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第130話 消化法

 その後、ゼラに酒の新入荷を注文され、キンちゃんに貢物を要求され、アリーシャにお土産を期待された俺は黒の空間へと再度向かった。さて、巨大ワームの中にそれら要望に応えられるものがあるのだろうか。可能性は限りなく低そうだが、飲み込んだオブジェクト次第では無きにしも非ず、か?


「ところでさ、女神像の行き先の名称が『飢餓の蟲道きがのむしみち・喉』になっていたんだよね。この巨大ワーム、黒霊じゃなくて一つの別エリアなんじゃないか? こう、移動するタイプの」


 黒の空間に移動し、周囲の安全を確認。どうやら近くに黒霊は居ないようだ。砂の中に転送されないかが地味に心配だったが、どうやら杞憂だったようである。ただ、周囲にあったオブジェクトが様変わりしているのが気になるな。


「ゴーレムでワームな意思を持つエリアと言う事か? そのような例、聞いた事がないが……」

「それよりも相棒、グレアに連絡せんと」

「っと、そうだった」


 耳飾り通話開始。うんうん、なるほどなるほど……グレアさん曰く、俺達が白の空間に帰還してから半日ほどが経過したようだ。巨大ワームは既に街から離れており、恐らくはどこかの地面下で休眠していると言う。


「――了解です。では、今から探索を開始します。ではでは……って事らしいぞ」

「半日か。私達が居ない間に移動を行い、そこで新たに飲み込んだものも多いだろうな」

「ああ、この辺りが砂だけじゃなくて、土や木々で盛り盛りなってんのはそのせいか」


 ちなみに現在の女神像、砂じゃなくて土の中から顔を出しております。


「つっても、このエリアが何を飲み込もうと、先は相も変わらず一本道だ。俺達は進むしかない」

「進んだ先に何があるのかのう」

「モフカワな黒霊が居たら最高だと思う」

「いや、きっとゴーレムだからそれはないんじゃ……つか、俺達の目的は巨大ワームをどうにかして止める事だからな? まあ黒霊じゃなかった場合、そもそも止める術があるのかが怪しくなって来た訳だけど……」


 ともあれ、俺達は出発するのであった。ホワイトを先頭に、半刻ほど歩いて行くと――


「やっぱ居たよ、飛竜のゴーレム!」

「全然モフカワじゃないんだが!?」

「どっちにしろ仲間にはできんぞい!」


 ――待望の(?)飛竜型ゴーレム三体と遭遇。ドラゴンとしては小型であるそうだが、そのサイズは馬よりも大きく、仲間にできれば余裕で俺を乗せてくれそうだ。悲しい事にダリウスが指摘する通り、ゾンビにできない欠陥があるんですけどね!


「いつもの不意打ちで一体は仕留めたけど、残りは上に飛んだかってうおおおッ!?」


 真上より容赦なく迫り来る火炎の波、いや、竜のブレスか……! 杖ズミさんの魔法のような一点集中型ではなく、地面全体に満遍なくばら撒く放射型の攻撃だ。射程範囲が広いし、このブレスに『噴射』を併用させているのか、速度もかなりある。全力で走る、宙を蹴って上に逃げる、盾で耐えるなどをすればギリ何とかなりそうだが、回避先や防御中にもう一体の飛竜が追撃をかましてきたら、正直面倒臭い事になりそうだ。杖ズミさんに魔法で迎撃してもらうにしても、あの機動力じゃ当たりそうにないし、杖ズミさん自身がブレスに耐えてくれるか微妙なところ。なら、ここで選択すべきは?


「アリーシャ仕込みのブーメラン殺法じゃああああい!」


 ブーメランの名手に教えてもらった秘伝の投法、それを用いて刃の太陽をぶん投げる。殺意と刃を剥き出しにした盾は一直線に飛竜へと向かい、その道中にて炎のブレスを一刀両断。モーゼの海割りの如く炎は両端へと弾き飛ばされ、更に勢いを増して飛竜をも一刀両断。U字を描いてこちらへと帰還する際、ついでにラストの飛竜も一刀両断してしまう働きぶりだった。


「……何か切れ味増してない? いや、狙って投げてはいたけど、ブレス諸共敵を全部引き裂いちゃったぞ?」

「ワシらの強化に引っ張られて、あの凶悪な盾も威力を高めたんじゃないかの?」

「アリーシャに教わった投げ方が良かったんだ。アリーシャほどではないにしても、以前より投法が洗練されていた。だが、まだまだ脇が甘いぞ、脇が」

「お、おう……」


 覚醒を経て投擲技術が向上し、遂に師匠アリーシャを超えたと思っていたんだが……アリーシャパイセンと言う偉大なる山は、想像以上に険しく高いようだ。うん、本当に。


「しっかし、この威力な上に止めを刺しても黒霊が吸収されるんだから、もう立派な攻撃手段の一つだよな。今の飛竜、明らかに前のゴーレム達よりも強かったのに、全部一刀両断よ? ザン、シュバ、ギュンよ?」

「離れた相手を狙う際、今後は杖ズミさんの魔法、氷剣と飛剣による斬撃、そして盾の投擲が選択肢に入りそうだな」

「うん、それらにはそれぞれ異なる強みがある。状況に合わせて使って行こう」


 杖ズミさんの魔法は回数宣言があり、それでいて魔法自体の攻撃速度はこの中で一番遅い。が、魔法であるが故に魔防が低い相手には効果覿面だし、毒の状態異常を引き起こすオマケもプレゼントしてくれる素敵仕様だ。一方、これで黒霊を倒してしまうと、何の経験値にも霊刻印にもならないのが玉に瑕。


 氷の斬撃は物理と魔法を併せ持った性質を持ち、どんな相手にもそれなりの効果を与えるだろう。それで倒せなくとも、凍らせて敵の動きを封じる事もできるし、他にも色々と応用が利く。オルカはトラップ代わりにも使っていたしな。


 盾ブーメランは……単純な威力は最高クラスだろうか? 投げるルートによっては複数の敵をぶった斬ってくれるし、攻撃速度も最速だ。但し、幽霊のような物理が効かない類の相手には全く意味を成さないだろうから、使いどころは選ばないとだ。


「手札は多ければ多いほど良い。それだけ俺達の可能性の幅を広げてくれるからな。うーん、これぞ生存戦略」

「相棒の戯言はさて置き、そろそろ出発しね? あの巨大ワームのでかさからして、先はまだまだ長いぞい」

「おい、これは戯言じゃなくて真理――ん?」


 今、少し揺れたか? 地震、いや、ここの場合は巨大ワームが起き上がった? そんな事を考えている間にも、地面の揺れは大きくなり――次第に地面が真横に回転・・・・・し始めた。


「こ、これはッ……!?」


 堪らず空中に退避して周囲の様子を確認。すると、どうした事だろうか。トンネルの壁がマジで横方向に回り続けている。まるでトンネル内を撹拌するように、グルグルグルグルと止まる気配がない。速度もドンドン上がっている。でもって、この場に存在するオブジェクトが高速でシャッフルされているものだから、あらゆるものが粉砕され滅茶苦茶な状態だ。これでは疑似的な竜巻の中に居るようなもんだぞ、しかも横向きの……!


「何だ何だ、巨大ワームの奴、マジで何やってんの!?」

「ベクト、飛び散る毒物や溶岩に注意しろ!」

「むっ、先のエリアは壁が動いておらんぞ! 動いているのは、ここ一帯だけのようじゃ!」

「か、駆け抜けろおおおお!」


 回転する壁と吹き荒れる物体の数々を躱し、前方に向かって空中ダッシュ。幸いにも俺の跳躍力は余裕をもって無回転エリアに届くもので、何とか無傷のまま着地に成功するのだった。


「バ、バターになるところだった……!」


 振り返ると、先ほどまで居た区画の壁は尚も回転し続けていた。そこに落ちていた全てのものは粉々になり、元の面影は欠片も見当たらない。


「あの回転する壁、いつの間にか一部が起伏して、転がる物体を粉砕するようになっているな。大規模トラップもいいところだ」

「えげつな……空蹴がなかったらと思うと、マジでおっそろしいわ」

「トンネルの壁に様々な素材が付着していたのは、これが原因だったんじゃな。巨大ワーム式の消化機能、なんじゃろうか?」

「随分と強引な消化なもんだ……」


 この先も同じような事が起こるかと思うと、進むのが心底嫌になってくる。これ、黒霊とかも餌食になってんじゃないの?

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