第157話 エンド
「また唐突じゃなぁ。しかし『融合』の予感か、今度は誰と誰なんじゃ?」
「ドラドラとトレントだ。けど、炎と木って相性悪そうな気もするんだよなぁ。これ、どうなんだろう?」
「いや、そう決めつけるのは早計だぞ、ベクト。この森での戦いを思い出してみろ。私がいくらドラゴンブレスで焼き払おうとしても、エントが全焼する事態には最後まで至らなかった。むしろ燃えにくかったとも言える。その辺りが合致して、相性が良くなったのではないか?」
「言われてみれば確かにって、エント? ……ああ、トレントの名前が決まったのか」
唐突に言われたもんだから、一瞬誰の事だか分らなかったぞ。
「と、とりあえず、オルカの言いたい事は理解できたよ。今後は戦力強化が必須な訳だし、直ぐに『融合』しちゃう線でオーケーかな?」
「「うむ!」」
全会一致で決まり、早速ドラドラとトレント――もといエントを召喚する。双方ともサイズは大きいが、シュラの時のような多数の『融合』ではないから、特に苦戦する事はなく。で、『融合』の輝きが止んだところに現れたのは……おお、何だか輪郭はドラドラっぽいぞ?
「ギュリギュルリ……!」
「と、飛んだ!?」
強烈な鳴き声と共に飛翔――からの着地をしたのは、漆黒のドラゴンだった。しかし、鱗が黒い竜と言う訳ではない。真っ黒な樹木で肉体が構成された樹竜、とでも喩えれば良いだろうか。また樹竜が呼吸をする度、木炭が燃焼している時のように赤黒く体が光っている。まるで高熱を帯びているようだ。……これ、俺ら乗れる? 背に跨った瞬間に火傷しない? ま、まあそれはさて置き、図体はドラドラよりもひと回り大きく、形状自体に大きな変化はない。正にドラドラとエントの要素を半々で受け継いだって感じだな。鳴き声が特徴的だけど、色々あった今なら普通に受け入れられる範疇だ。そんな鳴き声があったって良いよね!
「おお、エンドも立派になったな!」
「もう新しい名前が決まっとる……! ええっと、エントとドラドラで名前も合体してエンドか。うん、覚えやすいな」
「ワシも良い名前だと思うぞい。覚えやすい、これ大事よ」
「ベクト、凄いぞ! エンドの体に触ってみたんだが、ポカポカだ! 心地好いぬるま湯に浸かっている気分になる!」
と、嬉しそうにペタペタとエンドに触れ合うオルカさん。それは良かったけど、火傷とか全然恐れず行けるもんですね。不用意に触っとる!? とツッコミを入れたかったが、流石の俺も息切れですよ。そんな訳で新たに生まれ変わったエンドが仲間に加わり、今回の探索は終了するのだった。
◇ ◇ ◇
白の空間へ帰還し、漸く肩の荷を下ろす事ができた。もう今日はベッドで爆睡決定ですよ、疲労感が半端ないの。ただまあ寝る前にやるべき事もあるので、その足で酒場で爆飲しているであろうゼラのところへ。でもって期待を裏切る事なく、ゼラはいつもの席でいつもの如く酒に溺れていた。いや、そんな決め顔でジョッキを掲げなくて良いから。何その飲兵衛同士でするような挨拶は。
◎本日の成果◎
討伐黒霊
浮き腰夢魔×1体(魔法・幻覚LV3、魔法・睡眠LV3、吸精LV4、隠密LV3)
取繕う巨木×18体(擬態・樹LV3、再生LV4、耐性・土LV4)
誘い脚長蜂×11体(猛毒LV4、睡眠LV4、幻覚LV2、飛行LV3)
底無し靫蔓×6体(芳香LV4、激臭LV4、強酸LV3、耐性・土LV2)
彷徨う花人×9体(鞭術LV4、再生LV3、麻痺LV2、耐性・土LV3)
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魔剣ダリウス・オルカ
耐久値:150/150(+1)
威力 :121(+4)[+3]
頑強 :173(+1)[+36]
魔力 :84(+6)
魔防 :169(+1)[+41]
速度 :96(+2)[+5]
幸運 :110(+2)[+■]
霊刻印(ダリウス)
◇飛剣術LV5
◇増殖LV5
◇召喚・屍LV5
◇融合LV6
◇空蹴LV4
◇強健LV4
◇浮遊LV5
霊刻印(オルカ)
◇魔法剣術・氷LV5
◇耐性・氷LV3
◇竜人・炎LV5
◇修繕LV6
◇照準LV6
◇強酸LV5
◇隠密LV3
探索者装備
体 :慟哭の軽鎧(頑強+17、魔防+16)
腕 :刃の太陽(威力+3、頑強+4、魔防+4)
足 :慟哭の洋袴(頑強+12、魔防+18)
靴 :慟哭の履物(頑強+3、魔防+3、速度+5)
装飾 :縁故の耳飾(右)
装飾 :縁故の耳飾(左)
装飾 :夢魔の祝福(幸運+■)
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「そろそろお酒に合わせるフルーツも拡張していきたいですね。マンゴーとか探してみてはどうです?」
「さて、今回の成果はっと……」
ゼラの言葉を耳から弾き飛ばし、成果一覧に注意深く目を通していく。
「むう、過去最大レベルで黒霊を倒したってのに、今回も成長が渋いな。場所も最高難度の『夢魔の森』だったんだが……」
「巨大ワームの腹の中で四体目の大黒霊を、そしてあの三つ首を倒した影響がそれだけ大きかったんだろう。例の件を除けば『夢魔の森』の攻略もそう苦戦するものではなかったし、探索者としての適正が更に上のエリアになったと考えるべきだな」
「それでも霊刻印の方はレベル4のもんがあって、結構優秀じゃよね。キングの保管庫に入れなくとも、いつでも倒せる黒霊じゃから破棄しても問題ないわい」
「問題なのは、その『夢魔の森』が奴の爆撃で半壊状態な事なんだが……あれだけ環境が変わっちゃうと、そこに住む黒霊の方にも変化が起こるんじゃないか? もう森って感じじゃないぞ?」
「急に黒霊の種類が変わる事はないと思うが、将来的に様変わりする可能性は普通にあるぞ。過去にそういった事例もある」
「あ、あるんだ……」
巨大ワームの破壊活動もそうだったけど、黒檻の世界って案外変容を許容するよなぁ。例外がその巨大ワームで、そこでよく見かけた破壊不可オブジェクトも他では滅多にないもんだし。
「そこも今後気になる要素ではあるんだけどさ、今一番目を引いちゃうのが……何か俺の装備、一つだけ変なのが交じってない?」
「「……」」
「二人とも、急に黙らないで!? 俺から視線を逸らさないで!?」
これまで、俺の装飾には三つの装備が装着されていた。両耳につけている縁故の耳飾(オルカ&グレアさん)二つと、首にかけていた司教の首飾(幸運+3)だ。仲良くなった探索者から貰い、探索中に発見した思い出深い品々だ。だがしかし、現在三つ目に装着されているのは――夢魔の祝福! いや、何だよこれ!? 首飾りは首飾りだけど、何か見た目が変わってドッグタグみたいな感じに変化しているし、効力のところも黒塗りになってバグってんぞ!?
「ま、まあ冷静に考えて、十中八九マムの仕業じゃよね。最後の辺りでペタペタ触られておったし、その時に何か仕込まれたのではないか?」
「ぐおおおおお、あの時かッ……!」
勘さんがぶっ倒れていたから、全然その気配に気付けなかった……!
「つうかこれ、一体何!? どんな呪いのアイテム!?」
「落ち着けベクト、まだ呪われていると決まった訳ではない。万が一に良い効果があるやもしれんぞ」
「万が一の確率だとほぼ絶望的なんですけど!?」
その後、ゼラにこの謎装備について確認してみたんだが、どうやら彼女にも分からないようで……そ、そうだ! イレーネ、聖職者のイレーネならきっと分かる筈! 教会で解呪してもらおう!




