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第189話 滂沱

 モルモの救出から数日が経過し、オルカやアリーシャとも少しずつ触れ合えるようになった今日この頃。俺はと言うと、いつもの如く探索へと繰り出していたのだが、途中でグレアさんより連絡が入る。どうやら依頼していた防具が完成したようだ。そんな訳で、早速探索者の街へと赴く事に。


「こんにちは~」

「邪魔するぞ」

「来ましたわね、お二人とも! 首を長~くして待っていたしたわ! 早速ですが、この傑作を見てくださいまし!」


 グレアさんが店の子に指示し、部屋の中央にあるカーテンを引かせた。何で部屋のど真ん中にカーテンが? とは思ったけど、ああ、この為にわざわざ取り付けたのかと察する。エンタメは大事だもんな。


「おおっ、これが――」

「――ベクトの新たな防具、か!」


 カーテンの奥より姿を現したのは、今現在俺が着用している慟哭(どうこく)装備と瓜二つの防具だった。いや、見た目こそ同じだが……今の俺には分かる、こいつの性能はダンチだ!


「『黒曜採掘所』で採掘アンド厳選した希少鉱石、そして以前オルカが入手した竜種の素材をふんだいに用いましたの! また使い勝手が変わらぬよう、外見は同じように仕上げましたわ! 装備の名は滂沱(ぼうだ)! 間違いなく、前作を超えて最高の高に辿り着きましたわ!」

「滂沱、なるほど、滂沱シリーズか……!」


 グレアさんの熱が俺にも伝わったんだろう、何だかテンションが凄い事になって来た! 前の時と同じようにそれぞれの装備品の真上には、それらの詳細が『表記』されている。心を躍らせながら、俺はその詳細を覗き込むのであった。


=====================================

滂沱(ぼうだ)の軽鎧(体装備)

頑強 :+40

魔防 :+38

幸運 :+25

効果 :痛覚が凄まじく研ぎ澄まされる。

    耐久値が減少するほど幸運が上昇する。


滂沱(ぼうだ)の洋袴(足装備)

頑強 :+35

魔防 :+42

幸運 :+25

効果 :痛覚が凄まじく研ぎ澄まされる。

    耐久値が減少するほど幸運が上昇する。


滂沱(ぼうだ)の履物(靴装備)

頑強 :+8

魔防 :+8

速度 :+11

幸運 :+25

効果 :痛覚が凄まじく研ぎ澄まされる。

    耐久値が減少するほど幸運が上昇する。

=====================================


「こ、これはッ!?」


 強い、間違いなく文句なく、非の打ちどころがないほどに強い……! 数字上の強さが倍化しているだけでなく、全ての装備で幸運が上昇するようになった。更に効果欄の記載も増えており、痛覚が凄まじく……すさま、じく?


「……あの、グレアさん? 何だか効果記載欄にとんでもない事が記されている気がするんですが……?」

「オーホッホッホ! 気が付かれましたわね、ベクトさん! そう、この滂沱には耐久値が減るほどに幸運が上昇すると言う、隠し効果が備わっているのです! 幸運とはその名の通りラッキーな出来事が起こりやすくなるステータス! 戦闘中であれば会心の一撃が出やすくなりますし、たまたま状態異常から逃れられる事もあります! 探索中なら宝箱との巡り合わせ度も改善、踏んだトラップが起動しない幸運だってあるでしょう! 考えようによっては耐久値をある程度減らしておくのも手、なのですわ!」

「お、おおー……」

「素晴らしい、本当に素晴らしい出来だ、グレア……! まさかここまでの傑作装備を自らの手で生み出してしまいとはな。黒檻中を巡ったって、このレベルの作に出会う事はまずないぞ!」

「だ、だよな、俺もそう思う……」

「オーホッホッホッホッホッホ、もっと褒めてくださいまし! この最高傑作を経て、私も更なる高みを目指す所存ですの! 私自身の装備更新、装備の質を活かした探索と成長、ダブルからトリプルへ飛躍――まだまだ発展の余地はありますわ! むしろ、あり過ぎるくらいでしてよ、オーホッホッホ!」


 グレアさんの高笑いが止まらない。実際、やり遂げた偉業が凄まじくもありがたいもので、連発する資格は十分にある――のだが、おかしいな。二人には効果欄の一文が見えていないんだろうか? “痛覚が凄まじく研ぎ澄まされる”、これはつまり痛覚が凄まじく機能しちゃうって事なんだろう。そのままだな。で、今現在俺が装備している慟哭シリーズにも、似たような一文が記載されているんだが、こちらは“痛覚が研ぎ澄まされる”となっている。


「――そこまでもパワーアップしちゃってるううううッ!」

「そう、ベクトさんが思わず叫んでしまうほどにパワーアップを果たしたんですわ! 喜んでもらえたようで、私も作った甲斐があると言うもの!」

「うんうん、ベクトも良い反応をするものだ。見ているだけで嬉しくなる。そうだ、早速ここで着替えてみてはどうだ? グレアの事だから、自動でサイズが合うように設計はしているだろうが、着心地を確かめるのは大切だろう?」

「え゛っ……? い、いや、その前に調整を――」

「――いいえ、調整なんて必要ありませんの! ベクトさんの防具は一度作っていますからね、これこそが直球ど真ん中! な、着心地を再現しているつもりですわ! さあさあ、遠慮なんてせず着てくださいまし! な、何でしたら、私手ずから着せて差し上げても良くってよ?」

「そ、そうじゃなくて――」

「――そうだ、そうじゃない。前にも言ったが、今のベクトと私は純愛を貫いているんだ。悪いがグレア、その時が来るまで手出しは無用だ。故に、私が着せるッ!」


 違う、そうじゃない……! 痛覚云々の記載を削除したいんだ、俺はッ……! そんな俺の叫びは二人によってことごとく掻き消され、この流れのまま試着する事になってしまった。聞くんだオルカ、痛みが伴うのは君も一緒なんだぞ!?


=====================================

魔剣ダリウス・オルカ

耐久値:198/198

威力 :214[+3]

頑強 :275[+87]

魔力 :101

魔防 :235[+92]

速度 :214[+11]

幸運 :247[+75+■]


霊刻印(ダリウス)

◇飛剣術LV5

◇増殖LV5

◇召喚・屍LV5

◇耐性・溶解LV6

◇空蹴LV4

◇強健LV4

◇魔法・氷刻LV4


霊刻印(オルカ)

◇魔法剣術・氷LV5

◇竜人・炎LV5

◇修繕LV6

◇照準LV6

◇感染LV2

◇耐性・溶解LV6

◇魔法・炎樹LV4


探索者装備

体  :滂沱(ぼうだ)の軽鎧(頑強+40、魔防+38、幸運+25)

腕  :刃の太陽(威力+3、頑強+4、魔防+4)

足  :滂沱(ぼうだ)の洋袴(頑強+35、魔防+42、幸運+25)

靴  :滂沱(ぼうだ)の履物(頑強+8、魔防+8、速度+11、幸運+25)

装飾 :縁故(えんこ)の耳飾(右)

装飾 :縁故(えんこ)の耳飾(左)

装飾 :夢魔の祝福(幸運+■)

=====================================


 まっ、今更流れに抗える筈がないんですけどね! ともあれ、新装備を着たステータスはこうなった。この探索期間中、『堕落歓楽街』の探索にこれ以上は成長しねぇ! ってくらい専念していたのもあって、ステータスの上昇幅が凄い事になっている。……魔力以外は。いやあ、青霊もどき達が全然魔法を使わないのもあって、成長も全然だったよ。


「ベクトさん、とっても似合っていますわ!」

「ああ、ベクトが男前なのは当然として、輝きが増した気がするな」

「称賛がストレート過ぎる……けど、ありがとう。それでものは相談だけど、この痛覚効果を削除する事は――」

「――これなら、次なる大黒霊との戦いもバッチリだな!」

「ですわですわ! 五体目の討伐、頑張ってくださいまし!」

「……はい」


 君ら、裏で結託していたりしない?

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― 新着の感想 ―
>考えようによっては耐久値をある程度減らしておく これはもうフラグでは
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