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19話 猫耳パーティ、合流する

 朝。ミカはいつものように、朝食の準備を行っていた。


「ミカさん、お皿は並べておりますわ」

「助かるよショーティアさん」

「ところで、今日の朝食はなんですの?」

「ああ、シャクシュカって料理だ。オリーブオイルでニンニク、トマト、タマネギとかを炒めて、色々なスパイスで味付けしたあと、半熟卵を乗せる、海の向こうの国では有名な料理だよ」

「あら、確かにとてもいい香りですわ」

「焼きたてのパンと一緒に食べると、これがまた美味いんだ」


 ミカとショーティアが、このパーティハウスでは早起きの二人だ。

 そのため、ミカの料理の手伝いは、よくショーティアが行っている。

 ミカは朝食の準備を終え、料理をいつでも広間に持っていけるようにした。


「そうそう、港で東方美人って名前の、東方の国由来のお茶を手に入れたんだ」

「まぁ! お茶! わたくし、お茶を淹れるのは得意ですわ!」

「食糧庫に入れてあるよ。食後にみんなで飲もう。持ってきてくれるか?」

「ええ、わかりましたわ」

「それじゃ、俺はクロとアゼルを起こしに行くよ」


 そう言ってミカは、二人を起こしにハウス内を歩き出した。

 その時、トントントン、と何か扉を叩くような音が聞こえてきた。

 ミカが猫耳をピクッと動かして耳を澄ませると、その音は玄関から聞こえてくることがわかった。


「ん? こんな朝早くに来客か? 珍しいな」


 そもそもからして、このパーティハウスは冒険者居住区でも特に端の端、崖際という立地だ。そうそう人も通らないはずだ。

 ミカはクロ達を起こすのを後回しにして、玄関へと向かった。

 玄関の扉に手をかけ、扉から顔を出す。


「何か用かな?」


 扉を開いた先に立っていた人物に、ミカは問いかけた。


「あ、あのぅ、お伺いしたいことがあるであります……」


 そこに居たのは、薄茶色の髪色をした、ツインテールの少女だった。

 頭の上には猫耳、背中には先に行くごとに、毛の茶色が濃くなっている尻尾が揺れている。リテール族の少女だ。

 年齢は15歳から17歳前後だろうか。ミカのパーティメンバーに近い年齢であった。

 そのリテール族の少女は、おどおどしながらミカに質問する。


「自分、この付近にあったはずの、古い屋敷を尋ねに来たのでありますが……」

「古い屋敷?」


 ミカは思い出す。おそらくは、前のパーティハウスのことだろう。


「ああ、あれなら解体済みだ」

「か、解体!? どういうことでありますか!?」


 なぜか突然慌てだす少女。続けてミカは。


「いや、その名の通り、必要なくなったから」

「ひ、ひどいであります! あそこは自分の帰る場所なのであります!」

「え、どういうことだ?」

「自分、『青空の尻尾』というパーティに所属していたでありますよ! その古い屋敷は、自分のパーティのハウスであったであります! それが消えて、なぜかこんな立派な建物が建っていたであります! ど、どういうことでありますか! 自分のおうちはどこでありますかあああ!」


 大声で叫ぶリテール族の少女。それをミカはたしなめようとして。


「ちょ、おちつけ! おちつけって……あ!」


 思い出した。

 薄茶色の髪。ツインテール。年齢。リテール族。

 森の中で、ミカが出会った少女。ドラゴンに襲われたパーティのため、助けを呼びに来た少女。


「もしかして、あの時、森で助けを呼びに来た……」

「へ? なぜそのことをご存じでありますか!? 確か自分は男性に助けを求め……ああ!」


 何かを思い出したかのように、両手で自分の顔をペチンと叩いた少女は。


「そういえばショーティア殿に聞いていたであります! あなたの名前をお伺いしてもよろしいでありますか!」

「えっと、ミカだ。そういう君はもしかして」


 すると、今まで取り乱していたリテール族の少女は、突然ピンと背筋を伸ばして敬礼のポーズを取った。


「自分、『青空の尻尾』所属、名はルシュカと申します! 本日の朝、退院してまいりました!」


 彼女こそ、ミカが森で出会った、一番最初の『青空の尻尾』のメンバーであった。


「退院できたのか! よかった! みんな喜ぶぞ!」

「お話は聞いておりますミカどの! もう、なんとあなたにお礼すれば良いか……」

「その話はあとにしよう。さあ、パーティハウスに入ってくれ。朝食をもう一人分、追加しないとな!」


〇〇〇


 ミカとルシュカが話していた頃。

 遠く離れたバレンガルド王国の首都にある、王国立の研究機関。そこで、一つの事実が明らかになっていた。


「こ、これは……」


 白衣を着た、老齢の男性が読み込んでいるのは書物。現代とは異なる太古の文章が記されたその書物は、かの超高難易度ダンジョン、『大空洞』から出土したものだった。


「教授、いかがしました?」


 助手らしき白衣の女性が、老齢の男性に話しかける。


「……助手よ、以前話した、『大空洞の入り口が複数ある可能性』について、覚えておるか?」

「ええ。もしも発見できれば、これまで探索してきた入り口とは、異なる領域を探索できる。新たな遺物の出土にも期待できるとおっしゃっておりましたね」

「そうじゃ……そして以前解読した古文書に『深層へと続くカギは、第二の入り口を通らねば手に入らぬ』と書かれておった。第二の入り口なぞ存在せず、解読を誤ったかと思うたが……助手よ! 地図を持ってくるのじゃ!」


 そう言われて、助手は慌てて地図を持ってくる。その地図を開くと、教授は書物の中に記載された、太古の地図と現代の地図を照らし合わせた。


「書かれておった……出土したばかりのこの古文書に……『強大なる竜が守る、大空洞への第二の入り口』……その位置は……」


 教授が現代の地図を指さした。

 指さした場所。その場所には、『ヴェネシアート』という文字が刻まれていた。


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