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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第90話:ただの薪割りと、深淵の邪神樹の強制芳香化(古代狂信教団の完全なる破滅)

第90話:ただの薪割りと、深淵の邪神樹の強制芳香化(古代狂信教団の完全なる破滅)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも凌駕する究極の平穏と、日本人の(前世の記憶を持つアルドの)魂を激しく揺さぶる、極上の和朝食の匂いと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの土鍋に向かい、絶妙な火加減で『特製・神仙米の炊き込みご飯と、幻獣鮭の炭火焼き』を仕上げていた。

「よし! メインは『飛竜ワイバーンの出汁がたっぷり染み込んだ山菜ご飯』で、おかずは脂の乗った幻獣鮭、そして大精霊の加護を受けたお味噌汁だ!」

 アルドがエプロン姿で次々と小鉢を並べていくと、その圧倒的な生命力と香ばしい醤油の香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがダイニングテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。

 この和朝食、一口食べれば幻獣鮭の極上の脂が全身の細胞を瞬時に活性化させ、飛竜の出汁が致死の呪いすらも中和し、魂の奥底から尽きることのないエネルギーを湧き上がらせる『究極の万能回復食』である。

「うむ……! この黄金色に輝く米粒の艶と、香ばしく焼けた魚の皮! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、田舎の実家に帰ったかのようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、正座をしてお箸を持ちながら、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて涙ぐんでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒から少し離れた、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブル。

 そこでは、大公レオハルト、情報局長アーキヴァル、元・大賢者ゾルタンの三人が、深刻な顔つきで王都の地下水脈を指し示す立体地図を広げ、極秘の『戦術会議』を行っていた。

「……大公閣下。先日の『幽冥の怨霊鳥』による時計塔狂乱計画を我々に(極上の鳩時計として)粉砕された古代狂信教団『深淵の瞳』ですが、奴らはいよいよ全ての資産と命を投げ打ち、最後の切り札を切ってきました」

 アーキヴァルが、手元の書類を指先で弾きながら冷徹に報告する。

「我が情報局の感知網と、今朝庭の植物の声を聴いていた大精霊女王ティターニア殿の『大地の悲鳴感知』により、王都の地下最深部にある忘れられた古代祭壇に、かつてない規模の異常な魔力反応を確認しました」

 ゾルタンが、魔力測定器の不吉な漆黒の波形を指差した。

「教団の司祭ザガンが自身の命を削って召喚したのは、古代の禁忌呪術で生み出された『深淵の邪神樹アビス・イグドラシル』です。この魔樹は、王都の地下水脈に根を張り、あらゆる生命体からマナを強制的に吸い上げて無限に成長する最悪の災厄。奴の狙いは、王都の全ての生命力を吸い尽くし、その莫大なエネルギーを以て『邪神の本体』をこの世界に降臨させることでしょう」

「王都の民の命を苗床にして、邪神を呼び覚まそうというのか。……どこまでも短絡的で救いようのない外道だな」

 大公レオハルトは、怒りで拳を強く握りしめた。

「ええ。ですが、我々が『事前に』その動きを完全に把握している以上、王都の民の髪の毛一本すら吸わせることはありません。敵の悪意が地上に芽吹く前に、根こそぎ伐採して差し上げましょう。……しかも今回は、邪神樹と術者であるザガンが『生命供給のパス』で直接繋がっているようです。アルド様の『お掃除』の余波が、ダイレクトに敵の本拠地に届くことになりますね」

 アーキヴァルは、悪魔のように完璧な微笑みを浮かべ、手帳のページに『対・狂信教団・ご請求書(最終版)』と優雅な筆記体で書き込みながら、一枚の『依頼書』を迅速に作成した。

 ちょうどそこへ、出来立てのご飯と味噌汁を運んできたアルドに、アーキヴァルは深々と頭を下げて依頼書を差し出した。

「アルド様、美味しい朝食の最中に申し訳ありません。大公閣下より、急ぎの『伐採と消臭の依頼』が入っております」

「おや、急ぎのお仕事かい? どれどれ……『王都の地下水路の奥底で、異常に成長した不気味な巨木が水道管に絡みつき、酷い悪臭(カビとヘドロの匂い)を放っている。水が詰まる前に、至急巨木の伐採と薪割り、そして地下の消臭をお願いしたい』……なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でコクリと頷いた。

「地下の水道管に木の根っこが絡まるなんて一大事だ! 放っておいたら管が破裂して水が使えなくなっちゃう。おまけに悪臭がするなんて、衛生的にも最悪だね。よーし、今日は僕の特製『事象伐採の魔導チェーンソー』と、『絶対芳香のオーガニック・ルームミスト』を持って、地下をピカピカに整備してこよう!」

 アルドが意気揚々と作業着に着替え、巨大なチェーンソーとスプレーボトルを持って部屋を出て行った後。

 リビングの影から、レイヴンとシノンが音もなく立ち上がった。

「主の『薪割り』の邪魔をする、薄汚い狂信者のドブネズミどもは、俺たちが直接本拠地に乗り込んで処理しておく。……さあ、奴らの教団を完全に解体するための、集金ざまぁの時間だ」

 クランメンバーたちによる、緻密な情報網に裏打ちされた「能動的な悪の事前粉砕」が、最終局面へと突入したのである。

 ***

 その頃、王都の地下深くに広がる、狂信教団『深淵の瞳』の巨大な祭壇。

 司祭ザガンは、中央に鎮座する禍々しい邪神の石像に魔力がドクドクと注ぎ込まれる様子を見つめながら、狂気に満ちた高笑いを上げていた。

「クックック……! 素晴らしいぞ。我が教団の最終兵器『深淵の邪神樹』が、王都の地脈に根を張り、民どもの生命力を順調に吸い上げている! あの魔樹が吸い上げたエネルギーは、空間を越えてこの祭壇の石像に蓄積されるのだ!」

 ザガンは、血走った目で傍らに控える信者たちに傲慢な視線を向けた。

「大劇場での生贄も、時計塔での狂乱も失敗したが、全てはこの究極の儀式のための布石に過ぎなかったということよ! 石像への充填率が百パーセントに達した瞬間、偉大なる邪神様が降臨し、王都は完全に崩壊する! 大公の犬どもがどれだけ足掻こうと、この神の降臨を止めることなどできまい!」

 自らの完璧な陰謀が進行していると信じて疑わない悪徳司祭の狂笑が、薄暗い地下要塞に虚しく響き渡っていた。

 ***

「よし、伐採と消臭の準備は完璧だ!」

 アルドは、王都の地下水路の最深部、巨大な空間にそびえ立つ禍々しい巨木の前に立ち、手作りの『事象伐採の魔導チェーンソー』と、巨大な『絶対芳香のルームミスト』を用意していた。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。魔導チェーンソーの刃は、神話の戦神の剣を粉砕して無数の刃に打ち直し、大精霊の風の魔力で超高速回転させる『大宇宙の次元すらも両断する究極のノコギリ』。ルームミストは、世界樹の花の蜜と天界の朝露を調合した、いかなる邪気も完全に浄化し、極上の香りを永遠に放つ『究極の消臭芳香剤』である。

「うわぁ……。大公様が言っていた通り、これはひどいな。巨大な変な木が、水道管にびっしり根っこを巻き付けてるぞ。おまけに、木全体からドス黒いモヤ(致死の瘴気)が出てて、ヘドロとカビが混ざったようなすっごく嫌な臭いがする」

 アルドは、チェーンソーのエンジンをブルンッとふかしながら、プロの便利屋(林業従事者)としてのダメ出しを始めた。

 彼の驚異的な「日常フィルター(事象の誤認)」は、大宇宙の生命を喰らう邪神樹の本体を、「長年の湿気と換気不足で異常繁殖し、水道インフラを破壊しかけている極度にガンコで悪臭を放つ謎の巨木」だと完全に誤認していた。

「よし! こんな木があったら、王都の水道がダメになっちゃう! 一気にチェーンソーで切り倒して、切り株ごとルームミストで消臭してやるぞ!」

 アルドは、チェーンソーを構え、致死の瘴気が渦巻く地下空間の中へと、鼻歌交じりにズンズンと足を踏み入れた。

『……ゴゴゴゴゴ……? ナンダ、コノ矮小ナ人間ハ……? 我ガ絶対捕食ノ瘴気ノ中ヲ、ナゼ生命力ヲ吸ワレズニ歩イテイラレル!?』

 深淵の邪神樹は、触れた瞬間に干からびるはずの死の空間を、平然と歩いてくるアルドを見て激しく動揺した。アルドの事象改変オーラは、魔樹の放つ絶対の捕食を「ちょっとカビ臭くて息苦しいな」程度に強制的に緩和させていたのだ。

『コザカシイ! ナラバ直接、我ガ『深淵ノ絞殺根アビス・ルーツ』デ魂ノ底マデ絞リ尽クシテクレルワァァァッ!』

 激怒した邪神樹は、無数の黒い触手のような根を鞭のようにしならせ、アルドを四方八方から串刺しにしようと襲い掛かった。

「うわっ! この木の根っこ、すごく暴れて危ないな! でも、この特製・魔導チェーンソーの前では、どんな太い枝も一刀両断だ!」

 アルドは、襲い来る邪神樹の巨大な根に向けて、超高速回転するチェーンソーの刃を横凪ぎに一閃した。

 ――ギュイィィィィィィィンッ!!!!

 アルドが振るった『事象伐採の刃』が、邪神樹の放つ呪いの根と激突した瞬間。

 星の生命を喰らい尽くすはずの強靭な魔界の木材は、アルドの「邪魔な巨木を綺麗に伐採して薪にしたい」という圧倒的で暴力的なまでの意思の前に、物理的に「スパーンッ!」と音を立てて、まるで大根でも切られるかのように、一瞬にして完璧な断面で切り揃えられてしまった。

『ギ、ギャァァァァァァァァッ!? な、何ダコノ異常ナ切断力ハ!? 我ガ全テヲ喰ラウ深淵ノ身体ガ、タダノ林業用ノ機械デ綺麗ナ薪ニサレテイクゥゥゥッ!?』

「よし、邪魔な枝と幹は綺麗に伐採できたぞ! ここで一気に、ルームミストをたっぷり撒き散らして、地下の嫌な臭いを消し去ってあげる!」

 アルドは、見事な切り株だけになった邪神樹の残骸と、空間全体に向かって、特製ミストを「プシューッ!」と気前よく吹きかけ始めた。

 ――ピカァァァァァァァァンッ!!!!

 大宇宙の法則が、アルドの「完璧な伐採と消臭作業」という意思に完全にひれ伏す。

 ミストを浴びた邪神樹の禍々しい捕食の魔力は完全に漂白され、代わりにアルドのミストが持つ『極上の癒やしの香り』という概念が、物理的な限界を超えて邪神樹の存在そのものを書き換えていった。

『ア……ァァ……。我ノ、大宇宙ノ命ヲ吸イ尽クスハズノ根ガ、マルデ都合ノイイ【地下水ヲ浄化スル為ノフィルター】ノヨウニ……!? イヤ、ミストヲ浴ビル度ニ、我ガ呪イノ魔力ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ森林浴ノアロマ】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、王都ヲ滅ボスノデハナク、コウシテ王都ノ水脈ヲ永遠ニ清メ続ケル「極上ノ全自動・オーガニック芳香樹」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 深淵の邪神樹の凶悪な意思は、アルドの「チェーンソー伐採と消臭スプレー」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を喰らう禍々しい巨木は、気がつけば「地下水脈の底に美しく定着し、流れる水を最高品質のミネラルウォーターに浄化しながら、王都中に癒やしのアロマを放ち続ける、超高性能な『永久・エコ芳香樹(見た目は光り輝くクリスタルの切り株)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌なヘドロの臭いは完全に消えて、なんだか高級なヒノキの森みたいないい香りがしてきたぞ! 切った幹は、すごく良い薪になりそうだからお家に持って帰ろう。これでみんな、美味しいお水が飲めるね!」

 アルドがチェーンソーを片付けて額の汗を拭うと、地下水路を覆っていた陰湿な空気は一瞬にして晴れ渡り、流れる水は太陽の光を反射したかのようにキラキラと輝く『奇跡の神仙水』へと進化を遂げていた。

 ***

 一方その頃、王都の地下深くに広がる『深淵の瞳』の祭壇では、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。

「な、なんだこれはァァァッ!?」

 ザガンが絶叫する。

 彼が邪神樹から生命力を吸い上げるために繋いでいた『生命供給のパス』。そこから逆流してきたのは、吸い上げた命ではなく、アルドが散布した『事象中和の神仙ルームミスト(の概念)』だった。

 パスを通じて地下要塞全体に【完全なる浄化と芳香】のエネルギーが充満していく。

「ヒィィッ! 邪神の石像が……石像がただの『巨大なヒノキの彫刻』に変わっていくゥゥッ!?」

「ザガン様! 我々の用意した生贄の短剣が、全て『極上のバターナイフ』に書き換えられています! 呪詛の経典も、ただの『アロマセラピーの入門書』にッ!」

 アルドの「悪臭の発生源から綺麗に消臭する」という無自覚な意思は、邪神樹の親玉であるザガンたちを「悪臭の根源」と認識し、祭壇内のあらゆる悪意と闇のアイテムを強制的に【無害でリラックスできる日用品】へと書き換えてしまったのだ。

「ば、馬鹿な……。我が教団の数千年の悲願が、ただの『消臭作業』で消し飛ぶだと……!? どんなバケモノが相手だというのだ……!」

 ザガンがへたり込み、絶望の涙を流したその時。

「――ご苦労だったな、薄汚いドブネズミども。随分と『いい匂いのする綺麗な部屋』になったじゃないか」

 浄化された祭壇の扉が静かに開き、音もなくシノンの短剣が閃いた。

 扉の奥からは、レイヴンが神具の斧を肩に担ぎ、凄まじい威圧感を放ちながら現れる。そしてその後ろには、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルと、大公レオハルトの姿があった。

「主の『薪割り』と『消臭』のおかげで、貴様らの薄汚いアジトの除菌は済んだようだな」

 レイヴンが、冷酷な瞳で見下ろす。

「ヒィッ……! お、お許しを……! 我々は……!」

「証拠は十分に揃いましたよ、ザガン殿。これにて、古代狂信教団『深淵の瞳』は完全解体です」

 アーキヴァルが、分厚いバインダーから【完全なる破滅の請求書】を取り出し、ザガンの目の前にドンッと突きつけた。

「さあ、この莫大な『事象芳香の手数料』、貴様らの身と魂を労働力に変えて、永遠に支払ってもらいましょうか」

 シノンの冷たい宣告と共に、ザガンと信者たちは完全に意識を刈り取られ、荷袋へと詰め込まれていった。

 ***

 数日後。日だまり郷の黄金の城塞。

「……終わりましたね。星を喰らう宇宙の邪神樹が、アルド様の腕によって見事なクリスタルの芳香樹に成り下がりました。そして、逆流した浄化の波により、古代狂信教団は文字通り『綺麗に消臭(壊滅)』されました」

 記録係のアーキヴァルが、大公から送られてきた莫大な報酬と、水道ギルドから届いた感謝の品々を確認しながら、手帳の『対・狂信教団・請求書』の最後のページに羽ペンを走らせ、ついに『完済(破滅)』のスタンプを押した。

「アルド殿が伐採したあの地下水路、今では『奇跡の神仙アロマ水源』と呼ばれ、その水の美味さと癒やしの香りから、世界中から飲料水として求められる名所になっているそうだな。教団の邪神復活計画など、完全に極上のミネラルウォーター作りの手伝いにされたというわけだ」

 レイヴンが、暖炉の前でアルドが持ち帰った「邪神樹の薪」が心地よい熱と香りを放って燃えるのを眺めながら、不敵に笑う。

「ええ。これにて、古代の狂信教団も完全に根絶やしにしました。我々の情報網とアルド様の家事スキルが、奴らの野望を全て未然に打ち砕いたのです。奴らは今頃、城塞の地下でサタナス殿の指導のもと、一生分の『便所掃除と薪割りの強制労働』に励んでいることでしょう」

 その時、キッチンからアルドの明るい声が響いた。

「みんなー! 今日は特別ボーナスがいっぱい出たから、夜は『飛竜と幻獣の豪華すき焼き』だよ! 早く手ぇ洗っておいでー!」

 アーキヴァルの眼鏡の奥で、全てを計算し尽くした冷徹な光が優しく緩んだ。

 最強の便利屋の「ただの伐採と消臭」は、王都の滅亡の危機をただのインフラ整備として解決し、古代の教団の野望を粉砕するだけでなく、王国に最高の水資源をもたらす奇跡の水源を誕生させてしまったのである。

 城塞の住人たちによる「能動的な悪の粉砕」は、国家を脅かす古代の暗躍組織に完全なる破滅の引導を渡し、また一つ、アルドの平穏で美味しい日常を守り抜いたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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