第206話 城内探索
とりあえずホワイトが反応を示す方へと歩を進めた俺達は、部屋から出て通路の右側を進む事にした。暫く進むと右手側に扉があり、調べてみるも先ほどと同じような部屋で、特に目ぼしいものはなし。ホワイトも隠し扉の類はないと言うので、トボトボと通路へと戻るのであった。
「しっかし、相も変わらず騎士鎧が並んでいるな。全部が全部、黒霊って訳じゃないみたいだけど」
「ゴオルルルゥ……」
「む、またホワイトが唸り出したな。あそこにある騎士鎧は黒霊と言う事か」
「今までの頻度からして、十体のうち一体に黒霊が混じっとる感じかの」
今度の騎士鎧もキッシーよろしく、胸の前で剣を掲げている姿勢を保っている。見た感じ、黒霊の種類も同じかな。右手を挙げろ! と、召喚・屍で指示を出してみる。
「ギチッ……!」
「綺麗に手を挙げたのう」
「ああ、どうやら彼もまた、キッシーのようだ」
「どうする? 奴も仲間にするか?」
「それも良いけど、キッシーの実力も確認しておきたいな」
あちらのキッシーの前にこちらのキッシーを召喚し、全力で戦うよう双方に指示を出してみる。
「「ギチチチチッ……!」」
鎧の内側からそんな音が聞こえて来た直後、俺達の眼前にて苛烈な斬り合いが開始される。その剣の腕前は飛剣術LV6を持つ俺と遜色なく、どうみても達人級。しかも斬撃を浴びせてもビクともしない、そんな耐久性までもを披露してくれた。
「……真っ正面からここまで斬り合って、互いにダメージらしいダメージがない。攻撃は食らっている筈だから、物理的な攻撃の類に耐性を持っているのかもしれないな。シュラの耐性・物理と同じ力か?」
「正面からまともに斬り合ったら、私でも苦戦しそうだな。やはり魔法を交えて倒すのが定石になりそうか」
「うーむ、真っ当に強敵じゃの。攻防に優れた前衛型、仲間と共に現れたら面倒な事になりそうじゃわい」
「あー、それ普通にありそうで困るやつー」
ともあれ、このまま斬り合い続けてもキリがなさそうだ。二体のキッシーを止め、次にオルカに魔法等の物理以外の攻撃を撃ってもらう。最初にブレス。
「おっ、効果がありそうだな。普通に鎧の中で燃えてるっぽいぞ」
「炎は鎧の防御なんて関係ないからな。だが、それでも倒れない。耐久性も高そうだ」
次に魔法・炎樹。
「これも効果ありだな。そもそも炎が弱点なのか?」
「ベクト、試しにキッシーに抵抗させてみてくれ――あ、倒してしまった……」
検証結果、ブレスと魔法攻撃は普通に効く。炎が弱点の可能性高し。しかし、それでも恐ろしく頑丈。無抵抗の状態でここまで耐えたからな。青霊もどきと同じか、それ以上に硬そうだ。
「キッシーが感染者で良かったよ。武器越しには感染しないし、戦闘になってもこっちがゾンビになる事はないだろうからな」
その後も順当に探索を進める俺達。が、そんな俺らに新たな魔の手が襲い掛かる。通路の奥より、既に動いているキッシーが二体、そして魔導士のようなローブ姿のゾンビが一体現れたのだ。
なんてこった、普通にありそうで困るパターンと早速遭遇してしまった。当然、視界に入った瞬間に召喚・屍による命令を発送。奴らの動きをピタリと止めるに至る。
「初見の魔導士ゾンビもそうだが、最初から動いているキッシーも初めて目にするな? 黙ってポーズを取っている奴、自ら動いて回る奴の二種類が居るのか?」
「いや、あの魔導士が近くまで接近した事で起動したんだろう。奴ら同士は敵ではないから、そのまま魔導士に合流したと見るべきだな」
「飾られた騎士鎧に擬態するだけでも厄介じゃのに、他の仲間が通ればパーティとして加わると言う訳か。先の戦闘技術に加え、協調性もまた備えておるとは……とりま、あの魔導士の攻撃方法を確認しとく?」
「だな、新たなキッシーが良い的代わりになってくれそうだ」
その後、俺達は魔導士ゾンビ――マッドーに色々とやらせてみた。分かったのは、彼が高レベルの魔法・炎弾を有し、更には魔法で仲間を回復、スピードの底上げもしてくれると言う事。特にスピードアップの効果は絶大で、試しに俺らにかけてもらったら凄い事になった。俺、風になる。
「こいつはまた、とんでもないな。体感、三割くらいの速度アップって感じだ」
「しかし、逆に速過ぎる気もする。このままでは速度に私の意識が追いつかないと言うか、完全にスピードに振り回されているようだ。これを実戦で使うには、ある程度の訓練が必要だぞ」
「マッドーを倒して霊刻印を入手する事ができれば、イレーネの魔法一覧にも新たに登録される筈だ。白の空間で慣らすのが一番安全そうかな。それにアリーシャ師父が一番最初に慣れて、使い方のコツを俺達に伝授してくれるかもしれない」
「確かに、アリーシャなら十分にあり得る話だ。その線で考えて行こう」
「うむ、アリーシャなら安心よな!」
俺達のアリーシャ師父に対する信頼は厚かった。
「さて、倒しかけているキッシーに止めを刺して、このマッドーは仲間に入れてと……よし、オーケー。今度はマッドーが一緒に出てきたら、最優先で倒す事にしよう。敵に速度の底上げをされたら面倒この上ない。まあ、その前に命令して止めもするけど」
「そろそろ女神像を見つけたところじゃの~」
俺達は更に歩を進める。すると、通路の先にエントランスホールらしき場所を発見。ここが城の本来の入り口、だったのだろうか。それと思わしき鋼鉄製の大扉があるが、何重にも錠をされた状態で閉じられている。そして俺達が進んでいた場所は、どうやらこのエントランスホールに繋がる通路の一つだったようだ。向こう側にも同じような通路があり、鉄の大扉の向かい側にも通路を発見。更にこのエントランスは二階まである吹き抜け構造で、赤絨毯の敷かれた豪華な階段も存在している。もちろん、この階段は二階の方へと繋がっており、その先にもまた幾つかの通路が――うーん、予想していた事ではあるけど、ひっろいなぁ。
「さて、どの通路に向かうべきか……」
「ベクト、こういう時こそのホワイトだ。ホワイト、女神像はどっちにありそうだ?」
「グゥルルルゥ」
「よし、あちらの通路だな!」
示されたのは向かい側の通路だった。うん、ホワイトが居るとマジで安定感が違うや。
「正面の通路に進むのは良いとして……まずは二階から降りて来た、あの黒霊達を始末しないとな」
ゆっくりとした歩調で階段を降りてきたのは、ボロボロのメイド服を纏った女ゾンビ集団だった。全部で五体、俺らに向かって来るだけで、他に何かして来る様子はない。数は多いが、まだ召喚・屍で操作できる範疇かな。
「そこに止まれ、っと。よし、こいつらにも通用するな」
「元々はこの城の使用人として働いておったんじゃろうな、可哀そうに」
「だからと言って容赦する訳にもいかないだろう。ベクト、油断するなよ。ああいった見た目の手合いは、戦闘力ではないところで面倒を起こすものだ。自爆くらいはすると思った方が良いだろう」
「分かってる。メイドさん一体だけ味方に引き入れて、残りはオルカの炎で楽にさせてやってくれ」
このメイドさんにも炎は有効のようで、特にオルカのブレス攻撃に耐える様子もなく、そのまま魔具に吸収されていった。キッシーと比べて脆過ぎる気がするが……オルカの言う通り、何らかの厄介な霊刻印は持っていそうだ。じゃないと攻略難度と釣り合わないからな。
「倒された場所に見えない感染の靄があるとか、そういうオチはないよな……?」
「あり得そうだから困る……」




