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31 手探りのチョットマ

「あの子、何か知ってると思う、きっと」

 チョットマの口からポンポンと言葉が飛び出してくる。

「ハワードにも聞いてみた」

「へえ」


 以前、チョットマはハワードを嫌なやつ、と決め付けていた。

 それはそうだろう。

 実際は見守られていたのだが、監視されているのも同然だったのだから。

 チョットマも、折り合いをつけられるようになったのだ。

 大人になったね、と言いそうになったが、これは嫌味というもの。



「でね。ハワードは。あ、これ内緒だけど」


 彼がチョットマに話したことは、イコマにとって、小さな驚きだった。


 アンジェリナは、メルキトということになっている。

 SPではあるが、むしろレイチェル付きの若き特殊任務要員らしい。

 街の情報をレイチェルに伝える係としてエリアREFに住んでいるが、もうひとつ、REFの兵にレイチェルの意向を伝える任務も与えられていたという。


「ううむ」

 REFの、まるで敗残兵のようなあの者たちとアンジェリナの組み合わせには疑問符が付くが、チョットマは気にするふうもない。

「ニニはね、そのアンジェリナの友達役。レイチェルが決めて、派遣されてきたんだって」

「友達の役……」

「うん。遊び相手? 相談相手? っていうのかな」


 ニニはアンドロ。

 メルキトの友達役として派遣とは。

 使用人というような位置付けだったのだろうか。



「でもさあ。ニニって、普通のアンドロより、かなり気持ちが……」


 いい言葉が浮かばなかったのだろう。

 言い淀んでいるが、チョットマが言いたいことの意味は分かる。

 人造人間としてのアンドロではなく、人としての豊かな感情を持ったアンドロなのだ。きっと。

 アンジェリナの友達役としてレイチェルが選んだとすれば、当然のことかもしれなかった。


「彼女、セオジュンが好きだったとしたら……」

「うーむ」


 その場合はどうなるのだろう。

 セオジュンとアンジェリナが恋に落ち、ニニは……。


 ニニが二人を、とでもいうのだろうか。



 感情を持つアンドロであっても、その起伏は激しい。

 ハワードの例からも、それはよくわかる。

 人も心を暴発させることはあっても、それは究極の段階であって、普段は抑制されている。

 しかし、アンドロの基準、あるいは臨界点は違う。

 それほど感情が高まるのか、と思ったすぐ後には収まったりするのだ。



「チョットマ。ニニという子、疑ってるとか?」

 イコマは思わず聞いた。

「えっ。ううん」

 チョットマが驚いたように目を見開いた。

「パパ、そうじゃなくて……」


 チョットマも手探りなのだ。


「彼女、なんとなく変、なんだ……」

 どこがどう変なのか、チョットマにも分からないらしい。

 アンドロなんだから、という言葉。これもまたイコマは飲み込んだ。


 感情の起伏。

 心の抑制と解放の手順。

 ハワードにはハワード流の、ニニにはニニ流の表現があるのだろう、と思うしかなかった。

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