32 ライラの伝言
ライラの話は奇妙な話だったし、迷惑な話でもあった。
市長。
そんな人物がこの街にいるという。初耳だった。
「ブロンバーグという男がいる。この街の市長さ」
ライラはこう、話を切り出した。
「あんた達、カルベスってのをってのを知ってるかい?」
カルベス。
エリアREFを治めている大蛇を崇めている団体らしい。
「あたしゃ、宗教なんて信じないよ。大蛇教であってもなんでもね。カルベスってのは、本当はある使命を帯びた連中。宗教団体めいた雰囲気は、カムフラージュなのさ」
ある使命とは。
地球滅亡を阻止すること。
「寝ぼけたことを言うな、って顔だね。そりゃそうだろうさ。でもねえ」
ライラは真顔だった。
「あたしゃ、あながち嘘でもないと思うんだよ」
ライラの夫、科学者ホトキンが、地球滅亡の日が近いことを話してくれたという。
その理由も。
かなり以前から指摘はされていた。で、ある種の装置が極秘裏に作られたって言うんだよ。
地球滅亡、いや人類滅亡だね、を回避するための装置がね。
ゲントウという男によって。
そいつは、オーエンの昔の右腕。
しかし、時が経ち、その装置が持つ本質の解釈に、変化が生じた。
カルベスは二つの派閥に分かれたのさ。百年ほど前に。
ひとつはここニューキーツ。もうひとつはロア・サントノーレという街に。
その装置を発動させまいとする一派が、ニューキーツからロア・サントノーレに逃れ住んだというのが実態らしい。
「でさ、市長の頼みはこうさ」
いよいよその時が近い。
いつ何時、装置を発動させるべき日が来るやもしれぬ。
「市長はカルベスなんだよ。で、言い伝えを信じている」
言い伝えにはこうある。
ーーーーー 若草色の髪を持つ女が、カルベスの珠を開くであろう




