、


(なんか、ちょっとムカつく)


と思ってしまったのは、誇り高き騎士の家系の娘としては、仕方のないことだろう。


 何にせよ。


(きっとローランは、上手に負けてくれるはず)


 もちろん、リアーヌには考えがある。


 剣技には演舞という種目がある。剣技を美しく見せるための舞である。舞にはいくつか種類があるが、二人で行うものに戦舞がある。その名のとおり、戦いを模した舞だ。


 その中の一つに、二人の騎士が信念のために戦い、決着をつけるという物語を表現した「舞散演舞」というものがある。散りゆく敗者の演技に重きを置いた見栄えの良い剣舞だ。


 その演舞を使えば、怪我などの危険を冒すことなく乗り切ることが可能だろう。

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