第129話 氷像
砂場を掘り掘り、砂場を掘り掘り――スコップの形にダリウスを変化させ、そんな事を続けること数分。
「む、ワシの先っぽに何か当たったぞい?」
「どれどれ、一体何が出て来るのか……ええっ」
砂を掻き分けていたところで、慈愛に溢れた純白の顔とご対面。罠でもアイテムでもなく、砂の中に埋まっていたのは――まさかの女神像であった。
「……なあ、何か女神像が埋まっていたんだけど?」
「やはりそうだったか」
「知っておったのか、オルカ!?」
「ああ、ホワイトが近付こうとしなかったからな。女神像のセーフティーエリアは黒霊が立ち入る事ができない、その性質が働いていたんじゃないかと思ったんだ」
「女神像ってこんなところに出現する事もあるん? って、何だこれ、すっごい重いんだけど!?」
手の平サイズのミニ女神像を軽い気持ちで持ち上げようとしたんだが、圧倒的なまでの重量感に全く動かす事ができず。冗談抜きにビクともしねぇッ!?
「探索者は女神像を動かす事ができないからな。不思議な力でその場に留まろうとするぞ」
「そ、それにしたって重過ぎだろ! 腰が折れるかと思ったわ……!」
「覚醒からのギックリ腰は、流石に格好がつかんからのう」
「切実にね! けど、本当に何でこんな場所に女神像が? 巨大ワームがオブジェクトと一緒に、どこかに置かれていた女神像も飲み込んじゃったとか?」
「うーむ、さっきも言った通り女神像はその性質上、黒霊に触れられるどころか近づかれる事もないからな。飲み込んでの移動が可能だったのか、それとも元々この場所にあったものなのか……うん、分からない!」
ですよねぇ。今回のこの巨大ワーム自体が例外中の例外的な存在な訳だし、検証の仕様がないもんな。
「とりあえず、一度祈ってこの女神像の場所を記録しておいた方が良いのではないかの? 白と黒の空間移動で時間は経過してしまうが、何もこの探索のみで巨大ワームを倒す必要はないのじゃろう?」
「まあ、街が無事ならな。ちょっと待ってくれ、グレアさんに連絡してみる。……あ、もしもし、グレアさん?」
耳飾りでグレアさんとの情報共有を行い、現在も街は無事である事を確認。ホッと胸をなでおろす。
「な、なんですってえええぇぇぇッ!?」
一方グレアさんは、巨大黒霊の体内に女神像が埋まっていた特大ホームラン級の出来事に驚いていた。それはもう、お手本のような驚きっぷりである。皆の良きツッコミ役として、俺も見習いたいものだ。で、双方の状況を鑑みての話し合いの結果、俺達は一度、白の空間に帰還する事に。ここ、転送先の名称は何になるんだろうか?
◇ ◇ ◇
◎本日の成果◎
討伐黒霊
大斧の牛機×1体(斧術LV3、肉鎧LV3、噴射LV2)
大剣の牛機×1体(剣術LV3、肉鎧LV3、噴射LV2)
埋伏する絡繰蠍×1体(猛毒LV3、穴掘LV3、噴射LV2)
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魔剣ダリウス・オルカ
耐久値:77/77(+1)
威力 :68(+1)[+3]
頑強 :109(+1)[+36]
魔力 :63
魔防 :103[+41]
速度 :64(+2)[+5]
幸運 :51[+3]
霊刻印(ダリウス)
◇剣術LV4
◇増殖LV4
◇統率・屍LV4
◇格納・屍LV5
◇融合LV5
◇修繕LV5
霊刻印(オルカ)
◇剣術LV4
◇飛剣LV5
◇魔法・氷剣LV5
◇耐性・氷LV3
◇空蹴LV3
◇隠密LV3
探索者装備
体 :慟哭の軽鎧(頑強+17、魔防+16)
腕 :刃の太陽(威力+3、頑強+4、魔防+4)
足 :慟哭の洋袴(頑強+12、魔防+18)
靴 :慟哭の履物(頑強+3、魔防+3、速度+5)
装飾 :縁故の耳飾(右)
装飾 :縁故の耳飾(左)
装飾 :司教の首飾(幸運+3)
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「はい、今回はこんな感じですね。ところで、なぜ新しいお酒がないのです? やる気あります?」
「ゼラ、俺は時々思うんだ。ミステリアスだった頃の君が懐かしいな、って」
白の空間に戻り、ゼラに案内人の力を使ってもらう。今回は黒霊を三体しか倒していないってのもあるが、そのどれもがノーマルハゼちゃん級の相手だった筈だ。いやー、ステータスが本当に上がり辛くなったものだよ。手に入れた霊刻印についても、『噴射』以外に目新しいものはないかな。まあその噴射も加速が可能になる反面、煙やら音やらで余計な注目を集めそうで、なかなか使いどころに困りそうだが。使ったら使ったで、生身の俺から何が噴射するのかも不透明で怖いぞ。
「構成はそのまま、手に入れた霊刻印も今回は廃棄で良いかな。キンちゃんに預けている枠も一杯だし」
「双生の画廊で高レベルの霊刻印を大量に獲得したからな。いつかはそれらも試してみたいが、正直今の構成が抜群に安定していると言うか……」
「交換するとすれば、オルカの『隠密』かのう? 相棒が主体的に動く場合、ホワイトらを出している間は殆ど意味のない力じゃし、高レベルの『肉鎧』で単純に防御力を向上させた方が良いかもしれん」
「そういう意味では、『再生』で治癒力を高めるのも手ではないか? 霊薬の節約にも繋がるぞ」
「な、なるほど、言われてみれば確かに……! けど、どっちが俺のスタンスに合っているんだ? より石橋を叩けるのはどっちだ!?」
「ベクト、私は時々思うんですよ。貴方はいつだってネガティブなんだな、って」
俺の好きな言葉、それは生存戦略。
「ところでさ、オルカ」
「む?」
「さっき牧場の方でオルカの姿をした氷像を見かけたんだけど、アレって何? 氷像なのに普通に動いていて、動物達の世話とかしていたんだけど?」
俺、思わず二度見したんだけど?
「ああ、アレの事か。動物達の世話は私がすると言ったが、黒の空間で探索をする間は牧場を留守にするだろう? 行き帰りの転送だけで結構な時間が経過してしまう。しかし、不在を理由に世話を放棄する訳にはいかない。そこで私は編み出したんだ、『魔法・氷剣』で私の分身を!」
「うん、全然理解が追いつかないけど、すっごい無茶をしているって事だけは伝わったよ」
「ベクトが案じている事は分かる。元は攻撃や束縛に利用する魔法を利用したら、動物達を傷つけてしまうではないか、とな。だが、そんな心配はいらない! 白の空間は殺傷を禁じられた聖域、動物達が氷像に接触してもダメージは発生しないんだ!」
ああ、アリーシャに刃の太陽を使わせても大丈夫な理由と同じかって、俺が頭を抱えている理由はそっちじゃないんだよなぁ。
「いや、何で氷剣でオルカの氷像が作れて、更には動物達の世話ができるようになってんの? そういう魔法じゃないだろ、アレ……」
たとえるとすれば、杖ズミさんの『魔法・爆毒』で同じような事を実現させているようなものだ。うん、絶対に使い方が違うし、やろうと思っても実現できる筈がない。
「フッ、ベクト、もっと視野を広げるんだ。私自身が魔具で剣みたいなものだろ? なら、氷剣=剣=私=私は動物好き=動物好きな私の氷像、と言う式が成り立つじゃないか。うむ、見事な証明だな!」
「拡大解釈が過ぎない!?」
あとで試してみたが、その使い方は俺には無理だった。魔法とは奥が深いものである。まあ、この場合何かが致命的に違う気もするけど。




