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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第250話:【閑話】世界平和と究極のデフレの到来。安全すぎるオートメーション・ダンジョンと素材飽和に嬉しい悲鳴を上げ、平和すぎて商売あがったりだと嘆く各界の皆様

第250話:【閑話】世界平和と究極のデフレの到来。安全すぎるオートメーション・ダンジョンと素材飽和に嬉しい悲鳴を上げ、平和すぎて商売あがったりだと嘆く各界の皆様(総合ライフサポート企業がもたらした究極のインフラ改革の影響)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝。そこは、大宇宙の根源たる神仙へと完全覚醒したアルドが、あえて「ただの便利屋」としての日々を選択し固定したことで、もはや何者にも侵し得ぬ絶対的な聖域と化していた。

 庭先では、木枯らしが吹き始める季節でありながら、日だまり郷の中だけは春のような心地よい陽気に包まれていた。かつて全宇宙を滅ぼそうと幾度も襲い掛かってきた創造神や天界の神々、そしてすっかり常連の大家さん候補として定着した勇者パーティの面々が、縁側で極上の緑茶をすすりながら、自らとペットたちに起きている奇妙な現象について、今日も顔を見合わせていた。

「……なあ。最近、本当に俺の体がどうもおかしいんだ。昨日の夜、試しに寝ずに魔界の深淵で千日手のような剣の素振りをしてみたんだが、疲労感どころか、振れば振るほど筋肉が勝手に『神の領域』へと再構築されていく。しかも、髪の毛が一切抜けなくなり、肌のツヤが王都のどの貴族令嬢よりも輝いているんだが」

 勇者が、己の引き締まった腕を見つめて首を傾げた。彼の肉体は歴戦の傷跡が完全に消え去り、まるで神々が鍛え上げたオリハルコンのようにツヤツヤと輝き、底なしの生命力が溢れ出している。

「ええ。私もですわ。昨日など、庭の枯れ葉を掃除しようと拾い上げた瞬間、私の指先から溢れ出す過剰な生命力に当てられて、枯れ葉が一瞬で芽吹き、世界樹の若葉へと変貌してしまいましたの。美容液どころか、ただ呼吸しているだけで世界を癒してしまうような、絶対的な『不変の美と生命』に固定されているのを感じますわ」

 創造神が驚きと共に頷く。

 縁側で丸くなっている神竜ポチと星狼シロに目を向けると、彼らの毛並みはただ艶やかという次元を越え、大宇宙のいかなる物理・魔法法則すらも完全に弾き返す『神話級の絶対防壁』のような神秘の輝きを放ちながら、ただの犬猫のように無防備に腹を見せて寝転がっている。彼らが心地よさそうに尻尾を振るだけで、周囲の空間の魔素が極限まで浄化され、万病を癒す超高濃度のパワースポットと化しているのだ。

 その光景を見て、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)】の元・大賢者ゾルタンが、縁側に腰掛けながら静かに推測を口にした。

「……おそらく、社長アルドの力が影響しているのだろう。社長は『全知全能の神仙』そのもの。そんな彼が、我々社員や大家の面々、そしてペットの魔物たちと『これからもずっと一緒に、楽しく賑やかに暮らしたい。誰も欠けてほしくない』と無意識に願った結果、我々に社長の『不老不死に近い力』が少しずつ分け与えられているのだ」

「な、なんと……! 我々の体調が異常なまでに絶好調なのも、肉体が完全な不老の状態へと自動アップデートされ続けているのも、全ては……」

「左様。社長が寂しくならないように、そしてこの平穏な日常が永遠に続くように、世界が我々の体を『不老不死』に近い状態へと書き換えているのだ。老いはなくなり、寿命という概念すら消滅し、細胞の一つ一つが宇宙の真理に直結している。全ては、我が黄昏の守護者の最高の手厚い福利厚生というわけさ」

 ゾルタンの言葉に、一同はアルドの底知れぬ愛と規格外の力に戦慄しながらも、深い安堵と温かい絆を感じて微笑み合った。

 そんな穏やかな閑話が交わされる中、日々のメンテナンス業務と家事への情熱を燃やすアルドが、キッチンで腕を振るっていた。そこからは、魂の最深部を震わせるような、芳醇な出汁の香りと、香ばしく炊き上がるご飯の暴力的なまでの匂いが漂い、城塞の廊下を満たしていく。

「よし! 今日のメインは、大家の神々や勇者パーティのみんなも一緒に食べる、朝から優しく胃腸を温める『幻獣真鯛の極上胡麻だれ茶漬け〜大精霊の森の香味野菜を添えて〜と、天界卵のふんわり厚焼き玉子』だ! まずは、脂が限界まで乗った幻獣真鯛を薄造りにし、神仙の特製胡麻だれでねっとりと漬け込む。そして、炊きたての神仙米の上にたっぷりと乗せ、大精霊の森で採れたミョウガや大葉を散らすんだ! そこへ、幻獣昆布と天界鰹節で引いた、黄金色に輝く極上の熱々出汁を、ジャーッとかける! 真鯛の表面がほんのり白く霜降りになり、胡麻の香りが一気に弾ける! その横で、天界の卵をたっぷりの出汁で巻き上げた、プルプルの厚焼き玉子を添える。……出汁が冷めないうちに完成だよ!」

 アルドがエプロン姿で、圧倒的な香ばしさを放つ特大の和食膳をダイニングテーブルに運ぶと、不老の話題で盛り上がっていた勇者たちや魔物たちまでもが、その暴力的なまでの食欲をそそる匂いに引き寄せられ、目を輝かせて席に着いた。

 この極上モーニング、一口かぶりつけば幻獣真鯛の圧倒的なアミノ酸と極上出汁が全身の魔力回路を限界突破させ、香味野菜の薬効成分が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、不老不死に近づきつつある体にさらなる多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・至高の出汁茶漬けブレックファスト』である。

「うむ……! この熱々の出汁茶漬けをサラサラと口に運んだ瞬間に広がる、濃厚な胡麻だれと真鯛の甘みのビッグバン! 香味野菜の爽やかな香りが鯛の脂を完璧に引き立て、すかさず厚焼き玉子を頬張れば、噛むほどに溢れ出す黄金の出汁が口の中を最高にリセットしてくれる! 美味さのあまり魂が魔界の果てまで吹き飛びそうになる無限の食欲ループ! 全身の細胞が歓喜の声を上げて胃の底から温まるこの多幸感、我が最高福利厚生責任者の職務が、王都の超高級老舗旅館で至福の朝食を貪る大貴族のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 サタナスが、お椀を持つ両手を震わせ、神々と肩を並べて極上の朝食に感涙して咽いでいた。

 ――そんな、神々や世界の理すらも平伏す「最強の日常」が『日だまり郷』で営まれている一方。

 アルドたち【黄昏の守護者】が、世界中の危険なダンジョンを「床下の湿気取り」「屋根裏の雨漏り修理」「庭の草刈り」「換気扇の掃除」「押し入れのカビ取り」「窓ガラスの結露拭き」「電子レンジの焦げ落とし」「風呂場のヘドロ掃除」として次々と『剪定メンテナンス』し、全てを【全自動・広域クリーンインフラ】へとリフォームしてしまった結果。

 王都をはじめとする世界中の社会構造には、かつてないほどの『激変』が起きていた。

 ***

 王都・冒険者ギルド本部。

 かつては、血の匂いと硝煙、そして死と隣り合わせの悲壮感を漂わせた屈強な戦士や魔法使いで溢れ返っていたその場所は、現在、信じられない光景に変貌していた。

「おじちゃーん! お母さんに頼まれて、『暗黒と腐土の深淵迷宮(元・世界最凶の蟲ダンジョン)』の第50層に行って、お夕飯用の『極上幻獣キノコ』と『最高級腐葉土』採ってきたよー! はい、これ納品!」

「あ、あたしは『氷雪と吹雪の白銀迷宮(元・絶対零度の死地)』の最深部で、『特級氷魔法石』をカゴいっぱい拾ってきたわ! お小遣いちょうだい!」

 冒険者ギルドの受付カウンターに並んでいるのは、歴戦の勇士ではなく、近所に住む5、6歳の子供たちや、割烹着姿の主婦たちであった。

 彼らはまるで裏山の公園にドングリを拾いに行くような気軽さで、かつては国軍が総出で挑んでも半壊した超危険地帯ダンジョンへとピクニック感覚で出入りし、最高ランクの素材をエコバッグや虫取りカゴに詰めて納品しに来ていたのである。

「あ、ああ……ありがとうね、ボク。ええと、特級幻獣キノコが50キロと、特級氷魔法石が100個ね……はい、買い取り代金の銀貨10枚だよ……」

 ギルドマスターである白髭の屈強な老人は、子供たちに小遣いを渡しながら、頭を抱えて机に突っ伏した。

「……どうしてこうなった。かつては、Aランクパーティが三日三晩の死闘の末、半壊しながら持ち帰った『特級氷魔法石』が、今や子供の放課後のお小遣い稼ぎや、主婦のパートタイム労働で無限に持ち込まれるだと……!?」

 無理もない。アルドたちが全てのダンジョンを「エコ・コントローラー付きの全自動インフラ」にリフォームしてしまったため、迷宮内には凶暴な魔物は一匹も発生せず(全て安全な『防虫・防汚コーティング』により無害化されている)、常に適温・適湿のエアコンが効いた安全で清潔な通路が続き、最深部に行けばオートメーション化されたシステムから、枯渇することなく特級素材がポンポンと排出されるようになっていたのだ。

 毒の沼地は「綺麗な浄水プール」になり、灼熱の火砕流は「クリーンなガスコンロの火口」になり、絶対零度の吹雪は「快適な冷蔵ルーム」になっていた。

 冒険者の仕事は「命懸けの魔物討伐と素材採取」から、「安全な工場インフラへの定期的な回収業務(肉体労働ですらない)」へと完全にシフトしてしまったのである。

「ギルドマスター! 倉庫がいっぱいです! 『紅蓮の炎魔法石』も『特級幻獣絹シルク』も『極上魔宝木』も、無限に安全に採れるせいで、ギルドの倉庫が完全に飽和状態です! 嬉しい悲鳴を通り越して、在庫管理の帳簿がパンクしてます!」

 受付嬢が半泣きで報告書を束ねて持ってくる。

「あああ……わかっとる! ダンジョンが生活の一部として完全に安全なインフラになったおかげで、冒険者の死亡率はゼロ%になった! それは素晴らしいことだが、クエストの難易度が全部Fランク(おつかい・荷物運び)になっちまった! これじゃあ、冒険者ギルドじゃなくてただの『運送業の仲介所』じゃないかあああ!!」

 ギルドマスターの悲鳴が、平和すぎる王都の空に虚しく響き渡った。

 ***

 一方、王都の裏路地にある老舗の武器屋・防具屋。

 かつては、冒険者たちがなけなしの金をはたいて少しでも生存率を上げるために業物わざものを求め、店主が自慢の逸品を高値で売り捌いていた活気ある店内は、今やすっかり閑古鳥が鳴いていた。

「……信じられるか? うちの家宝である『オリハルコンの聖剣』と『火竜の鱗の鎧』が、近所の八百屋の大根より安い値段で叩き売りされてるんだぜ……」

 店主のドワーフが、ヤケ酒をあおりながらカウンターに突っ伏していた。

「無理もねえさ。誰もダンジョンで魔物に襲われねえんだから、武器なんて必要ねえし、防具だって傷一つ付かねえ。おまけに……」

 隣の道具屋の親父が、ため息をつきながら一枚のチラシを取り出す。

「素材の価格破壊がエグすぎるんだよ。『特級氷魔法石』や『特級炎魔法石』なんて、かつては金貨百枚で取引されてた超レア素材だったのに、今じゃ『全自動換気・冷却インフラ(ダンジョン)』から毎日何トンもドロップするせいで、銅貨一枚で山ほど買えちまう。俺たちが命懸けで仕入れていた素材の価値が、ただの『その辺の石ころ』レベルに暴落したんだ」

 アルドの完璧すぎる「資源枯渇対策」の副作用である。

 安全な環境で無限にクリーンな素材が生み出されるようになったため、需要と供給のバランスが完全に崩壊し、究極のデフレ(価格破壊)が起きていた。

「商売あがったりだ! これじゃあ、武器屋なんて畳んで、ギルドで『ダンジョン素材の箱詰めと運搬のパート』に出たほうがよっぽど稼げるじゃねえか!」

 ドワーフの親父が叫ぶように酒を飲み干した。武器も防具も、今や「コスプレの衣装」か「農作業用のクワの代わり」としてしか売れない時代が到来してしまったのである。

 ***

 そして、王城の軍務大臣室。

 国家の防衛と治安維持を担う軍務大臣は、立派な執務机の上で、真っ白な灰のように燃え尽きていた。

「……大臣。本日の報告です。隣国との国境警備ですが、『特級魔宝木とクリーン果実の巨大オートメーション庭園(元・樹海迷宮)』から供給される無限の食料と資源のおかげで、隣国との資源争いが完全に消滅しました。向こうの軍も『もう戦争なんて馬鹿らしい、一緒に果実の収穫祭をやろう』と言ってきており、両国間に完全な平和条約が結ばれました」

 副官が、淡々と平和すぎる報告を読み上げる。

「……そうか。素晴らしいことだな」

「さらに、国内のダンジョンからのスタンピードの脅威もゼロとなりました。すべての迷宮が最新式の『エコ・コントローラー』で完璧に制御されており、魔物の発生率は0%。我が国の精鋭騎士団の現在の主な任務は……『ダンジョンから排出される極上キノコとシルクの箱詰め・梱包作業』、および『子供たちの採取遠足の引率』となっております」

「……」

「騎士団長が『筋肉を持て余して辛い。剣を振る機会がないため、せめて梱包作業を素振り代わりにしている』と泣いておりました。国家予算の軍事費も9割削減され、すべて農業と福祉インフラに回されることが決定しました」

 軍務大臣は、窓の外の平和すぎる王都の景色を眺めながら、深く、深くため息をついた。

「……戦争も無くなり、魔物の脅威も無くなり、ダンジョンは世界最高の安全なインフラ設備となった。民は豊かになり、誰も飢えることはなく、子供が笑顔で道を歩ける。これこそが、我々が長年夢見た『究極の理想の国家』であるはずだ」

 大臣の目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。

「だが……だが!! 平和すぎてやることがない!! 軍の存在意義が『農協の出荷手伝い』に成り下がるとは、誰が想像した!! ああ、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』よ……お前たちは、世界を救いすぎたのだ!! 平和すぎて、逆に辛い!!」

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)兼・神仙社史編纂室長】の元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな正史のページに極めて簡素な文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。閑話。社長の完璧なダンジョン剪定とインフラリフォームにより、世界の死亡率がゼロとなり、究極のデフレと平和が到来。冒険者ギルドは運送業に、武器屋は倒産寸前に、軍部は農協の下請けとなる。各界から「平和すぎて商売あがったり」との嘆き多数。異常なし。以上。』

 ゾルタンは記録を終え、窓の外を眺めた。世界を脅かす大いなる災厄は、社長であるアルドの前では「ただの家事と設備のメンテナンス」として処理され続け、結果として大宇宙の脅威は完全に無害な全自動システムと化し、世界には究極の平和と安全が訪れてしまった。

 ゾルタンが深い満足感と共にペンを置いたその時。ドアの向こうから「みんな、おやつができたよ! ギルドから大量に届いた特級素材で作った『特製・大精霊のフルーツパフェ〜星屑のシロップを添えて〜』だよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「全知全能の神がもたらした平和の代償が、世界中の職業のアイデンティティ崩壊とはな。だが、このパフェの甘みは、不老不死に近づいた五臓六腑に染み渡ろう」とぼやきながらも、この上ない幸福な笑みを浮かべて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの家事と定期メンテナンス」は、世界滅亡の危機を完全に終わらせただけでなく、世界中の人々の労働環境と経済を根底から覆し、平和すぎるがゆえの嬉しい悲鳴を上げさせていた。

 神仙の力を自覚し、完全体となったクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に世界中の次元迷宮防衛と資源インフラの覇権を完全に握り、いかなる邪悪も日常の持続可能なメンテナンス業務として永遠に葬り去る、究極の平穏なる企業伝説の新たな1ページを、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜

https://ncode.syosetu.com/n5506ma/

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