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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第73話:ただの街灯修理と、常闇の影魔獣の強制イルミネーション化(悪 徳商会の新たな影)

第73話:ただの街灯修理と、常闇の影魔獣の強制イルミネーション化(悪徳商会の新たな影)

アステリア王国の王都を揺るがした、腐敗した聖サンクトゥス教団の枢機卿ヴェインの失脚から数週間。

王都はかつてないほどの活気と平和を取り戻していた。大公レオハルトの迅速な対応により、教団が

隠し持っていた不正な富は国庫に還元され、民の生活は劇的に向上した。

そして何より、王都の至る所に「伝説の便利屋」が残していった奇跡の産物――神仙湯の温泉、癒や

しのトピアリー庭園、希望のステンドグラス、奇跡の孤児院――が存在し、人々の心に大いなる安らぎ

を与えていた。

そんな喧騒から遠く離れた辺境、黄金の城塞『日だまり郷』では、今日も変わらぬ穏やかな朝が始

まっていた。

「よし、今日の朝ごはんは特製の厚焼きパンケーキと、採れたてベリーのジャムだよ! みんな、冷め

ないうちに食べてね!」

アルドがエプロン姿でダイニングテーブルに大皿を運ぶと、神竜ポチ、海神イルカさん、そしてモフ

モフのサモエド犬シロ(元・絶対零度の星狼)が、ちぎれんばかりに尻尾を振って群がってきた。

テーブルには、レイヴン、シノン、エルミナ、アーキヴァル、ゾルタンといったクラン『黄昏の守護

者』の面々も揃い、アルドの作る神仙級の朝食に舌鼓を打っている。

「いやぁ、最近は便利屋の依頼がたくさん来て大忙しだったけど、クランの貯金も増えたし、お仕事

が順調で何よりだね」

アルドは自分の分のパンケーキを切り分けながら、にこやかに笑った。

「さて、大公様から届いた今日の依頼は……っと。『王都の商業区画で、メインストリートの魔導街

灯が一斉に故障してしまった。夜になると真っ暗になり、黒いもやのようなものが立ち込めて治

安が悪化しているので、至急修理と清掃をお願いしたい』か」

アルドは、いつものように愛用の工具箱を引き寄せた。

「街灯の故障かぁ。中の魔力石が寿命を迎えたか、ガラスのカバーがすすで汚れきっちゃって

るんだろうね。真っ暗な夜道は危ないし、商売をしている人たちも困っちゃう。よーし、今日は街灯の

ガラスをピカピカに磨いて、新しい光源を取り付けてこよう!」

アルドがニコニコと作業小屋へ向かった後。

優雅に紅茶を飲んでいた情報局長アーキヴァルと、元・大賢者ゾルタンは、すっと表情を消し、冷や

やかな視線を交わした。

「……先輩。アルド様は『魔力石の寿命と煤汚れ』と仰っていますが、商業区の魔力波形は完全に異

常です。光を食らい、空間を暗黒で塗り潰す大宇宙の災厄――『常闇の影魔獣(エクリプス・ビース

ト)』が放たれています」

ゾルタンが、魔力測定器の針が闇属性の極限値を示しているのを見て、額に青筋を立てた。

「ええ、把握しています。教団という巨大な権力が崩壊した今、王都の裏社会で新たに台頭しようと

している輩がいます。……巨大な財力で王国の物流を牛耳ろうと企む『黄金の天秤商会』の会頭、ギャ

リックです」

アーキヴァルは、手帳の真新しいページ――新たな【請求書】の項目を開き、羽ペンを走らせた。

「ギャリック会頭は、意図的に常闇の影魔獣を商業区に放ち、街の光を全て物理的に喰い尽くさせま

した。そして、自らの商会が独占販売する『粗悪だが高価な発光魔石』を法外な値段で売りつけ、暴利

を貪ろうという魂胆です。闇に紛れて商売敵の店を襲わせるという、実に古典的で下劣な貧困ビジネス

ですね」

「光を奪って光を売るとは……商人の風上にも置けないクズですね」

「ええ。ですが、大宇宙の暗黒など、アルド様の『窓拭きと電球交換』の前では、ただの黒ずんだ汚

れに過ぎません。アルド様には気持ちよく商業区の大掃除を楽しんでいただきましょう。我々は裏に潜

む商会の工作員たちを狩り、新たなターゲットであるギャリック会頭を追い詰める【第一の証拠】を回

収するのみです」

アーキヴァルの眼鏡の奥で、これから4話かけて新たな巨悪を徹底的に破滅へと導くための、冷酷で

完璧な計算の光が煌めいた。

* * *

その頃、王都の一等地に構える『黄金の天秤商会』の本部。

豪奢な執務室で、会頭のギャリックは山のように積まれた金貨の束を撫で回しながら、下劣な高笑い

を上げていた。

「ガハハハハ! 見ろ、商業区の連中が我先にとウチの発光魔石を買い求めに来ておるわ! 『常闇の

影魔獣』の放つ暗黒の霧は、普通の炎や魔法の光では決して照らせんからな!」

ギャリックは、最高級の葉巻を燻らせながら、取り巻きの商人たちにふんぞり返った。

「聞けば、大公が贔屓にしている『黄昏の守護者』とかいう便利屋が修理に向かったそうだが、笑止

千万! あの魔獣は光そのものを喰らう概念存在だ。ただの修理屋が近づけば、自身の生命の光ごと喰い

尽くされて永遠の暗闇を彷徨うことになるわ! 奴らが無惨に消滅する様を、しかと見届けてまいれ!」

金に目が眩んだ悪徳商人の高笑いが、部屋に虚しく響き渡っていた。

* * *

「よし、お掃除セットと交換用ランプの準備は完璧だ!」

アルドは、城塞の中庭で、手作りの『特製ガラスクリーナー』と『事象払拭のウエス(布)』、そし

て『お手製・長寿命魔力ランプ』を用意していた。

――当然ながら、その素材は常軌を逸している。クリーナーは極光の精霊王の涙を凝縮した『絶対光

源の雫』。ウエスは、次元の狭間を漂う虚無の布を織り上げた『概念拭き取りクロス』。そして交換用

ランプは、星のコアの欠片を純水でコーティングした、大宇宙の寿命が尽きるまで輝き続ける

『永久恒星ランプ』である。

「高い街灯の修理だから、脚立もしっかり持っていかないとね。レイヴンさん、シノンさん、今日も

出張の荷物持ちと護衛をお願いできるかな?」

「承知した。暗がりでコソコソしているドブネズミどもは、俺たちが先に『掃除』しておこう」

レイヴンが、肩に担いだ神具の斧をポンと叩いて不敵に笑う。

かくして、アルド率いる便利屋一行は、王都の商業区画へと向かった。

* * *

王都の商業区画は、昼間だというのに凄惨な「常闇の領域」と化していた。

メインストリートに並ぶ数十本の魔導街灯は完全に沈黙し、そこから這い出るようにして、ドス黒い

ヘドロのような影の触手が街全体を覆い尽くしている。光は完全に遮断され、一寸先も見えない暗闇の

中で、人々は怯えながら息を潜めていた。

『グルルルルル……!! 喰ラエ……全テノ光ヲ、全テノ希望ヲ、我ガ常闇ノ胃袋ニ……!』

メインストリートの中央にある最も大きな大時計の街灯に陣取っていた『常闇の影魔獣』は、新たな

光(アルドたちの生命力)の接近を感知し、無数の影の牙を剥き出しにした。

「うわぁ……。これは想像以上にひどいな。街灯のカバーが真っ黒に煤けてるし、なんだか黒い煙み

たいなのがモクモク出てるぞ。これじゃあ、夜は何も見えないわけだ」

アルドは、脚立を担いだままメインストリートの中心に立ち、腕を組んでプロの便利屋としてのダメ

出しを始めた。

彼の驚異的な「日常フィルター(事象の誤認)」は、大宇宙の光を喰らう影の魔獣を、「長年のメン

テナンス不足で煤が溜まりに溜まり、異常発煙を起こしている極度に汚れた街灯」だと完全に誤認して

いた。

「よし! みんなが安心して夜も歩けるように、一気に煤汚れを拭き取って、新しいランプに交換する

ぞ!」

アルドは、脚立を大時計の街灯の下に立て、腰にクリーナーとクロスをぶら下げて、鼻歌交じりにト

ントンと登っていった。

『……ア? ナンダ、コノ矮小ナ人間ハ……? 我ガ絶対暗黒ノ領域ノ中デ、ナゼ平然ト足元ガ見エテイ

ラレル!?』

影魔獣は、一切の光がないはずの暗闇の中を、的確に脚立を登ってくるアルドを見て激しく動揺し

た。アルドの事象改変オーラは、魔獣の放つ絶対暗黒を「ちょっと曇り空で薄暗い」程度に強制的に緩

和させていたのだ。

『コザカシイ! ナラバ直接、我ガ影ノ顎デ魂ノ光ゴト喰イ破ッテクレルワァァァッ!』

激怒した影魔獣は、街灯のカバーを突き破り、極大の暗黒の顎を開いてアルドの頭から丸呑みにしよ

うと襲い掛かった。

「うわっ! この煤汚れ、風でビロビロ動いてすごく邪魔だな! でも、この特製クリーナーなら一発

だ!」

アルドは、襲い来る絶対暗黒の顎の中心に向けて、スプレーのトリガーを容赦なく引いた。

――プシュッ! プシュシュシュシュッ!!!!

アルドが吹きかけた『絶対光源のガラスクリーナー』が、影魔獣の表面に付着した瞬間。

星の光を喰らうはずの絶対の暗黒は、アルドの「街灯の汚れをピカピカに落としたい」という圧倒的

で暴力的なまでの意思の前に、シュゥゥゥッと音を立てて、ただの『水に溶けやすい油汚れ』として強

制的に分解・漂白され始めた。

『ギ、ギャァァァァァァァァッ!? な、何ダコノ異常ナ眩サハ!? 我ガ全テヲ喰ラウ常闇ノ身体ガ、

タダノ洗剤デ泡ダラケニサレテイクゥゥゥッ!?』

「よし、汚れが浮いてきたぞ! ここで一気にクロスで拭き取る!」

アルドは、虚無の布で作られた『概念拭き取りクロス』を街灯のガラスに押し当て、円を描くように

「キュキュッ!」と小気味良い音を立てて力強く拭き上げた。

――キュピィィィィィィィンッ!!!!

大宇宙の法則が、アルドの「完璧な窓拭き」という意思に完全にひれ伏す。

クロスが通過した軌跡から、常闇の影魔獣の禍々しい暗黒の魔力は完全に拭き取られ、代わりにアル

ドが手にした『永久恒星ランプ』の輝きが、物理的な限界を超えて爆発的に増幅された。

『ア……ァァ……。我ノ、大宇宙ノ光ヲ奪ウハズノ暗黒ガ、マルデ都合ノイイ【イルミネーションノ

反射材】ノヨウニ……!? イヤ、拭キ取ラレル度ニ、我ガ呪イノ魔力ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【色鮮

ヤカナ光ノ乱反射】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、人々カラ光ヲ奪ウノデハナク、コウシテ

街中ヲ彩ル「極上ノ光ノ芸術」トシテ輝クコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

影魔獣の凶悪な意思は、アルドの「清掃と電球交換」によって完全に浄化され、書き換えられた。

光を喰らう禍々しい影の怪物は、気がつけば「商業区全体を七色の幻想的な光で包み込む、超高効率

の永久イルミネーション・システム」へと姿を変え、街路樹や石畳を美しく照らし出し始めたのであ

る。

「よしよし! ガラスはピカピカだし、新しいランプの明かりもバッチリだ! なんだか街全体がキラ

キラして、お祭りみたいで綺麗だね!」

アルドは、脚立の上で腰に手を当てて満足げに頷いた。

その瞬間、商業区を覆っていた暗黒の霧が完全に晴れ渡り、太陽の光と、影魔獣(イルミネーショ

ン)の幻想的な輝きが街に溢れた。

暗闇に震えていた商人や買い物客たちは、突然街が信じられないほど美しく光り輝き始めた光景に歓

喜の声を上げ、拍手喝采を送り始めた。「すげえ! あの便利屋、ただ街灯を直しただけじゃなくて、街

全体を魔法の光でデコレーションしやがった!」と大騒ぎである。

一方、その光景から少し離れた路地裏。

天秤商会のギャリック会頭が放った工作員たちは、大宇宙の災厄である影魔獣が、たった一本の洗剤

と布巾で「街のイルミネーション」に成り下がった光景に言葉を失い、恐怖でガタガタと震えていた。

「ば、馬鹿な……。常闇の影魔獣が、ただのネオンサイン扱いだと……!? 会頭の計画が、またして

もただの掃除で……!」

「退却だ! 直ちにこの絶望的な異常事態を報告し、発光魔石の売り逃げをしなければ!」

工作員たちが踵を返そうとした、まさにその時。

「――誰が、帰っていいと言った?」

明るくなった路地の影の中から、音もなくシノンの短剣が閃き、工作員たちの急所を正確に峰打ちで

叩き伏せた。

路地の出口からは、レイヴンが凄まじい威圧感を放ちながら退路を完全に塞いでいる。

「主の『電球交換』の邪魔をする害虫どもめ。貴様らが持ち込んだ変な煤汚れのせいで、主がどれだ

け拭き掃除に手間をかけたと思っている」

レイヴンが、斧を肩に担いだまま冷酷に見下ろす。

「ヒィッ……! お、お許しを……!」

「貴様らは、我らが情報局長への良い『証拠品』だ。……黄金の天秤商会とやら。いずれ迎える【完

全なる破滅】への第一の布石、きっちりと拘束させてもらうぞ」

シノンの冷たい宣告と共に、工作員たちは完全に意識を刈り取られ、荷袋へと詰め込まれていった。

* * *

数日後。日だまり郷の黄金の城塞。

「……終わりましたね。星の光を喰らう宇宙の暗黒が、アルド様の腕によって見事なイルミネーショ

ンに成り下がりました」

記録係のアーキヴァルが、大公から送られてきた莫大な報酬と、商業区のギルドマスターからの感謝

状を確認しながら、手帳の『対商会・請求書』のページに羽ペンを走らせる。

「ええ。記録完了。『第七十三種・常闇の影魔獣の強制イルミネーション化(ただの街灯修理と電球

交換)』。対象:大宇宙の災厄エクリプス・ビースト、および黄金の天秤商会の工作員。結果:アルド

様の手作り洗剤によって魔獣は永久光源へと概念を書き換えられ、裏で蠢く工作員はクランメンバーに

よって完全捕縛。悪徳会頭を追い詰めるための【第一の証拠】として回収完了しました」

「アルド殿が直したあの商業区、今では『夜の宝石箱』と呼ばれ、夜通しで商売が繁盛する王都一の

観光名所になったそうだな。ギャリックとやらの粗悪な発光魔石は、完全にゴミクズ扱いだ」

レイヴンが、暖炉の前でシロ(星狼)を撫でるアルドを眺めながらコーヒーを啜る。

「ええ。ですが、強欲な商人の足掻きはまだ始まったばかり。奴が次にどんな汚い手を使ってくる

か……我々は裏で全ての証拠を集め、4話後に奴が自らの金貨の重みに押し潰されるその時まで、淡々

と【請求書】の項目を増やしていくのみです」

アーキヴァルの眼鏡の奥で、全てを計算し尽くした冷徹な光が煌めいた。

最強の便利屋の「ただの街灯修理」は、商業区の暗黒をただの清掃作業として解決し、悪徳商会の野

望を粉砕するだけでなく、王国に最高の活気をもたらす奇跡のイルミネーションを誕生させてしまった

のである。

忍び寄る商人の悪意の全ては、いずれ訪れる『圧倒的ざまぁ』の舞台を完璧に整えるための、ただの

「汚れ仕事」として処理され続けていくのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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