第253話:ただの便利屋による世界インフラ完全制覇と次なる野望の幕開け、そして『日だまり郷・超絶エコスマートシティ化』緊急都市計画会議
第253話:ただの便利屋による世界インフラ完全制覇と次なる野望の幕開け、そして『日だまり郷・超絶エコスマートシティ化』緊急都市計画会議(総合ライフサポート企業の新規事業・大規模宅地開発プロデュース)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝。そこは、大宇宙の根源たる神仙へと完全覚醒したアルドが、あえて「ただの便利屋」としての日々を選択し固定したことで、もはや何者にも侵し得ぬ絶対的な聖域と化していた。
庭先では、冬の澄んだ空気が心地よく広がる中、かつて全宇宙を滅ぼそうと幾度も襲い掛かってきた創造神や天界の神々、そしてすっかり常連の大家さん候補として定着した勇者パーティの面々が、縁側で温かいココアをすすりながら、自らとペットたちに起きている奇妙な現象について、今日も顔を見合わせていた。
「……なあ。最近、本当に俺の体がどうもおかしいんだ。世界中のダンジョンが全自動インフラになってしまったせいで、俺たち勇者パーティは完全に『やることがない』状態なんだが、ただ毎日日だまり郷で庭を散歩してご飯を食べているだけで、俺の魔力回路が勝手に大宇宙の真理と接続されて、息を吸うだけで全身の細胞が超新星爆発レベルのエネルギーを生産している。試しに近くの岩山を指で小突いたら、岩山が音もなく消滅したんだが……」
勇者が、己の引き締まった指先を見つめて首を傾げた。彼の肉体は歴戦の傷跡が完全に消え去り、まるで神々が鍛え上げたようにツヤツヤと輝き、底なしの生命力が溢れ出している。もはや彼に『怪我』や『疲労』という概念は物理的に存在しない。
「ええ。私もですわ。昨日など、庭でただ読書をしていただけなのに、私の思考から漏れ出す過剰な魔力と生命力に当てられて、周囲の枯れ草が一瞬で『世界樹の苗木』へと変貌し、瞬く間に光の果実を実らせてしまいましたの。美容液どころか、ただ存在しているだけで周囲の環境を強制的に最適化し、寿命を無限に引き延ばしてしまうような、絶対的な『不変の神域』に固定されているのを感じますわ」
創造神もまた、自らの白く滑らかな手を見つめながら驚きと共に頷く。
縁側で丸くなっている神竜ポチと星狼シロに目を向けると、彼らの毛並みはただ艶やかという次元を越え、大宇宙のいかなる物理・魔法法則すらも完全に弾き返す『神話級の絶対防壁』のような神秘の輝きを放ちながら、ただの犬猫のように無防備に腹を見せて寝転がっている。彼らが心地よさそうに寝返りを打つだけで、周囲の空間の重力や時間の流れすらも最適化され、万病を癒す超高濃度のパワースポットと化しているのだ。
その光景を見て、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)】の元・大賢者ゾルタンが、縁側に腰掛けながら静かに推測を口にした。
「……おそらく、社長の力が影響しているのだろう。社長は『全知全能の神仙』そのもの。そんな彼が、我々社員や大家の面々、そしてペットの魔物たちと『これからもずっと一緒に、楽しく賑やかに暮らしたい。誰も欠けてほしくない』と無意識に願った結果、我々に社長の『不老不死に近い力』が少しずつ分け与えられているのだ」
「な、なんと……! 我々の体調が異常なまでに絶好調なのも、肉体が完全な不老の状態へと自動アップデートされ続けているのも、全ては……」
「左様。社長が寂しくならないように、そしてこの平穏な日常が永遠に続くように、世界が我々の体を『不老不死』に近い状態へと書き換えているのだ。老いはなくなり、寿命という概念すら消滅し、細胞の一つ一つが宇宙の真理に直結している。我々が何もしていなくとも戦闘力や体力が日々限界突破していくのは、全て我が黄昏の守護者の最高の手厚い福利厚生というわけさ」
ゾルタンの言葉に、一同はアルドの底知れぬ愛と規格外の力に戦慄しながらも、深い安堵と温かい絆を感じて微笑み合った。
そんな穏やかな閑話が交わされる中、日々のメンテナンス業務と家事への情熱を燃やすアルドが、キッチンで腕を振るっていた。そこからは、魂の最深部を震わせるような、濃厚な出汁の香りと、炊きたてのご飯の暴力的なまでの香ばしさが漂い、城塞の廊下を満たしていく。
「よし! 今日のメインは、大家の神々や勇者パーティのみんなも一緒に食べる、朝から頭をスッキリさせる『極上・幻獣真鯛の黄金出汁茶漬け〜特製・天界梅干しと塩昆布を添えて〜と、世界樹のキノコを使った熱々茶碗蒸し』だ! まずは、脂が限界まで乗った幻獣真鯛の身を、神仙の特製胡麻ダレでねっとりと漬け込む。そして、炊きたての神仙米の上にたっぷりと乗せ、その上から、幻獣昆布と天界鰹節で引いた黄金色に輝く極上の熱々出汁を、ジャーッとかける! 真鯛の表面がほんのり白く霜降りになり、出汁の香りが一気に弾ける! その横で、世界樹のキノコと天界卵を使った、プルプルの茶碗蒸しを添える。……出汁が冷めないうちに完成だよ!」
アルドがエプロン姿で、圧倒的な香ばしさを放つ特大のお盆をダイニングテーブルに運ぶと、不老の話題で盛り上がっていた勇者たちや魔物たちまでもが、その暴力的なまでの食欲をそそる匂いに引き寄せられ、目を輝かせて席に着いた。
この極上モーニング、一口かぶりつけば幻獣真鯛の圧倒的なアミノ酸と極上の出汁が全身の魔力回路を限界突破させ、天界梅干しのクエン酸が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、不老不死に近づきつつある体にさらなる多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・至高の和食ブレックファスト』である。
「うむ……! この熱々の出汁茶漬けをサラサラと口に運んだ瞬間に広がる、濃厚な胡麻ダレと真鯛の甘みのビッグバン! 梅干しの爽やかな酸味が鯛の脂を完璧に引き立て、すかさず茶碗蒸しを頬張れば、大地のキノコの旨味が口の中を最高にリセットしてくれる! 美味さのあまり魂が魔界の果てまで吹き飛びそうになる無限の食欲ループ! 全身の細胞が歓喜の声を上げて底知れぬパワーが湧き上がるこの多幸感、我が最高福利厚生責任者の職務が、王都の超高級料亭で至福の朝食を貪る大貴族のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
サタナスが、お椀を持つ両手を震わせ、神々と肩を並べて極上の朝食に感涙して咽いでいた。
――そして、至福の朝食が終わり、食後の極上緑茶が振る舞われた後。
日だまり郷の広々としたリビングで、アルドは腕を組みながら、少しだけ退屈そうな、しかし達成感に満ちた表情で口を開いた。
「ねえ、みんな。ちょっと気付いたんだけど……ここ最近、僕たちが世界中でやってきた『ダンジョンのガンコな汚れ掃除(剪定)』のおかげで、もうお手入れが必要な危険なダンジョンが一つも無くなっちゃったんだよね。世界中の迷宮は全部、安全でクリーンな資源を自動供給してくれる『最新式エコ・インフラ設備』にリフォーム完了しちゃった。つまり、僕たちの『便利屋としての出張メンテナンス業務』が、とりあえず一区切りついちゃったみたいなんだ」
アルドの言葉に、役員たちは深く頷いた。
「ええ、社長の仰る通りです」
【最高財務責任者(CFO)】のアーキヴァルが、うやうやしく分厚いファイルを開いた。
「現在、世界中の気候、水源、電力、木材、食品など、あらゆる生活に必要な資源は、社長がリフォームした元・ダンジョンから、完全自動かつ無限に、そして安全に供給されています。スタンピードの危険性は文字通り『ゼロ%』。世界はかつてないほどの平和と、究極の資源飽和によるデフレ(価格破壊)の只中にあります。我が『黄昏の守護者』は、世界のインフラを完全制覇したと言っても過言ではありません」
「ダンジョンって、僕たちの生活を支える大事な設備だったからね。放置してスタンピードを起こす前に全部綺麗にお掃除できて本当に良かったよ。……でもさ」
アルドは少しだけ寂しそうに首を傾げた。
「これから僕たち、便利屋として何をすればいいのかな? 毎日お家のお掃除やご飯作りも楽しいけど、もっとみんなが驚くような、ワクワクする『大きな仕事』がしたいなあって思って」
その言葉を待っていたかのように、大公レオハルトが立ち上がり、バサッ!と巨大な図面をテーブルに広げた。
「アルド殿。その『次なる大きな仕事』について、我々から一つ、緊急の提案がございます。……アルド殿は、この『日だまり郷』とその周辺の広大な元・魔の森の敷地を使って、究極の【都市開発(スマートシティ計画)】を行ってみる気はありませんか?」
「都市開発? 僕が、町を作るの?」
「いかにも! 現在、世界中から無限に安全な資源が送られてくるこの日だまり郷は、いわば『世界のインフラの中心』となっております。しかし、現在この場所はただの城塞と庭園があるのみ。ならば、この膨大な資源と、アルド殿の全知全能の建築・生活サポート技術をフル活用し、我々『黄昏の守護者』の社員、大家の神々、そして世界中の人々が安全で快適に暮らせる、夢の超巨大エコ・スマートシティをゼロからプロデュースするのです!」
その提案に、アルドの目がキラキラと輝き始めた。
「それ、すっごく面白そう! 単なるお家のリフォームじゃなくて、町全体をまるごと『超快適でピカピカな生活空間』にするってことだね! よーし、便利屋の腕が鳴るぞ! 早速『都市計画』の緊急会議だ! みんな、どんな町を作りたいか、意見を出して!」
社長の号令と共に、【黄昏の守護者】の役員たちと大家の面々による、世界最強の頭脳と力を持った者たちの白熱の都市計画会議がスタートした。
「まずは『何を作るか』ですね、社長」
【最高開発・解体執行責任者(CDO)】のレイヴンが、斧を机に置きながら不敵に笑う。
「俺としては、周囲の不要な岩山や森の残骸を一気に『解体・整地』し、巨大な区画を作ります。そこに、無限の熱源と純水インフラを活用した『世界最強の大江戸温泉郷(超巨大スーパー銭湯)』を作りましょう。戦闘訓練後の汗を流す場所が必要です」
「温泉! いいね、大きなお風呂は生活の基本だよ! サウナや岩盤浴も完備しよう!」
「では、私は【環境浄化・概念調律最高責任者(CEO)】として、都市の景観と環境を提案しますわ」
エルミナが優雅に手を挙げる。
「都市の至る所に、水魔迷宮から引いた純水路を張り巡らせ、四季折々の天界の花が咲き誇る美しい公園を作りましょう。また、空気は常に浄化魔法で森林浴レベルのマイナスイオンに保たれるようにしますわ。排気ガスなどという不衛生なものは一切排除します」
「素晴らしい! 空気清浄機がいらない、天然の空気清浄都市だね!」
「防犯面は俺に任せてもらおう」
【絶対防壁・空間隔離最高責任者(CSO)】のシノンが静かに告げる。
「都市の周囲には、どんな外敵も、災害も、神の怒りすらも弾き返す『神仙級・完全オートロック式防壁結界』を常時展開する。犯罪を犯そうとする悪意を持った者は、都市に入った瞬間に結界の力で強制的に『反省室(無菌空間)』へと転送されるシステムを組み込もう。これで警察すら不要な、完全犯罪ゼロの都市になる」
「完璧な防犯システムだ! みんなが鍵をかけなくても安心して眠れる町になるね!」
「では、インフラと経済の観点から」
アーキヴァルが眼鏡を光らせる。
「世界中のダンジョンから自動供給される木材、鉱物、食品は、都市の中央に建設する『巨大全自動物流センター(巨大スーパーマーケット)』に直結させます。そして、この都市では『労働』という概念を完全に排除します」
「えっ、労働を排除するの?」
「はい。全ての危険な作業や単純労働は、社長の神仙ゴーレムと全自動インフラが肩代わりします。市民はただ『自分の好きなこと(趣味や芸術、研究)』に没頭するだけで、必要な生活物資やベーシックインカムが自動的に提供される仕組みを構築するのです。つまり、ブラックな労働環境や、貧富の差による階級格差を、都市のシステムレベルで『完全に取り除く』のです」
「おおお……! つまり、みんなが毎日笑顔で、好きなことだけをして生きていける夢のような町内会ができるんだね!」
アルドはポンッと手を叩いた。
「さらに、娯楽も充実させねばならんぞ!」
サタナスが筋肉をアピールしながら叫ぶ。
「広大な『全自動エンタメ闘技場』や、世界樹の食材を使った『超巨大屋台街』も必須だ! 毎日がお祭りのような、多幸感に溢れた都市にするのだ!」
「いいわね! 私は最高級のスイーツがいつでも食べられるカフェ通りを希望するわ!」
創造神も目を輝かせて賛同する。
会議は深夜まで白熱し、詳細な図面が次々と完成していった。
取り入れるものは、「全自動のクリーンインフラ」「完全無欠の防犯・防災結界」「世界最高の温泉と娯楽施設」「美しい自然景観」。
取り除くものは、「貧富の差」「犯罪」「ブラックな労働」「環境汚染」「病気と寿命の概念(パワースポット化により)」。
「よし、決まりだ!」
アルドは完成した壮大な都市計画図を高く掲げた。
「明日から、この日だまり郷の周辺を開拓して、僕たち『黄昏の守護者』がプロデュースする、世界で一番安全で、清潔で、楽しくて、誰もが笑顔になれる『日だまりエコ・スマートシティ(仮)』の建設をスタートするよ! ただの便利屋の、人生最大のDIY(大工仕事)の始まりだ!」
最強の役員たちと神々は、社長の号令に力強く応えた。
世界を救い尽くした彼らの次なるターゲットは、世界で最も平和な『究極の理想郷』を、自らの手でゼロから作り上げることになったのである。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)兼・神仙社史編纂室長】の元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな正史のページに極めて簡素な文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。世界中のダンジョン剪定完了につき、次期事業として「都市開発」の緊急会議実施。日だまり郷周辺のスマートシティ化計画が可決。労働と犯罪を排除し、完全なインフラと温泉を備えた都市の建設を次回より開始予定。異常なし。以上。』
ゾルタンはもはや数秒で記録を終えた。ダンジョンの脅威が完全に去った今、社長の目は「世界を救う」ことから「世界をより良くリフォームする」ことへと完全にシフトしている。大宇宙の歴史上、これほどまでにスケールの大きな『町内会作り』は存在しないだろう。
ゾルタンが深い満足感と共にペンを置き、これからの多忙で楽しい日々に安堵のため息をついたその時。ドアの向こうから「みんな、会議お疲れ様! 今日の夜食は、頭を使ったあとに染み渡る『特製・大精霊の塩むすび〜星屑の豚汁を添えて〜』だよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「全知全能の神が握る塩むすびは、ことのほか塩加減と米の甘みが、不老不死に近づいた五臓六腑に染み渡ろう」とぼやきながらも、この上ない幸福な笑みを浮かべて立ち上がった。
最強の便利屋は、全ての大いなる脅威をメンテナンスし終え、ついに自らの手で『究極の日常』を体現する都市の建設へと乗り出す。
神仙の力を自覚し、新役職で完全体となったクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に世界最高の不動産開発・都市プロデュース事業へと進出し、いかなる邪悪も入り込めない究極の平穏なる企業伝説の新たな1ページを、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!




