↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/235

第164話 不毛

 包装されていたのは女神像であった。いや、女神像って言うか、ミニ女神像……? いつも目にするそれよりも随分と小さく、人差し指程度のサイズしかない。包みの中には他にも色々な木彫りや石像が入っており、その中の一部として混在していた感じだ。


「ええと……サイズは兎も角として、ごちゃごちゃっとしてない? 何でこんな状態に?」

「貴重な品として保管されていた、と言う割には扱いが適当に見える。緊急時に使うようにも思えんし、ううむ……」

「持ち主が収集家で置き場所がなく、単にここにしまったまま存在を忘れてしまったのではないか? もしくは表に出せない代物で、隠しておきたかったとかかの。まっ、あれこれと想像しても無駄じゃて。今は女神像を発見できた事を喜ぼうではないか」

「……そうだな。うん、そうだ。女神像の場所を記録すれば、また転送してもらう時にこの場所の名前も知る事ができる。この先がどこに繋がっているか、何かしらのヒントになるかもな」


 そんな訳で俺達は、ミニ女神像を発見するのであった。サイズがどうであれ、機能が変わらなければ何も問題はないのだ。あ、ちょっとだけ機能は変わるか。この小ささだから、安全圏も相応の狭いんだ。この小部屋がすっぽり収まる程度で、前後の通路に居る蔓さん三世と山ちゃんはギリ入室禁止状態。


「この辺に黒霊が居ないのって、小部屋の女神像で通路が分断されているからじゃないか? ここを通れないとなれば、黒霊からすれば来た道を戻るしかないぞ」

「通路上に黒霊が発生したとしても、夢魔の森や通路の向こう側に向かうしかない、と言う事か。それであれば、よほどタイミングが悪くない限りは遭遇しないだろうな」

「つか外から入ってくるにしても、あんな小さな穴を見つけて潜る奴自体、そもそもワシらくらいしか居なくね?」

「そりゃあ秘密の避難経路だったとすれば、発見されるのはご法度だろうし、知っているのもマムくらいしか――いや、あいつこの小部屋をどうやって素通りしたんだよ? 異常進化種だろうと黒霊なんだから、女神像には近付けない筈だろ」

「それは、まあ……」

「マムじゃし……?」

「……それもそうか」


 手の内を明かしていない格上について、あれこれと考えても仕方がない。それ以上、俺達は深く考えない事にした。その後、小部屋の整理を一通り終えたところで女神像に祈り、白の空間へと帰還。物資漁り? ああ、全部古くなってて使えそうなものは殆どなさそうだったよ。一応、ギリギリなものだけ持って帰るけど……いやあ、ままならないものである。



    ◇    ◇    ◇    



「女神像と一緒になっていた木像やら石像、持ち帰ってみたは良いけど、見事にガラクタだったなぁ」

「ゼラに出来の悪い贋作扱いされておったなぁ。収集家な割に、持ち主の見る目はなかったようじゃ」

「それはまだ良い方だ。ベクトが冗談半分で古くなった酒を渡した瞬間、彼女の顔が見た事のないものになっていたぞ。流石の私も心が挫けるところだった……」

「べ、別に悪ふざけで渡した訳じゃないぞ? 本当に良かれと思ったんだ。でも、お陰で学べたよ。ワインってさ、古いほど良いって訳じゃないんだね……」

「まあ、保管環境とか最悪じゃったし……」


 帰還後、直ぐに黒の空間へと復帰した――と言うよりも、ゼラから逃げて来た俺達の心には、少しばかりの隙間風が吹いていた。うん、嘘だ。ぶっちゃけ暴風レベルでビビっちゃった……


「今後はゼラを怒らせないようにしないとな、切実に」

「そ、そろそろ気を取り直して行くとするかの! おっしゃ、今日も頑張るのじゃ!」

「ダリウス、あんま大声出すなって」

「そうだぞ、いくら黒霊の気配がないとは言え、事前の約束は守ってもらわねば」

「このタイミングで責められる事ってある?」


 とは言いつつダリウスの掛け声を境に、スイッチを切り替える俺達。ああ、ちなみにここの女神像の場所は『夢魔の森・地下備蓄庫』と言う名前になっていた。どうやらまだ森の真下部分に居るらしいが、残念ながら行き先のヒントにはならず。オルカが予想していた通り、まだまだ歩きそうだなぁ。


「まっ、ゼラがキレる前に諸々の準備を終わらせていたのは幸いだったな。新しくできる気配のあった魔法も無事に『融合』できた事だし」


 先の探索の大きな成果と言えば、物資でもなくステータスの成長でもなく、新たな魔法を乱獲できたその一点に尽きる。いや、だってさ、持ち帰った物資はあんなんだったし、あれだけ沢山の黒霊を倒したってのに、遂に全く成長しなくなっちゃったんだぜ? そりゃあ魔法くらいしか縋るものがないってものである。しかし、そうかぁ。夢魔の森でも成長できなくなっちゃったかぁ……


「今回の探索、相棒は新たな魔法を組み込んで来たのか?」

「ん? ああ、もちろん。『魔法・氷刻』を使えるようにして来たよ」


 『融合』を経て新しく誕生した魔法は全部で五つ、内容は以下の通り。


魔法・睡眠+魔法・幻覚=魔法・幻夢

魔法・幻覚+魔法・炎弾=魔法・幻弾

魔法・氷剣+魔法・停滞=魔法・氷刻

魔法・回復+魔法・解毒=魔法・快復

魔法・解呪+魔法・除霊=魔法・退魔


 いずれもレベル4に仕上がった優秀な魔法で、俺はその中から氷と時を操る『魔法・氷刻』を選ばせてもらった。で、霊刻印の構成はこんな感じ。


霊刻印(ダリウス)

◇飛剣術LV5

◇増殖LV5

◇召喚・屍LV5

◇融合LV6

◇空蹴LV4

◇強健LV4

◇魔法・氷刻LV4


 レベル5の『浮遊』を外し、レベル4の『魔法・氷刻』をイン。本当は『空蹴』と『浮遊』の合わせ技も試したかったんだが、時間がなかった為に次回以降に回す事に。まあできたとしても浮遊は暫くのホバリングができるくらいで、必須な能力でもないからな。新たな魔法戦術に慣れる事を優先した訳だ。間接的に『飛剣術』に含まれている『飛剣』との併用も可能となるぞ。


霊刻印(オルカ)

◇魔法剣術・氷LV5

◇竜人・炎LV5

◇修繕LV6

◇照準LV6

◇強酸LV5

◇隠密LV3

◇魔法・炎樹LV4


 一方のオルカはレベル3の『耐性・氷』を外し、『魔法・炎樹』をイン。氷属性の耐性を付与するよりかは、『竜人・炎』を活用してガンガン炎で攻め立てつつ、自身も回復した方が便利じゃね? と言う考えの下で変更したようだ。エンドの魔法よりもワンレベル下の霊刻印ではあるが、強力である事に変わりはない。俺と同じく、今のうちに慣らしておくのがベストだろう。


「にしても、だ。やっぱこの通路、長いな……」


 備蓄庫を出発してから、一体どれだけの時間が流れただろうか。景色は相も変わらず一本道のままで、何の変化も起きていない。


「避難経路をこっそり作ったとしても、これだけの距離だと相当な私財を投じておるじゃろうな。やれやれ、最終的にどこへ通じておるのやら」

「ベクト、ダリウス、さっきから同じ会話ばかりしているぞ。もう少し緊張感を持て」

「そう言うオルカは、さっきから謎に宙を撫で回しているようだけど?」

「ホワイト不足をイメトレで補っているだけだ。エア撫での向こう側でホワイトの毛並みを堪能している」

「そ、そっちの方が不味いんじゃ……?」


 などと色々な意味で不毛な会話をしつつ、更に歩を進め続ける。やがて、一本道の先に見えて来たのは――


「待て、アレって出口じゃないか? 光が見える……!」

「いやはや、マジで長かったのう」

「ダリウス、お前は俺に運ばれるだけだったろうに……だけど、また戻るにしても備蓄庫を起点にするのは厳しいな。毎回この道を通る事になる」

「新たなエリアでも女神像の発見が優先事項になりそうか」

「オルカ、それはそうなんだけど、そろそろエア撫でを止めてもろて――って、んん?」

「どうした、相棒?」

「……気のせいなら良いんだけどさ、あの出口、何かピンク色の靄で充満していないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。