6 初めての試験
暖2の月初めに、編入して最初の試験が行われた。
(これぞ学生って行事だなぁ)
と感慨深く思いながら試験に臨んだのが一週間前。
試験の問題は、余裕で解けるものだった。しかしリアーヌは、あまり目立ちたくないこともあり、真ん中くらいの成績を目指して適度に間違えて提出したところだ。
しかし、答案を返す教師の何とも言えない表情から、配分を間違えたと悟った。
「リアーヌ。答案がまだ返ってきていない教科もありますけど、試験結果は張り出されていますわ。一緒に見に行きましょう」
昼休みにマリアンヌに誘われ、順位表が張り出された掲示版を見に行けば、案の定、二十九位という成績だった。特別クラスの生徒は三十人であるので、下から二番目という有様である。
ちなみに一般クラスとは試験科目が違うため、成績表は別個となっている。
(これは……流石に良くない……)
リアーヌが頭を押さえているところを、
「だ、大丈夫ですわよ、リアーヌ。初めての試験ですもの。これから、これから」
と慰めてくれたマリアンヌが、今回の首位だ。以前と変わらなければ、マリアンヌは波が大きく、上位に食い込むこともあれば、下位に沈むこともあるタイプだ。
「今回は前年の復習も兼ねてましたから、試験範囲も広かったですし。編入生のリアーヌには不利な条件でしたもの」
マリアンヌのフォローが胸に沁みると同時に、心が痛い。
「次はもっと頑張ります。マリアンヌは一位ですね。おめでとうございます」
そんな会話を交わしながら、リアーヌはふと思う。
(ローランは一位じゃないんだな…‥)
今一度掲示板を確認すると、ローランの名はマリアンヌの下に表示されていた。つまり二位だ。
前年の総合一位はローランだったと聞いているので、おおむね一位を取っているのだろう。
しかし、アンリというセネヴィル家の嫡男が存在しないこの世界では、前回のように全ての試験で一位を取らなければならないほどの圧力に晒されていない、ということだろう。それにしても。
(適度に手を抜いても年間首席か。腹立つ)
こっちはいつでも必死だったのに、と思うと八つ当たりだが業腹だ。
ふと視線を感じて顔を上げると、一瞬、ローランと目が合った。どこか軽蔑したような色を宿した視線だ。
リアーヌの成績は一般クラスも含めれば中の上だが、特別クラスの生徒としては、確かに目も当てられない成績だった。
級長のローランから非難の目を向けられるのは、致し方ない。
(そういえば前の世界では、試験の結果とかで軽蔑の目で見られたことはなかったな……)
ローランは、アンリの努力は認めていたように思う。そのせいか、今のローランの侮蔑の目は、ちょっと胸に痛い。
これ以上、この場にいても良いことはなさそうなので、マリアンヌと共に食堂へ向かおうとしたところ、
「セネヴィル、ちょっと」
と聞き覚えのある声がして、後ろからぽんと肩を叩かれた。恐る恐る振り返ると、顔を引き攣らせているコルトーの姿があった。
⭐︎
放課後、成績について話があるので研究室に来るように、とコルトーに言われ、リアーヌは授業が終わると、殊勝に研究室へと向かった。
学年主任である教師コルトーは先述のとおり、リアーヌに学園行きを強く勧めた遠縁の親戚である。リアーヌの母が経営する私学を出て、王立学園に就職した。
一人っ子のリアーヌにとって、コルトーは兄のような存在でもあり、気安いが。
「失礼します……」
とコルトーの研究室に入り扉を閉めるなり、小言が飛んできた。
「リアーヌ。お前、いい加減にしとけよ」
彼は目を吊り上げながらリアーヌの正面に立つなり、試験の答案を顔の前に突きつけた。




