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特別クラスに編入してきた女学生を、女性人気抜群のローランが特別扱いすることは、望ましいことではないはずだ。
「私たちはただの同級生で、特別に親しい友人というわけではありません。ですから適切な距離を保ち、普通の同級生として扱っていただけると嬉しいですわ」
決しておかしくない主張だと思う。
誰もがローランの眩しさに晒されたいとは思わない。何故なら目立ちたくない人間もいるからだ。
(ローランに構われたら、変に嫉妬されたりするし)
特別クラスの生徒は現実的な人間が多いので、ローランの相手を夢見る女生徒は少ない。が、そうではない一般クラスの一部の過激な女生徒の目は、既にリアーヌに厳しい。
リアーヌの言わんとせんことを、聡明なローランが気付かないはずもない。
ローランは何か考え込んでいるようで、しばらく黙っていた。が、やがて、
「そうか。迷惑をかけるのは本意ではない。ーー君の意思は尊重しよう」
と答えた。
聡い彼は、リアーヌの置かれている立場を察してくれたようだ。
そうして特に何事もなく、あっさり引いてくれたので、リアーヌは心からほっとしたのだった。
⭐︎
以降、ローランは不必要に構ってくることは無くなった。席は今更変更はできないので隣のままだが、彼はクラスメートとして、また異性として適切な距離を保ってくれている。
(さすが、紳士)
そうこうしているうちに暑1の月になり、編入して二度目の試験が行われた。
コルトーには釘を刺されたし、やはりセネヴィル家の人間として、あまり不甲斐ない成績だと外聞が悪い。
特別クラスの「中ほどの順位」を目指して臨んだ試験の結果を確認するため、リアーヌは学内掲示板へと向かった。
学生が集まっている中に入り込み、張り出された結果を見る。自分の名前は上から十五番目にあった。
(十五位か。いいところだな)
特別クラスの人数は三十人なので、綺麗に中間となり、満足いく結果だ。
にんまりしていると、ちょうど居合わせた副級長のユミナが、嬉しそうな表情で声をかけてきた。
「リアーヌさん、すごく頑張られたんですね」
前回より十番以上順位が上がっているリアーヌに、惜しみない賛辞を送ってくれるユミナに、リアーヌは笑顔で応じた。
「ありがとうございます。シャルトル様をはじめ皆さんが良くしてくださったお陰です」
クラス中がローランがリアーヌに勉強を教えていたことを知っている。ここはローランの顔を立てておくことにした。
そして改めて掲示板を見て……一番上にローランの名があることに気付く。
「あ、シャルトル様が一番ですね」
「ええ、流石です」
何となく「負けた!」という気持ちになり「次は絶対勝つ!」という闘争心がむくむくと頭をもたげそうになるが。
(いや、もうローランとは張り合わないんだ)
と自分に言い聞かせる。今の自分は前とは違うし、社会情勢も変わっている。
(落ち着け、私)
気を逸らすため何気なく辺りを見回すと、端の方で打ちひしがれている男子生徒に目が止まった。特別クラスの生徒で、いつも一番前の列の真ん中に座っている真面目そうな男子生徒だ。
リアーヌがそちらを見ていることに気付いたユミナが、困ったように説明してくれた。
「彼、学年一位を目指しているけれど、なかなか難しいみたいで……」
「シャルトル様がいますものね」
「シャルトル様は五位以内には必ず入っていますが、常に、というわけではありませんよ。ただ、そうじゃない時にはレノー様やマリアンヌ、私なんかが一位だったりして……」
「あー……そうなんですね」
どこにでもいるものらしい。二位にしかなれない星の下に生まれてきた者は。
かつての自分を見ているようで心が痛んだ。
「あの」
リアーヌは、地面に膝をついて放心している男子生徒の側に近寄り、しゃがみ込む。その落胆している肩に、そっと手を置いた。
「あの、とても素晴らしい成績ですね。私、尊敬してしまいます」
すると男子学生は弾かれたように顔を上げ、がしっとリアーヌの手を掴んできた。
「そんなふうに言ってくれるなんて、なんて貴方は優しいんだ! ありがとう、セネヴィルさん! 僕は次の試験、貴方に一位を捧げるとあの空に誓う!」
学生はリアーヌの肩を抱き、びしっと空に向けて指を差した。
(大袈裟だなぁ)
と苦笑していると、不意に刺すような視線を感じた。
リアーヌが出所を探ると、ローランが物言いたげに、こちらをじっと見つめていた。




