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第204話 直通

 さて、ダリウスの我が儘を掻い潜り、何とか防具製作に漕ぎつけた俺達。が、それが直ぐに完成する訳ではない。ここは一つ原点に立ち戻り、時計塔の地下へと行くとしよう。きっと彼が待っている。


「お、来た来た。やっ、お久セカンドストーリー!」

「やっぱここで待ち構えていたのか、クレちゃん」


 転送先の愉快な女神像の近くで、クレちゃんが謎のゲームをやりながら寝転がっていた。俺達の事を待っていたんだろうが、一体いつからこうしていたんだろうか。何か現代的な菓子袋っぽいものまで落ちてるし。


「クレちゃん、約束もなしに待っていたのか? 下手をしたら、延々とここで待つ事になっていたぞ……」

「大丈夫、僕は待てる男だからね! 暇潰し的な意味で!」


 君、忙しいからマチに連絡しに行けないとか何とか、そんな事を言ってなかったっけ?


「まあ、クレちゃんが良いなら良いけど……何かこう、通信機的なものはないのか? 俺とオルカは縁故の耳飾ってのを使って、お互いの白の空間で通信したり、転移するタイミングを合わせたりしているぞ」

「ほほう!? 探索者同士が毎回どうやってタイミングを合わせているのかと思ったけど、そんな便利な装備があったんだね! 目から鱗、愛はやっぱり最後に勝つ、だねッ!」


 純愛最高! と、天に拳を突き立てるクレちゃん。うん、それで連絡手段は?


「連絡手段については追々考えておくよ。これまで孤高の純愛探究者だった僕に、他の探索者と連絡を取り合う方法を考えた事なんて、これっぽっちもなかったからね! 何なら今でさ、ベクトきゅんとオルカちゃんの邪魔をしちゃって良いのか葛藤しているくらいさ! なあ、それで良いのか僕? 本当にその選択が正解なのか、僕ううううッ!?」

「その選択が正解で良いから、安心して連絡手段を考えてくれ」


 と、俺は何とかクレちゃんを説得するのであった。何か最近、変な説得をしてばかりだな、俺。


「で、本題に入るけど……今日会いに来たのは城塞都市の中央、あの城に繋がる秘密通路を、俺達に教えてくれる為だな?」

「イエスイエスイエッス! いやあ、ベクトきゅんは話が早くて助かるよ。鬱屈とした探索者とは大違いだ。君の爪の垢を煎じて飲ませ――いや、それは認められないな。ベクトきゅんの爪の垢はオルカちゃんのもの、僕がどうこうして良いものじゃない。あぶねぇあぶねぇ、己が信念が折れるところだったぜ!」

「頼むから、鬱屈とした探索者のヘイトを俺に向けないでくれよ……? ええと、それで? これから案内してくれる感じで合ってる?」

「うん、そのつもりさ! この奥にあった筈の大黒霊の反応、今はもう綺麗さっぱりなくなっているからね。つまりは二人が倒したって事なんでしょ? うんうん、二人とも前と比べて明らかに強くなっているし、討伐したのは確定的に明らかだ! 第一の前提条件、五体目の大黒霊を倒す、無事クリアでっす!」


 クレちゃんはどこからともなく、愉快なファンファーレを鳴らし始めた。同時にこれも事前に用意していたのか、花吹雪をまきまくってもいた。


「いやー……ああ、ありがとね」

「祝ってくれるのは嬉しいが、そろそろ移動しないか? 異常進化種マムの下に居るであろう、マチ・イタミに先の件を伝える。これは共闘の為に必要な事なんだろう? ならば急ごう、そのマチとやらが衰弱している可能性だってある」

「それはないと思うけど、まあ、建前上はそうしようかな? ではではレッツレッツ、僕だけが知る秘密の通路へ~。上へ参りま~す」


 と、エレベーターガールの如きポーズをして、会談を登って行くクレちゃん。やれやれ、この道中は愉快なものになりそうだ。


 そうして俺達は時計塔の外にでて、堕落歓楽街の中を歩き続けた。時に先導するクレちゃんが人爆弾の自爆に巻き込まれ、時に先導するクレちゃんが落とし穴に引っ掛かり、時に先導するクレちゃんが偽物の宝箱に食われ――何で一向に死なないんだろう、この人?


「いや~、酷い目にあった酷い目にあった。これはアラリャネからの呪いかな? そうとしか思えないドジっぷりだね、僕ぅ!」

「……そんな呪いもあるのか?」

「さあね? でも、可能性は無きにしも非ず! なぜならアラリャネは根暗で卑怯で性格が悪いからッ!」


 この人ら、本当に協力し合おうとしてんのかな?


「おっと、僕が自爆に三回ほど巻き込まれていたら、もう目的の場所に着いちゃった! お待たせ、ここが目的地だよ」

「ここが?」

「目的地?」


 俺とオルカが連れて来られたのは、何でもない路地裏の行き止まりだった。ピンクの靄で満たされ、ボロボロになった樽が二つほど置かれている。ただそれだけ、秘密の通路と思わしき痕跡は……少なくとも、俺には感知できない。


「一見何もない行き止まりの通路だけど……ほら、ここの石畳! この石の部分だけ若干ピンクになっているでしょ!?」

「えーっと……オルカ、分かるか?」

「いや、ピンクと言われて、ここにある靄のせいで違いが分からん」


 だよな、分からん。クレちゃんが指先で示している今も、ぶっちゃけよく分からん。


「ヒャッヒャッヒャ! やっぱ分からないか~。アラリャネにもそんな嘘ついて楽しいんですか? 祟りますよ? なんて脅されたくらいだし。まあ兎も角、この色合いの違いでここが怪しいと、以前の僕は踏んだ訳ですよ! でもって、その結果!」


 ババン! なんて言いながら、ピンクの石(仮)を石畳から抜き始めるクレちゃん。すると――


 ――ガコン、ガコンガコン。


 石を抜いた周辺の石畳、それらが地面の下へと落ちて行き、やがて地下への階段を形成するのであった。


「なるほど、これが城への直通通路――いや、絶対分かんないって。こんなん発見できないって」

「ベクトに同意する。周辺に怪し気な雰囲気があれば別だが、何の変哲もない通路でノーヒントの発見は不可能だ」

「まだまだ周辺環境への気配りが足りていないようですな、お二人さん。誰が作ったのかは知らないけど、堕落歓楽街にはこんな感じの隠し通路が多いんだよね。暇な時には是非ともお探しされ! まっ、熱中し過ぎて僕みたいにドジを踏むかもだけど! 止めてほしいよね、自爆技とか!」


 その一つのドジで、普通の探索者は死んじまうんだよなぁ。と、心の中で留める。言っても変わらんだろうしな、クレちゃんは。


「さて、秘密の通路は無事に確認できた訳だが……オルカ、どうする? 本当に行くか?」

「率直に言うと、マムの居城になんて行きたくない気持ちが半分。断ったら断ったで、上位探索者達と厄介な事にありそうで嫌だなと思う気持ちが半分だ」

「あるほど、見事なまでに両方嫌な気持ちだな……」

「ねー、あいつらってホント面倒な奴らだよ、全くもう!」

「うん、そうだな。少しは自覚してくれれば良いんだけどな」


 その後のオルカのとの話し合いの後、とりあえず行けるだけ行ってみる事に。進むも地獄、退くも地獄。ああ、いつもの黒檻の世界だ。


「あ、別にクレちゃんも一緒に来てくれて良いんだぜ? その方が道中安全だろうし――」

「――さよーならー、二人ともー! マチによろしく言っておいてねー!」


 クレちゃんの方を見ると、彼はもう遠くの彼方にまで遠ざかっていた。マムと会うのがそんなに嫌か。ああ、嫌だよな、俺もそうです!

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