第208話 白き鎧
「こ、これは……」
約百体という過去一の数を倒した筈なのに、思ったよりも成長していない、か?
「ううむ、堕落歓楽街で限界まで数字を上げた弊害と言うべきか、多少攻略難度が違うところで黒霊を倒したとしても、成長度合いはそこまでは望めない……そう言う事だろうな」
「じゃが、魔力と魔防は結構成長しておるよね?」
「俺達がこれまで攻略してきたエリア、魔力周りをあまり成長させてくれなかったからなぁ。魔法を使う敵とか、実際あんまり居なかったし。今回はマッドーが良い仕事をしてくれたんだと思う」
マッドー11体でこれだから、ホントに今まで成長してなかったんだなと実感。俺の魔力ぅ……
「まあまあ、オルカの装備補正を加えれば、欠点のない良いステータスになったと思うぞい」
「それと今回獲得した霊刻印についてだが……やはり、全体的にレベルが高いな。見た事のない霊刻印も複数ある」
「ゼラ、キッシー――この悴かせる忠誠が持っている、騎士道と守護者って能力はどんなものだ?」
「説明致しましょう。騎士道を霊刻印として刻んでいると、不意打ちや状態異常攻撃を使うと言った、卑劣な行動が一切できなくなります。その代わり、頑強と魔防がぐんと底上げされる能力ですね。デメリットがある分、他の強化よりも上がり幅が凄いです」
ああ、だからキッシーって、あんなにタフだったのか。使えば強そうではあるけど……卑劣作戦が一切できなくなるのは、流石に許容できないかなぁ。俺が装着すれば、連動してオルカにも影響がある訳だし、そうなると遠距離からの狙撃が一切できなくなってしまう。
「一方、守護者は敵の攻撃の矛先を自分に向ける能力ですね。所謂ヘイト管理用の霊刻印となります」
「ゾンビが大群で現れた時、ワシらの視線、それに違う黒霊に向けた筈の攻撃がキッシーに吸い込まれたのは、そういう事だったのじゃな」
「貴族ゾンビやマッドーの処理に苦戦させられたやつだな。あの時はキッシーを支配下に置くなりして何とか対応できたが、召喚・屍がなかったらと思うと恐ろしい話だよ。自分で使うかどうかは……状況次第かな?」
とりあえずはキンちゃんの倉庫行きだと思う。
「そして、あのメイドゾンビは超高レベルな感染持ちだったのか。何かの拍子にミスって攻撃を受けていたら、万が一があったかもなぁ」
「同じレベルの耐性を持っているようじゃし、今後あの城内を探索する時は霊刻印の構成に組み込んでおくべきじゃの。レベル7の耐性があれば、殆どの感染は防ぐ事が可能じゃろ」
「感染自体も馬鹿にならないぞ。今後、堕落歓楽街のようなホワイト達が出せないエリアに行き付いた時でも、自力で黒霊を感染させる事ができる。こちらもレベル7だから、即効性も高い」
「確かに……!」
今まではわざわざ屍街に戻って、そこで感染の霊刻印を再入手していたからな。このメイドゾンビはあのエリアに出やすいし、実はかなりのお助けキャラだったのでは?
「あとはレベル4の魔法・超速、対象のスピードを底上げする魔法だ。説明するまでもなく超有用、どんな場面でも使っていける。しかもだ、モルモが白の空間の住人になった事で、イレーネから学べる魔法一覧が総じてレベル5になっていた。この超速の魔法もイレーネから学べば、ワンランク上のものが習得できるだろう」
「貴族ゾンビが持っていた疾駆と合わせれば、更なる向上も望めるのう」
「あの速度に慣れる為には、前に言っていたように鍛錬が必要だろうがな」
俺達は新たに入手した霊刻印について語り合い、今後の活用法を見出していった。
「ああ、それとベクト、またモルモが採掘で埋蔵物を発見しましたよ」
「おっ、マジか。ゾンビ達を大量に倒した甲斐があったってもんだな。それで、何が見つかったんだ?」
「ベクト鉱石です」
「……すまん、ワンモアプリーズ」
「ベクト鉱石です。当然、貴方の採掘所から出て来ました」
「そ、そっか~」
なんてこった、遂に俺の名を冠した鉱石が現れちゃったよ……
「クッ、ベクトが羨ましい! モルモがその採掘所を掘ったと言う事は、モルモに信頼される証でもある……! 本当に、本当に羨ましいッ……!」
「項垂れておるのう」
「これで悔しがるのが最高にオルカって感じだよな」
と、オルカの変わらぬ様子に感心していると、耳飾りより声が聞こえてくる。グレアさんの声だ。
「あっ、漸く繋がりましたわ! ベクトさん、聞こえますか? 私、グレアですの」
「聞こえていますよ。ついさっき、黒の空間から帰って来たところでして」
「それはお疲れ様ですの! 実はお知らせしたい事がありまして――」
◇ ◇ ◇
グレアさんとの通話後、俺達は探索者の街へと転移した。と言うのも、ダリウス用にオーダーメイドしていた鎧が完成したと言うのだ。
「良かったな、ダリウス。これで真っ裸の状態から卒業だぞ」
「うむ、汚名返上と言ったところか」
「別に汚名を着た覚えはないからの!? 好きで装備を着ていない訳でもないし!」
と、ダリウス容疑者は申しており。
「冗談はさて置き、グレアさんのところへ行こう。耳飾りで転移時間を合わせたから、街の中にはもう到着している筈だ」
「今回はちゃんと着るものがあるんじゃろうな?」
「……多分?」
「多分!?」
些細な事は無視し、グレアさんのところへと移動する。
「ようこそいらっしゃいました、ベクトさん! それにオルカも! お待ちしており――いえ、私もちょうど今来たところでしてよ! オーホッホッホ!」
おっと、グレアさんが上機嫌だ。これは凄い装備が出来上がったのか?
「お疲れ様です、グレアさん。ダリウスの装備が仕上がったんですって?」
「ええ、ベクトさんから頂いた二種の鉱石を用いて、それはもうビッグな鎧に仕立てましたわ。ぶっちゃけ、でかくて疲れましたの! 巨人の鎧を作ってる感じでしたわ……!」
「いや、ホントお疲れ様です。それもこれもダリウスが無駄にでかいせいで……」
「体格の話はしゃーないじゃろ!? 不可抗力にもほどがある!」
「それで、その鎧は?」
「こちらですわ!」
グレアさんが自身の魔具の中より、真っ白な何かを取り出した。それはダリウスの巨体に相応しい白き鎧の城、重量感たっぷりでガチガチな鎧だった。
「これはまた……でかいな。俺が着たら潰れてしまいそうだ」
「と言うより、そもそもサイズが合わないだろう。胴体どころか足先まで、すっぽりと入ってしまいそうだぞ」
「故に苦労したんですの。ええ、とっても苦労しましたわ……!」
「のう、今回は下に履くものもあるよね? この鎧だけを着る訳じゃないよね!?」
はい、そんな訳でダリウスを実体化させ、鎧を着てもらいます。女性陣には後ろを向いてもらい、これに兜を被せて……と。
「ほい、完成! 今回はちゃんとズボンも用意したぞ! サンドラにチクチクと縫ってもらった!」
「良かった、今回は下半身を晒さずに済んだ……! これで不名誉な変態の名から脱却じゃ……!」
重厚な鎧を纏い、前回同様売り物の兜を借り、サンドラお手製の超大サイズのズボンを穿いたダリウスが登場する。
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白壁の重鎧(体装備)
耐久値:+30
頑強 :+55
魔防 :+48
効果 :魔法・快復LV5が霊刻印に装着される。
武芸百般LV5が霊刻印に装着される。
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