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第131話 腕竜

 俺の不安は的中し、その後も度々壁が回転する事態に遭遇する事となった。移動中はまだ良いものの、黒霊との戦闘中にも容赦なく起動するものだから、一瞬たりとも油断できない。空中に居る飛竜型ゴーレムも嵐に舞う何らかの物体に巻き込まれる為、経験値も追いはぎされる最悪トラップだ。ただ、そんな中で新たに分かる事も出て来るもので。


「なあ、奥に進めば進むほど、壁の色が巨大ワームの装甲色と同化して来てないか?」


 女神像付近はカラフルだったトンネルの壁が、今はもう黄土色一色になっている。もちろん、この色は巨大ワームの装甲の色と一緒だ。


「体内に吸い込んだオブジェクトを粉砕し、吸収しやすい状態になったところで……と言うやつだろうか」

「気のせいなら良いのじゃが、足裏の地面も段々と低くなって来てね?」

「気のせいじゃなくて、明らかに低くなって来てるよ。ほら、入り口付近は半円状態だったトンネルが、円型に近付いてる」


 これ、地面が完全になくなったら、俺らも消化対象になっちゃうんじゃないか? 底にあるであろう巨大ワームの内壁と接触する訳だし。


「入り口付近で壁を掘り返し、金属の壁に多少触っても害はなかった。直ぐに消化される訳ではないんだろうが……できる限り接触は避けるべきだな」

「心から同意するよ。で、ここで新たな問題を提起したいんだけどさ……何か、前の方から嫌~な気配がしない?」


 トンネル内故に音は響くもので、前方から地響きにも似た足音がさっきから鳴り止まないんですよね。でもってプレッシャーが半端なくって、俺が頼りにしている勘さんも逃げろと半鐘を鳴らしまくっている。


「相棒、お前と言う奴はまた……」

「ベクト、やはり巫女に愛されて……」

「俺のせい!? 俺のせいなん!?」


 まあ、タイミング的にそろそろ強敵が出て来そうだなとは思っていたけどさ!


「しかし、冗談を言っている場合でも――相棒ッ!」

「ああ!」


 まず最初にやって来たのは、肌を焦がすような嫌な熱気。次いで視界全体が真っ赤に染まり、ドラゴンブレスが押し寄せて来た。飛竜のそれとはまた違って、トンネルの大部分をカバーする極悪規模の攻撃である。おいおい、確かに密閉空間なトンネルではあるけど、広さだけはクソほどあるんだぞ、ここ……!?


「ったく、もう安全な場所が天井しかねぇじゃんよ……!」


 多段ジャンプで一気に駆け上り、逆さの状態で天上部に着地する。今の空蹴は三回が限度だが、足をどこでも良いから地面に付ける事さえできれば、またその回数がリチャージされる。


「次弾が来る前に、さっさと詰めてやる!」


 天井を蹴り、新たなブレスを警戒しながら前へ前へと押し進む。密閉空間とは言え、ここは広大。更に先の条件は天井でも壁でも達成できるんだ。出鱈目な攻撃範囲であろうと、無傷で懐に入ってやる! と言うか、多分無傷じゃないと不味い事になる! ただの接触だけでも死の予感!


「アレは……!」


 やがてトンネルの先に見えて来たのは、飛竜とは似ても似つかないゴーレムだった。恐竜で言うところのブラキオサウルスが近いのかな。ドデカいボディに四足歩行、それでいて首が長いのである。頭部がギリ天井まで届かないくらい? 巨大ワームで感覚が麻痺しているが、その例外的存在を抜かせば、この黒霊はこれまでの敵の中で圧倒的最大サイズを誇っていた。


「ギギギッ、ギギギギギギギッ……!」


 それでいて、鳴き声が怖い。金属同士を擦り合わせているかのような、ぶっちゃけ不快極まる音である。


「翼がないし全然飛竜っぽくないけど、飛竜の山産地の黒霊なのか!?」

「聞いた事がある……!」

「知っておるのか、オルカ!?」

「昔、ある探索者から教えてもらった噂話だ。飛竜の山の頂上、そこからは山のマグマ溜りに向かって降りる事ができ、更なる別エリアに進む事ができるのだと。そしてその先には、竜ではあるが全く別種の黒霊が存在していると……!」

「じゃ、じゃあ巨大ワームはそのヤバそうなエリアを通って、あの恐竜をも飲み込んだ!?」

「噂に過ぎないが、仮にそうだとすれば不味いぞ! その場所の危険度は『夢魔の森』に匹敵するらしい!」

「ハハッ、それは骨の折れる話だなぁ……!」


 ちなみにこの間も、俺は頑張ってブレスを躱し続けております。しかし、夢魔の森並みの強敵か。ゴーレム化しているって事は、今のあいつはそれ以上に強化されている訳で――もしかしなくても、大黒霊級なんだろうなぁ……


「ふんぬッ!」


 嘆いていても仕方がない、壁に着地したのと同時に刃の太陽を投擲する。横に立つと言う無理な体勢で投げた割に、俺のブーメランは上手く飛んでくれた。その証拠に炎のブレスを切り裂き、あのぶっとい首を一刀両断に――


 ――ギギィィィン!


「できないかぁ……!」


 奴の首に当てる事はできたが、そのまま断ち切るには至らず。やはりサイズだけでなく、防御力もこれまでの黒霊とは比べ物にならないらしい。一応、俺の中では火力高めの攻撃だったんだけどなぁ。ただそれでも、奴の装甲に傷を付ける事はできた。ダメージが皆無って訳ではないだろう。


「ギギギギギッ!」

「その声、俺のメンタルが削られるんだよッ!」


 戻って来た盾をキャッチし、もう一度投擲。今回のブーメラン殺法も良い感じに飛び、奴のブレスを両断して――いや、これは。


「相棒、これは……!」

「マジかよ、押し返されてるぞ!?」


 トンネル全体にばら撒かれていた放射型のブレスが集束し、やがて一本の光線に近い形に変化した。攻撃の範囲を絞り面から点へ、更には『噴射』の霊刻印も使い始めたんだろうか。ブレスの威力と速度で尋常でなくなっている。


「ぐっ……!」


 ブレスが変化した後、均衡は即座に崩れた。盾は弾かれ、それでも俺の下へと戻って来てくれはしたが、破損具合が不味い事になっている。あのブレスに触れた部分が熔解しかけているのだ。身を守るにしても、盾で防ぐ選択肢はなくなったな、これは。


「ブレスの範囲は狭まった、けど……!」


 威力と速度が増した分、俺をスナイプしようと正確に狙って来やがる。こっちはこっちで当たったらアウトだってのが肌で感じられるから、緊張感が半端ない。『格納・屍』がレベルアップした事で、この距離からでも奴の懐にホワイトらを出す事もできるけど、正直、ダリウスに切り替える余裕ががががッ!


「なら、これはどうよッ!?」


 盾ブーメランではなく、今度は魔法による氷の斬撃を放つ。但し、奴に向かって一直線ではブレスに打ち消されるのが関の山。狙うは奴の真上、天井部だ。オルカに指導してもらった氷剣戦術、氷柱落とし! その名の通り、この斬撃は接触した場所に鋭利な氷柱を大量に作り、真下に居る黒霊にその雨を降らせる!


「ブーメラン殺法に続いて良い攻撃だぞ、ベクト!」

「うむ、奴の機動力はそれほど高くない! 頭や背中に直撃すれば、少なくとも体勢を崩せ――」


 ――ガコン。


 竜の背中より、これまでとは異なる音が鳴った気がした。けたたましいブレスを躱す最中にそれを拾う事ができたのは、俺のメンタルを構成する石橋さんと勘さんのお陰だろうか。兎も角、俺の視線は自然と奴の背中へと移る。


「おいおい、おいおいおいおい……お前、マジか?」


 首部分を挟むようにして、奴の背中の二か所より何かが起き上がる。いや、何かじゃないな。俺はもう察してしまっている。奴の背中から生えて来たのは、新たなる二本の竜の首――ブラキオサウルスに似ている? とんでもない。あいつの真の姿は三つ首の竜だったんだ。

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