第201話 装備枠増強
今回大黒霊を討伐した事で、魔具の装備枠が解禁された。一覧を見ての通り、ダリウスとオルカにも新たな装備枠が追加されたのだ。オルカの装備、その上昇値分がステータスに加算されている辺り、そちらの装備分の恩恵も問題なく受ける事ができるようだ。おいおい、これって実は凄い事なんじゃないか? 装備枠が三人分に増えて、その全ての強化が普通にまかり通ってしまうんだぞ? こいつはやべぇ! うん、本当にやべぇんだが……それよりも、ダリウスの装備欄に目が向かってしまう。見よ、完全なる無だ。
「ダリウスお前、ずっと姿を見せなかったのは、そう言う事だったのか……!?」
「なるほど、確かに異性の多いこの場には姿を出し辛いだろうな。今まで無理を言ってすまなかった、ダリウス。私も無神経だったようだ」
「えっ、ダリウス貴方、ずっとそんな姿で神聖なるお酒に浸かっていたのですか? な、なんて破廉恥なッ! お酒に対して破廉恥です!」
「うおおおおい! 違う、違うからね!? 別に今まで好きで裸で居たとか、そう言う訳じゃないから! この装備枠の概念、たった今生まれたもんじゃから! ワシとしても、今はじめて裸だったのを知ったんじゃよマジで! 心の装備は纏っていた、決してやましい事情はないのじゃ!」
などとダリウス容疑者は供述しており。
「相棒、その憐れむような視線は止めてえええ!?」
「いやあ、だって……それを言ったら、オルカだってお前と同じ立場の筈だろう? でも、オルカはちゃんと装備を身に着けているぞ、しかも強い!」
「凛々しい!」
「格好いい!」
俺の言葉に続いてひょいっとアリーシャとサンドラが現れ、それだけを言い残して走り去って行った。うん、隠密任務の鍛錬中かな?
「えーっと……そう言う事だ。装備の名前に狐が入っていて、オルカの好みまで反映している徹底振りだぞ」
「フフッ、そう褒めてくれるな。狐の尾をモフりたくなってくる」
「いやいやいや、オルカの装備は黄霊になった時のそれじゃろうて! ワシ、最初から相棒の魔具! 装備身に着ける暇ない、オーケー!?」
ダリウス、必死の反論。まあ、姿を出したくない理由を裸一貫にされたら堪らないもんな。悪ふざけもこの辺にしておくか。
「分かった分かった、言い過ぎたのを謝るよ。けどさ、これからの事を考えると、ダリウスの装備枠が新しく空いたのは朗報だ。その枠分、俺らのステータスに上昇の余地が生まれるからな」
但し、更なる激痛効果をプラスするのは止めてほしい。グレアさんに頼むにしても、ここだけは念を押して言っておこう。これ以上はイレーネのマッサージ越えになっちゃう、と。
「言わば、三人分の装備の力が集結する訳だ。これならクレストロの装備を超える事も――いや、それでも無理か? ううむ、奴の装備は底なしな予感がするな」
「あー、クレちゃんの装備と比べてか……」
今回のシステム変更が俺らの強みであるように、クレちゃんは装備面が一番の強みだからなぁ。勘さん、実際どうよ? ……あ、鼻で笑われた。無理っぽいです。
「勘がまだまだ足りないってよ」
「相棒、イマジナリーフレンドの話を振られてもワシらが困るだけじゃて……」
「そうか? 私は大よそ納得したが。ともあれ、今回の件でグレアに礼を言いに行く機会もあるだろう。その時にダリウスの装備を新たに作ってもらえば、戦力アップするのは間違いないと思う」
「オルカに同意。良かったな、ダリウス! サイズ測る為に表に出てもらう強制イベントが発生するが、こればっかりは仕方ないよな、ダリウス!」
「お、おい、ワシの初登場を若い女子の前で行わせるつもりか!? それも裸の状態で!?」
話は纏まった。ただ、マジでそれをしてしまったらセクハラどころの話じゃないので、何か代用品の服を見繕っておかないとだ。流石の俺もダリウスに捕まってほしくはないからな。
「あとは……今回倒した大黒霊、金色の亡者って言うのか。何か金の亡者っぽい名前だな……」
「その二つは似て非なる意味になるが、今回の場合はどちらも当て嵌まっていそうだな」
「名前よりも新たに手に入った霊刻印の方が重要じゃて。何よこの数? ひぃ、ふぅ、みぃ――霊刻印を九つも持っておるぞ、しかも総じてレベルが高い!」
改めて霊刻印を確認していく。基本的にはどれも青霊もどきが持っていたもの、その高レベル版って感じだ。これらは今持っているものと入れ替えて使うとして、一つだけ異色の雰囲気を漂わせるものがある。
「『金衣悪食』のレベル7、初めて目にする霊刻印だな。ゼラ、これはどんな能力なんだ?」
「霊刻印として組み込む事で、探索中に黒霊とアイテムを引き寄せる力ですね。レベル7ともなれば、効果は絶大でしょう。それはもう集まる筈です」
「そうか、黒霊とアイテムを――え、どっちも?」
「どちらもですね、片方を選んでオフに、なんて事はできません」
それは……どうなんだろうか? 確かにあの金ピカ骸骨は黒霊を引き寄せていたし、金目のものを好み、そういった物品も集めていたんだろう。つか、あいつ自身が金みたいなもんだったしな。その特性を引き継いだのが、この霊刻印だとすれば……まあ、納得ではある。ではあるのだが、探索に使うにはちょっと、なあ?
「黒霊さえ集めなければ、とんでもなく嬉しい効果なんだが……要はこれ、『血塗監獄』の『招集』が常に働くって事だろ? あの黒霊大集合トラップみたいな効果がそんなに働いたら、探索どころじゃなくなるって……」
「ですが、恐らく宝箱もガッポリですよ?」
「そ、それも確かに魅力的な要素ではあるけれども! 宝箱様とは最近めっきりお会いしていないけれども!」
俺の純情な心が揺れ動いてしまう……!
「まあ現実的に考えれば、勝手の分かるエリアで使うのが妥当だろうか。それでいて出現する黒霊が格下であれば尚良い」
「格下だったとしても、先の大黒霊戦のような雪崩が起きる訳じゃからな。使う時は相応の覚悟をする必要があろう。宝箱にほだされてはならぬぞ、相棒!」
「うぐっ! わ、分かってるって……構成に入れて使うにしても、既に探索を終えた格下のエリアで、それでいて撤退がいつでもできるよう女神像の近くに陣取る。最低限これくらいは守るよ、俺も死にたくないからな」
意見が纏まったところで、次の議題へ――と言っても、今回の成果で話せそうな話題はこれくらいか。あとはいつも通り、レベルアップした霊刻印の使い勝手を確認して、キンちゃんの霊刻印倉庫の入れ替え作業をしてっと。
「そう言えばベクト」
「ん? どうした、オルカ?」
「今回の探索で、五体目の大黒霊を無事に倒せた訳だが……依頼をしたクレストロとは、今後どうやって連絡を取るつもりだ? 未だ予定も決まっていない状態だが、仮に城塞都市中心の城を目指すにしても、私達はまだその近道を教えてもらっていないぞ?」
「……あっ」
そういや前向きに検討すると伝えたっきりで、クレちゃんとの連絡方法を確認していなかったわ。
「ま、まあ必要なら向こうからコンタクトを取りに来るだろ、クレちゃんだし」
「それもそうか、クレストロが相手だからな」
「のうのう、それよりもワシの装備マジで作るの? ワシ、まだ心の準備ができておらんのだけど……」
こうして報告会は終わり、俺達はたまの休日を謳歌するのであった。




