第147話 空の境界線
ドラドラ(命名オルカ)を仲間にした俺達は、早速その頼もしい背に乗って空の旅に挑戦する事にした。何気に初となる飛行能力持ちだ、これを試さない選択肢はないだろう。
「わ、分かってはいたけど、高いッ……!」
飛翔したドラドラは溶岩の雨、その隙間を掻い潜り、あっという間に『飛竜の山』の空へと到達。探索者の街にある女神像よりも高いこの景色は、大変に感動的なものであると同時に、本能的な恐怖を呼び起こすものだった。別に高所恐怖症って訳じゃない筈なんだが、ここまで高いと色々とヒュンと来るものがある。
「おお、山の向こう側が見通せるほどの高度に達するとは! 見ろ、あっちに『無限砂漠』が見える!」
「う、うむ、ワシも段々慣れて来た……しかしこれだけ高く飛べるのなら、『屍街』の城壁や『夢魔の森』も、上空からひとっ飛びだったじゃろうな」
「言われてみれば、確かにそうだな。街の中心にあった城とかも、色々とショートカットして行けるかも?」
「いや、安易に空からエリアを越えるのは避けた方が良い。本来あったルート以外から侵入しようとする場合、黒檻は何かしらの妨害が入る事が多いんだ。例えば、そうだな……城壁であればドラドラのような謎の飛竜が突如として現れたり、地上部から強力無比な弩砲が放たれたり――何にせよ、良い方向には転ばない。飛ぶにしても、そのエリア内に留めるのが懸命だろう」
「そんな予防策があるのかよ、黒檻……と言うかオルカの口振りからして、前に試した探索者が居たとか?」
「探索者の歴史は長いからな」
「下手な王国の歴史よりよっぽどじゃよね~」
先人の知恵ってやつか。親友に石橋さんを持つ俺としても、要らない危険を冒すつもりはないからな。ドラドラの飛行能力は用法用量を守って使いたいと思う。
「まあエリア内で使うだけに留めるにしても、空から地形一帯を見渡せるのは強いよな。それだけで強力なアドバンテージになる。……ちなみにエリアの境界って、空からの確認方法とかある?」
「やだ、相棒ったらすんごい心配性」
「し、仕方ないだろ、万が一って事があるかもだし……! 地上と違って空は線引きが曖昧だから、事が起こってから後悔とか、そんな後の祭りは勘弁願いたい……」
「うーむ切実……!」
「だが確かに、空からだと境界が分かり辛いかもしれないな。ただ視覚的にはそうでも、探索者としての勘で分かるとも聞くが……よし、実際に試してみるか。ドラドラ、旋回して寂寞放牧地の方に――」
「――待て待てぇい!? え、マジでやるの!? 今から……!?」
決死の説得も空しく、俺達はドラドラに導かれるままエリアの境界線へと向かう事に。ただ、早速ここで分かった事があった。境界線と思わしきラインに近付くにつれ、俺の中にあるであろう探索者の本能が、騒々しいほどの警報を鳴らし始めんだ。大黒霊の巣、その境を本能的に感じ取る、あの感覚に近いかもしれない。
「ドラドラ、検証試験はここで終了だ。それ以上は進まなくて良い」
「ここまで明確な嫌な予感を覚えるとは……だが、なるほど。黒檻の世界にも良心は存在していたのだな」
「ホント、いつもながら必要最小限の良心だけどな」
検証の結果、ある程度の高さ以上になると、この判定が適用されるようになる事も判明。空から境目に差し掛かった瞬間、地中から巨大ワームが飛び出しでもしたら事である為、流石にその実証実験は見送る事に。
それから俺達は再び『飛竜の山』へと入り、探索を再開。生憎と宝箱を発見する事はできなかったが、結構な数の黒霊と遭遇を果たし、それらをゾンビ化させてチーム『召喚・屍』に加入、加入、加入――ドラドラを含め、新たに七体の黒霊が仲間にする事が成功した。
「やっぱ飛竜タイプの黒霊が多数派か。他はマグマに擬態していた謎生物に、なぜかマグマを転がしていたフンコロガシもどき、ダチョウの卵よりもデカい卵型の黒霊も居たっけ。卵は最後まで動く様子がなくって、ある意味で一番警戒しちゃったけど……卵を破壊した瞬間に中から飛竜が出て来たのは、そういう能力だったのかな?」
「倒されると卵の中より黒霊が生まれる、そんな能力でも有していたんだろう。まあ、出現した二体のうち一体は仲間にできたんだ。ゼラに確認するのが一番手っ取り早いと思うぞ」
「それもそうか。さて、そろそろ良い時間だし、今回の探索はここまでにしますかね」
「うむ、有意義な探索じゃったな。ところで相棒、随分と黒霊の仲間が増えたが、新たな『融合』先が増えたりはしなかったのか?」
「ん? ああ、ちょっと待ってくれ。今確認して……むむっ!」
その瞬間に閃く『融合』の可能性。あったわ、早速あったわ。しかも、この組み合わせは……!
「ベクト、その反応から察するに……?」
「ああ、待望のフリジアンのお相手が見つかったところだ」
◇ ◇ ◇
◎本日の成果◎
討伐黒霊
動く溶岩×6体(火鎧LV3、耐性・炎LV3、擬態・炎LV2)
飛竜の卵×1体(耐性・炎LV1、誕生LV4)
炎転がし×5体(耐性・炎LV2、運搬LV3、穴堀LV2)
馳せる飛竜×7体(耐性・炎LV2、疾駆LV4、飛行LV1)
火食らい泳竜×2体(息吹・炎LV3、耐性・炎LV3、水泳LV2)
火食らい飛竜×8体(息吹・炎LV3、耐性・炎LV2、飛行LV3)
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魔剣ダリウス・オルカ
耐久値:149/149
威力 :117[+3]
頑強 :172[+36]
魔力 :78(+2)
魔防 :168[+41]
速度 :94(+3)[+5]
幸運 :111[+3]
霊刻印(ダリウス)
◇飛剣術LV5
◇増殖LV5
◇召喚・屍LV5
◇融合LV6
◇空蹴LV4
◇再生LV4
◇肉鎧LV6
霊刻印(オルカ)
◇魔法剣術・氷LV5
◇耐性・氷LV3
◇竜人・炎LV5
◇修繕LV6
◇照準LV6
◇強酸LV5
◇隠密LV3
探索者装備
体 :慟哭の軽鎧(頑強+17、魔防+16)
腕 :刃の太陽(威力+3、頑強+4、魔防+4)
足 :慟哭の洋袴(頑強+12、魔防+18)
靴 :慟哭の履物(頑強+3、魔防+3、速度+5)
装飾 :縁故の耳飾(右)
装飾 :縁故の耳飾(左)
装飾 :司教の首飾(幸運+3)
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「遂に殆ど上昇しなくなったな、ステータス……」
探索を終え白の空間に帰還し、早速ゼラに成果を確認してもらう。過去一で安心安全な探索だったとは言え、『飛竜の山』はそれなりに攻略難度の高いエリア、そして黒霊も結構な数を倒した筈なんだが、今回の成長はないようなものだった。シンプル悲しい……
「大物を立て続けに倒しておったからな。それなりの場所で通常の黒霊をいくら倒したところで、もう成長は望めないのじゃろう」
「ああ、更なる高みを目指すのであれば、次は『夢魔の森』か『原初炎樹海』が適切だろうな」
「お、おう……」
実力的には確かにその通りなんだろうが、かつての記憶が俺のやる気を阻害するんだよなぁ。まあ、それはそれとして。
「ゼラ、今回の探索で未来の主力候補を仲間にしたんだけど、そいつの霊刻印を教えてくれないか? ドラドラって言うんだけど」
「あら、可愛らしいネーミングですね。承知しました、こちらになります」
紅の狩飛竜(息吹・炎LV4、耐性・炎LV3、飛行LV4)
「なるほど、これがドラドラの能力……普通の飛竜を順当に強化したバージョン、ってところか。巨大ワームの中に居たゴーレム飛竜と良い勝負、いや、それよりも強いくらいかな?」
「ドラゴンは世界的に亜種の多い種族ですから、ベクトの『融合』とは相性が良いと思いますよ」
「それはつまり……お見合い相手が多いと言う事じゃの!」
「言い方、言い方」




