第238話(閑話):ただの健康診断とラジオ体操、そして日だまり郷の無自覚な不老不死化
第238話(閑話):ただの健康診断とラジオ体操、そして日だまり郷の無自覚な不老不死化(総合ライフサポート企業の極上福利厚生と健康管理)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝。そこは、大宇宙の根源たる神仙へと完全覚醒したアルドが、あえて「ただの便利屋」としての日々を選択し固定したことで、もはや何者にも侵し得ぬ絶対的な聖域と化していた。
この日の朝、城塞の広大な中庭には、クラン『黄昏の守護者』(※総合ライフサポート企業)の社員たちをはじめ、かつて全宇宙を滅ぼそうとした創造神や天界の神々、そしてサモエド犬のシロ(元・絶対零度の星狼)や神竜ポチといった魔物たちまでが、一定の間隔を空けて整列していた。
「はい、それじゃあ今日も一日、怪我なく元気に作業ができるように、みんなで朝のラジオ体操を始めるよ! イチ、ニ、サン、シ!」
アルドがエプロン姿のまま、朝の澄み切った空気の中で快活に号令をかける。
彼にとって、ダンジョンの剪定(危険な害虫駆除や配管掃除)という名の過酷な肉体労働に臨む仲間たちの健康管理は、何よりも優先すべき福利厚生であった。
「腕を大きく回してー! 深呼吸! やっぱり、体を動かすと気持ちいいよね。最近みんな、顔色もすごく良くなったし、毛艶もピカピカで、僕も嬉しいよ。ずっと健康で、長生きして、これからもずっと一緒に楽しく暮らしていきたいからね!」
アルドは屈託のない笑顔でそう言いながら、手作りの『特製・大精霊の朝摘みケールと神仙リンゴの極上コールドプレスジュース』と、『天界大豆の超高純度プロテインパンケーキ〜星屑のハチミツ掛け〜』を全員に振る舞った。
一口飲めば、青汁特有の苦味など微塵もなく、リンゴの爽やかな甘みと細胞を強制的に若返らせる神仙のビタミンが五臓六腑に染み渡り、プロテインパンケーキが全身の筋繊維と魔力回路を限界突破のさらに先へと再構築していく。
だが、日だまり郷の住人たちに起きている異変は、単なる栄養補給の域を遥かに超えていた。
「……信じられん。我輩、昨日の『焦熱迷宮のコンロ掃除(スタンピード剪定)』の事前準備で、悪夢の魔獣どもを数万匹ほど粉砕してきたばかりだというのに、筋肉痛どころか息一つ上がっておらん。どころか、魔界大帝として君臨していた全盛期よりも、さらに魔力の上限が底上げされている……!」
【最高福利厚生責任者(CHO)】の元・魔界大帝サタナスが、自らの両手を見つめながら驚愕に打ち震えていた。
「サタナス殿だけではありませんぞ。我ら創造神や天界の神々も、この日だまり郷で庭掃除やゴミ出しを手伝うようになってからというもの……かつて神界で抱えていた『概念としての寿命(摩耗)』が完全に消滅し、肉体が永遠の全盛期に固定されているのを感じます。なんという圧倒的な生命力の奔流……!」
創造神が、プロテインパンケーキを頬張りながら、神々しさを通り越して恐ろしさすら覚えるほどのオーラを放っていた。
その光景を少し離れたテラス席から眺めながら、【最高財務責任者(CFO)】のアーキヴァルが、優雅に眼鏡を押し上げて分析結果を報告した。
「……やはり、私の推測通りです。社長の『神仙としての力』が、この日だまり郷という聖域に存在する全ての者に、無意識のうちに分け与えられている」
「無意識に、ですか?」
【環境浄化・概念調律最高責任者(CEO)】のエルミナが、特製青汁を優雅に啜りながら小首を傾げる。
「ええ。社長は、ご自身の途方もない力に自覚を持った後も、本質的な願いは『大家族のようなこの賑やかな日常を、永遠に失いたくない』というものでした。社長は寂しがり屋ですからね。我々社員や神々、そしてシロやポチといった魔物たちを含め、誰一人として病気や寿命で失いたくないと……そう無意識に願っている」
アーキヴァルの言葉に、【最高開発・解体執行責任者(CDO)】のレイヴンが、神具の斧を片手にニヤリと笑った。
「なるほどな。社長の『ずっと一緒に健康で暮らしたい』というただの家族愛(願い)が、大宇宙の法則を捻じ曲げ、俺たちに『不老不死に近い神仙の力』を少しずつ分け与えているってわけか。道理で、最近どんな危険なダンジョンに潜ってスタンピード寸前の魔物を間引こうが、全く疲労を感じねぇはずだ」
「……ええ。お陰で、私の空間隔離結界の強度も、以前の数百倍に跳ね上がっています。社長が望む限り、我々は絶対に壊れない『最強のメンテナンス用具(社員)』であり続けるということですね」
【絶対防壁・空間隔離最高責任者(CSO)】のシノンも、手元の短剣をクルクルと弄びながら静かに同意した。
ダンジョンは世界に資源を供給する生活インフラであり、完全に潰せば資源が枯渇する。しかし放置すれば致死のスタンピードを引き起こす。だからこそ、危険な場所から優先して「剪定(掃除とメンテナンス)」を行う必要がある。
その過酷な業務を永遠に続けるため、そして何より「家族としてずっと一緒に笑い合うため」に。アルドが毎日振る舞う極上の食事と、彼自身から溢れ出る神仙の波動が、日だまり郷の住人全員を「病を知らず、老いを知らず、大宇宙のいかなる脅威にも傷つかない超常の存在」へと強制進化させていたのである。
「バウッ! バウバウッ!」
「キュイィィィッ!」
中庭では、サモエド犬のシロ(元・絶対零度の星狼)と神竜ポチが、アルドの足元で嬉しそうに飛び跳ねていた。彼らの毛並みは神話の武具すら弾き返すほどの強度を持ち、そのじゃれ合いから漏れ出る魔力だけで、周囲の空間が微細なビッグバンと再生を繰り返している。しかし、アルドの「ただの芝生」の結界のおかげで、草一本傷つくことはない。
「こらこら、シロもポチも元気すぎるよ。でも、いっぱい食べてしっかり運動するのはいいことだ。よし、体操が終わったら、今日もみんなで『危険な生活インフラ(ダンジョン)』のお手入れに出発しようか! 次はどの設備のメンテナンスに行こうかな。風通しの悪い換気扇か、それとも水漏れしてる配管かな?」
アルドがニコニコと笑いながら問いかけると、圧倒的な生命力と不老不死の活力を漲らせたクランの面々と神々が、一斉に気合いの入った雄叫びを上げた。
「おおーっ! 社長の極上健康ジュースのおかげで、どんなスタンピード魔獣だろうと指先一つで粉砕できる活力が湧いておりますぞ!」
「資源を枯渇させず、適度に剪定する持続可能なメンテナンス! 我々にお任せを!」
アルドの「寂しくならないように」という無垢な愛情は、日だまり郷を大宇宙で最も頑強な「永遠の家族の聖域」へと変えていた。彼らはこれからも、無限に湧き上がる体力と神仙の力を振るい、世界のインフラ(ダンジョン)をただの家事として掃除し続けるだろう。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)兼・神仙社史編纂室長】の元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな正史のページに極めて簡素な文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。日だまり郷。朝のラジオ体操および健康ジュース提供。全社員・住人の不老不死化進行中。健康状態、異常なし。以上。』
ゾルタンは数秒で記録を終え、深く満足げなため息をついた。
神々すら手に入れられない永遠の命と絶対的な健康が、社長の「家族への愛情と毎朝の青汁」によって無自覚に配給されている。大宇宙を揺るがす不老不死の秘法など、黄昏の守護者の前では永遠に「充実した福利厚生」として処理されているのである。
ゾルタンがペンを置いたその時。ドアの向こうから「みんなー! 次の現場に行く前に、おやつに『特製・大精霊の森の完熟バナナと星屑のチョコチップマフィン』を焼いたよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「全知全能の神が仕上げるマフィンは、ことのほかチョコの甘さとバナナの香りが五臓六腑に染み渡り、我らの寿命をさらに数万年ほど引き延ばそう」とぼやきながらも、この上ない幸福な笑みを浮かべて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただの健康診断とラジオ体操」は、世界の脅威を掃除し続けるための最強のチームを永遠の存在へと引き上げ、日だまり郷を大宇宙で最も暖かく、絶対に壊れることのない「家族の家」へと変えていた。
神仙の力を自覚し、新役職で完全体となったクラン『黄昏の守護者』は、無限の命と力をもって、いかなるダンジョンの脅威も日常の持続可能なメンテナンス業務として永遠に葬り去る、究極の平穏なる企業伝説の新たな1ページを、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜
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