32 手裏剣をいじり始めた
少し疲れたのか、チョットマが声を落とした。
「ねえ、パパ」
「うん?」
「スジーウォンとスミソ、どうしてるだろ」
これについても、詳しく話すことはできない。
チョットマにはもちろん、隊員達には彼らの任務の中身を伝えていない。
スジーウォンとスミソがなぜカイラルーシに、向かったのか。
ハクシュウ隊、今、ンドペキ隊にとって、公式な作戦の詳しい中身を伝えないのは、これまでなかったこと。
それほどの任務がなかったということもあるが、イコマは、ンドペキは、伝えることができなかった。
ハクシュウがいるらしいとの情報がある、とだけ伝えていた。
話せば、緑色の髪をした女、つまりチョットマの役割を話さざるを得なくなる。
その役はチョットマに決定されたわけではないが、状況はそのように向いている。
チョットマが知れば、どう感じるだろう。
レイチェルのクローンとして街に放たれ、親友のサリはレイチェルを刺した。
淡い恋心を抱いていたンドペキにはスゥという恋人ができ、気に入った男の子は失踪してしまった。
そんなチョットマが、たいそうな装置を動かす役目を背負わされ、地球を救うという大げさな役目まで回ってくる、というのは。
「無事に任務、こなしてるのかな……」
「そりゃ、そうだろう」
イコマも、その任務を知らされていないことになっている。
わが娘、チョットマに対して隠し事をしている、という後ろめたさは、心の中に押し込めておくしかなかった。
「スジーウォンってさ。前はなんとなく怖い人って思ってたけど……」
そういいながらチョットマは、いつも胸に下げている、ハクシュウからもらった手裏剣をいじり始めた。
「早く帰ってきて欲しいな」




