第209話 イメージ
ダリウスの懇願があって、今回はズボンもしっかり用意した万全の態勢だ。店売りの兜で顔を隠し、オーダーメイドの鎧もバッチリ着こなしている。やっぱこいつ体でけぇと、まあ圧巻の一言だ。……ただ、まあ。
「ふふん、どうじゃどうじゃ? 今回は決まっておるじゃろう?」
「何と言うか……凄いは凄いんだけど、前回のインパクトが強過ぎたなぁ」
「うむ、下半身の大半を露出させた弊害と言うべきか、確実にその光景に足を引っ張られている」
「端的に申しますと、キャラが薄まりましたわ! これではただのでけぇ騎士ですの!」
そう、俺を含めて皆が感じたように、思ったよりもインパクトがなかった。いや、前回のそれが良い意味でも悪い意味でも、強烈過ぎたのだ。
「うおおおい、どうしてそんな感想が最初に出て来るんじゃ!? 思っていても伏せる場面じゃろ、今は!?」
「偏にフンドシのインパクトが悪かったとしか」
「フンドシぃぃぃぃ!」
ダリウスは項垂れた。そう、ちょっと前のオルカのように。
「しかし、この鎧――白壁の重鎧の性能は凄いぞ。でかいだけあってステータス上昇値が過去一だし、効果も凄まじい」
「効果はイレーネ鉱石とアリーシャ鉱石の影響だろうな。魔法・快復は回復と解毒を同時に行い、武芸百般はあらゆる武器を使いこなす。どちらも非常に優秀な能力だ」
霊刻印の特性は二人の性質を反映しているんだろう。納得の内容と言える。回復魔法はシスターであるイレーネのイメージにピッタリだし、武芸百般は何でも直ぐに上達するアリーシャ師父を体現していると言える。
さて、それはそれとして、魔具であるダリウスの装備の力は、俺やオルカにも適用される。よって、今後は霊刻印の構成に組み込まずとも、この二つの力を行使できるようになる訳だ。……強くない? 実際の数値にしてみると、これだぜ?
=====================================
魔剣ダリウス・オルカ
耐久値:264/294[+30]
威力 :258[+3]
頑強 :426[+87+55+20]
魔力 :209[+30]
魔防 :379[+92+48+26]
速度 :245[+11]
幸運 :295[+75+■]
霊刻印(ダリウス)
◇飛剣術LV6
◇増殖LV6
◇召喚・屍LV6
◇耐性・溶解LV7
◇空蹴LV5
◇強健LV5
◇魔法・毒嵐LV5
◇再生LV7
霊刻印(オルカ)
◇魔法剣術・氷LV6
◇竜人・炎LV6
◇修繕LV7
◇照準LV7
◇魔法・氷刻LV5
◇耐性・溶解LV7
◇魔法・炎樹LV5
◇強酸LV7
霊刻印|(装備)
◇魔法・快復LV5
◇武芸百般LV5
探索者装備(ベクト)
体 :滂沱の軽鎧(頑強+40、魔防+38、幸運+25)
腕 :刃の太陽(威力+3、頑強+4、魔防+4)
足 :滂沱の洋袴(頑強+35、魔防+42、幸運+25)
靴 :滂沱の履物(頑強+8、魔防+8、速度+11、幸運+25)
装飾 :縁故の耳飾(右)
装飾 :縁故の耳飾(左)
装飾 :夢魔の祝福(幸運+■)
魔具装備(ダリウス)
体 :白壁の重鎧(耐久値+30、頑強+55、魔防+48)
腕 :無
足 :無
魔具装備(オルカ)
体 :銀狐の軽鎧(頑強+10、魔力+12、魔防+14)
腕 :銀狐の腕甲(頑強+2、魔力+4、魔防+3)
足 :銀狐の足甲鎧(頑強+8、魔力+14、魔防+9)
装飾 :縁故の耳飾(左)
=====================================
うん、やっぱ想像以上に強ぇよ。実質霊刻印の枠が二つ増えたもんだし、これで俺ら全員が全ての武器に適応し、回復と解毒までこなせるようになったんだもん。これから白の空間に帰って霊刻印の構成を対ゾンビ仕様に変えれば、随分と攻略難度も変わるだろう。
「しかし、頑強と魔防が本当に高くなったな。ここだけであれば上位探索者に匹敵、いや、ひょっとすれば同等以上になっているかもしれん」
「相棒、今度爆さんの爆発に巻き込まれてみる? 無傷で済むかもしれんぞい」
「嫌だっての。仮に大丈夫だったとしても、あの爆発を間近で受けたら鼓膜が死ぬわ。あ、そうだ。グレアさん、鎧を作ってもらった直後で申し訳ないんですが、また珍しい鉱石を入手しまして」
「あら、それはそれは。今度はどのようなものを手に入れまして? 前回の鉱石は本当に珍しいものでしたが」
「はい、このベクト鉱石です」
そう言って、俺は先ほど入手したばかりの鉱石をグレアさんに手渡した。
「……もう一度お願いできます?」
「ベクト鉱石です。それ以上でもそれ以下でもありません」
「いや、どういう事ですの!?」
俺は懸命に事情を説明した。別に俺がそんな風に命名した訳ではなく、前回の二つの鉱石もそうで、白の空間の住人の名が冠されてしまうのだと。
「そ、それはまた風変わりな仕様ですわね。ですが、大よそは理解しました。つまり、このベクト鉱石を用いれば、ベクトさんの特性を装備に付与できるのですね?」
「恐らくは。一体どんな結果になるのかは、正直さっぱりですが……」
俺の特性って何だろう? 宙を飛んだりゾンビを操ったり? 霊刻印の種類にもよるが、被らなければ良いなと密かに思ったり。
「ふむふむ、私の腕の見せ所ですわね! それで、何の装備を作ります?」
「そうですね、ダリウスの足装備が良いかなと。それで多少は騎士感が増すと思いますし」
「相棒、騎士感って何じゃ、騎士感って。まあ、言わんとしている事は分かるがな。装備一式が揃えば、ワシも堂々と表を出歩ける!」
「いや、ダリウスが表に出ちゃうと、俺の武器がなくなるって。お前が外を出歩く機会はあまりないと思うぞ? 特に探索時は」
「ちょっ、ワシの見せ場は!?」
今まで散々姿を現さなかった癖に、こいつは何を言っているんだろうか。
「そんな訳で、またよろしくお願いします、グレアさん。今度また、お酒のお裾分けをしますね。新酒を入荷――と言って良いかは謎ですが、新しいものが入ったは入ったので」
「それは楽しみですわね。是非ともお願い致しますわ、オーホッホッホ!」
こうして俺達は探索者の街を後にし、白の空間で霊刻印を入れ替えた後に、また先の城エリア『誅せしむ魔城』へと赴くのであった。
◇ ◇ ◇
城の女神像の場所に転送される。さ、今日も今日とて頑張りますか。
「うし、無事に到着だ。今回は城の探索を進めるのもそうだが、マチ・イタミを捜し出す事を目標としよう。ただ、これだけ大きな城の中だ。そう簡単に見つかるとは思えないけどな」
「お、フラグと言うやつか? 相棒がそう言うと、ほぼほぼ実現してしまうからの。今のうちに身構えていた方が良いわい」
「死の巫女の加護、と言うやつか。マチを発見できなくとも、それと同等の何かが起きそうで心配だな。今のうちに備えておいた方が良い」
「お前ら……」
実際問題、そんな風潮があるから強くは言えない俺。悲しい、とても悲しい……
「クッ、まあそのフラグが成立した場合、俺らの目的は達成されるんだ! むしろ来い、歓迎してやるわ!」
「お、開き直ったのう」
「そんなベクトも素敵だと思うぞ」
「はいはい、出発出発!」
ダリウスの新装備の力、そして霊刻印構成を見直した俺達は、再度この魔境へと足を踏み入れる。




