第183話:ただの壁紙の張り替えとカビ取りと、浸食の腐界粘菌の強制全自動広域空間浄化・無限クリーンルームインフラ化(総合ライフサポート企業の内装・ハウスクリーニングメンテナンス業務)
第183話:ただの壁紙の張り替えとカビ取りと、浸食の腐界粘菌の強制全自動広域空間浄化・無限クリーンルームインフラ化(総合ライフサポート企業の内装・ハウスクリーニングメンテナンス業務)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝。そこは、大宇宙の根源たる神仙へと完全覚醒したアルドが、あえて「ただの便利屋」としての日々を選択し固定したことで、もはや何者にも侵し得ぬ絶対的な聖域と化していた。
キッチンからは、魂の最深部を震わせるような、極上の肉汁がパチパチと爆ぜる香ばしい音と、甘酢と濃厚なマヨネーズソースの暴力的なまでの匂いが漂い、城塞の廊下を満たしていく。
「よし! 今日のメインは、大精霊の清冽な森で育った『幻獣鶏の極厚チキン南蛮〜世界樹のピクルス入り特製黄金タルタルソースをたっぷりと〜』だ。まずは幻獣鶏の最も柔らかくジューシーなモモ肉を大人の手のひらほどの大きさに切り出し、神仙小麦と天界鶏の卵で作った衣をたっぷりと纏わせる。これを、数百年熟成させた神仙ラードの高温油で、外はカリッと、中は肉汁が爆発するほどジューシーに揚げ上げるんだ! 揚げたての熱々の状態のまま、神仙黒酢と純米醤油、そして大精霊の和三盆を煮詰めた特製の甘酢ダレにジュワァァァッ!と漬け込み、衣の隅々まで旨味を吸わせる。そして主役のタルタルソースは、天界鶏のゆで卵を粗く潰し、世界樹のキュウリと玉ねぎのピクルス、神仙マヨネーズ、そして少しのマスタードを混ぜ合わせた濃厚かつ爽やかな黄金ソースだ。甘酢を吸った極厚チキンの上に、このタルタルソースをまるで雪山のようにドサリと盛り付ける! 付け合わせには、幻獣トマトの冷製ポタージュと、シャキシャキの朝採れキャベツの千切り。……熱々のうちに完成だよ!」
アルドがエプロン姿で、湯気と共に圧倒的な甘酢とマヨネーズの香りを放つ特大のチキン南蛮プレートをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの食欲をそそる匂いに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振っていた。
この極上モーニング、一口かぶりつけば幻獣鶏の圧倒的なタンパク質と肉汁が全身の魔力回路を限界突破させ、甘酢のクエン酸とタルタルソースの酵素が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・至高の肉料理フルコース』である。
「うむ……! この甘酢を吸ってしっとりしつつもサクッとした衣に歯を立てた瞬間に響き渡る快音と、中から溢れ出す熱々の肉汁のビッグバン! そして濃厚なタルタルソースの酸味とコクが鶏肉の旨味を極限まで引き上げ、すかさず炊き立ての神仙米をかき込めば、美味さのあまり魂が魔界の果てまで吹き飛びそうになる無限の食欲ループ! 口の中がこってりとしたところに、冷たいトマトのポタージュを流し込む……! 見るだけで我が最高福利厚生責任者の職務が、街の大衆食堂で至福の定食を頬張る学生のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
【最高福利厚生責任者(CHO)兼・毒見役役員】の元・魔界大帝サタナスが、箸を両手で震わせ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
賑やかな朝食の喧騒が一段落し、食後の極上ストレートティーが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲を囲むのは、完全覚醒した神仙社長を支える、大宇宙最強の経営陣。レイヴン、エルミナ、シノン、アーキヴァル。そして、歴史を刻むゾルタンと外交を司るレオハルト。
「さて、みんな。今日も美味しいご飯を食べてエネルギー満タンだね!」
アルドはニコッと微笑みながら、ふと視線をリビングの壁の隅、ほんの少し剥がれかけている壁紙の方へと向け、少しだけ眉をひそめた。
「……ねえ。今朝からなんだけど、なんだか『壁紙の裏側から、ツンとするような黒カビの嫌な匂いがしてきて、壁紙自体も湿気でブヨブヨに浮き上がってきている』ような違和感を感じたんだ。僕の全知全能のセンサーで見ると、それがはるか北東の『浸食の腐界』から、世界の壁(空間の隔壁)を通じて伝わってきているのがわかる。長年の湿気で壁の内側にタチの悪いカビが繁殖して、古い壁紙がドロドロに溶けかかってる……そんな、早急な壁紙の剥がしとカビ取り、そして新しい壁紙への張り替えが必要な嫌な予感がするんだよね」
神仙としての自覚を完全に取り戻したアルドが感知する「壁紙のカビと剥がれ」。それはすなわち、大宇宙の空間を隔てる次元の壁そのものが破壊され、世界が猛毒の腐敗粘菌と絶望の浸食に呑み込まれようとしているという、世界滅亡レベルの緊急事態のサインである。
しかし、覚醒したアルドは一切パニックにならない。彼の「この世界をカビのない清潔な壁紙で囲まれた、快適な空間にする」という鋼鉄の意志こそが、大宇宙の絶対ルールなのだ。
「社長の『全知全能のセンサー』が捉えた空間隔壁・環境汚染の異常……間違いありませんね」
【最高財務責任者(CFO)兼・グローバル戦略最高責任者】のアーキヴァルが、優雅に眼鏡を押し上げ、分厚いバインダーを開く。
「我が社の情報網にも、今朝早くから大陸北東部の『浸食の腐界』周辺における、極めて深刻な空間の腐敗と猛毒カビの被害報告が届いております。社長の感知された通り、腐界の最深部に長年封印されていた『浸食の腐界粘菌・イロージョン・スライム』が目覚めかけ、大陸全土の空間を致死の猛毒カビで覆い尽くし、全てをドロドロの腐敗物に還そうとしているのです。さらにタチの悪いことに、その粘菌が生み出す『腐食の胞子群ども(※触れるものの質量と魔力を溶かす魔獣群)』が次元の裂け目(壁紙の継ぎ目)から溢れ出し、人々の街に雪崩れ込んでは、全てを絶望のカビの底に沈めようと暴れ回っております」
「なるほど! やっぱり長年お部屋の換気をサボったせいで、壁の裏(腐界)にガンコなカビの親玉(粘菌)がビッシリ繁殖して、そこにタチの悪い胞子が舞って空気を汚してるんだね!」
アルドはバインダーの報告書を見て、プロの内装・ハウスクリーニング業者としての血を騒がせた。
「僕の力ならカビなんて一瞬で消し去れるけど、壁紙の張り替えはやっぱり、古い壁紙をスクレーパーで綺麗に剥がし、下地に残ったカビを強力な漂白スプレーで根こそぎ除菌し、最後に糊付きの新しい壁紙を専用の撫でバケでシワ一つなくピシッと張るのが一番確実でお部屋が明るくなるからね! このまま放置すれば、家(世界)の中がカビの胞子まみれになって息ができなくなっちゃう。安全で清潔な住空間を守るためにも、壁をピカピカに洗浄して、極上のクリーンルームにリフォームしてこよう! よーし、僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役員たちも一斉に凄まじい気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。壁に蔓延る鬱陶しい胞子ども(魔獣群)と、ブヨブヨに腐った古い壁紙の解体・撤去は、この【最高開発・解体執行責任者(CDO)】たる俺にお任せを。邪魔な障害物を専用のスクレーパーとカッターで一つ残さず削ぎ落とし、完璧な『下地処理(壁紙剥がし)』をしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を大型の内装用ヘラのように構えて不敵に笑う。
「ええ。カビが撒き散らすガンコな腐敗臭や猛毒の胞子(※致死の瘴気)は、【環境浄化・概念調律最高責任者(CEO)】の私が、特製の強力防カビ・除菌魔法(※極大の聖水浄化魔法)で一瞬にして概念ごと中和し、清潔な下地環境を整えて差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら頷く。
「……作業中、壁紙剥がしで落ちてくる古い糊や漂白剤の飛沫が周囲の床に飛散しないよう、【絶対防壁・空間隔離最高責任者(CSO)】として、現場の周囲に完璧な内装用マスカーテープと養生シート(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」
シノンが短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 壁紙の張り替えは古い糊のゴミが出るし、強いカビ取り剤を使うから、しっかりシートで床を養生してくれると助かるよ!」
アルドは満足げに頷き、自身の作業着(猛毒の胞子と漂白剤を完全に弾く特製内装メンテ用防水ツナギとゴム手袋、安全靴)に着替え、手には巨大な「事象漂白の神仙カビ取りスプレー」と、プロ仕様の「因果密着の神仙糊付き壁紙」、そして「絶対平滑の神仙撫でバケとジョイントローラー」を握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、この『内装・ハウスクリーニング道具一式』を持っていくよ! 世界の人たちのカビ臭さと壁のシミの悩みを解決するために、邪魔な粘菌を除菌して、お部屋をピカピカにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、内装メンテナンス仕様に改造された魔導軽トラ(自動糊付け機搭載)に乗り込み、空間がドス黒いカビと腐敗臭に覆われつつある大陸北東部の『浸食の腐界』へと向けて出勤したのである。
***
その頃、大陸北東部の『浸食の腐界』の中心部。
世界の空間を腐らせ、全ての存在を永遠の猛毒カビとドロドロの粘液の地獄に沈める悪夢『浸食の腐界粘菌・イロージョン・スライム』が、山のように巨大なブヨブヨの緑黒い体をうねらせながら、傲慢なノイズを響かせていた。
「ジュルルルッ……ブシュゥゥゥッ! 素晴らしいぞ! この星の忌まわしい清浄な空間を全て腐らせ、我がカビの苗床に変える猛毒の胞子さえあれば、地上の生命など一瞬で肺を侵され、永遠の腐敗に絶望する! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な死の浸食を!」
腐界粘菌は、巨大な体表の無数の孔からドス黒い猛毒の胞子を噴き上げ、無数の腐食の胞子群たちを次元の裂け目へと放った。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの世界のどこにも綺麗な空気を吸える場所などないと知れ! さあ、もっとだ! 全ての次元の壁を溶かし、大陸全土を永遠のカビの底に変えよ!」
「我ら浸食の眷属の腐敗力は絶対だ! この猛毒とカビの領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! ドサァッ!!
粘菌が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な腐敗臭が渦巻く腐界のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の猛毒とカビの山をものともせずにドリフト着地する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、カビ取りスプレーと巨大な撫でバケを持った青年の明るい声が、粘菌のノイズを完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 各国の方々からご依頼いただいた壁紙の張り替えとカビ取りに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい下地のカビっぷりと、壁の表面に湧いてるタチの悪い胞子(魔獣)だね! 匂いもヒドイし、古い壁紙が湿気で完全に剥がれかかってる。こりゃ徹底的にお手入れと張り替えのしがいがあるや!」
アルドは、ゴム手袋をキュッと締め直しつつ、プロの内装メンテナンス業者としてのダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対腐界ノ領域ニ、地上ノ有機物ガ何ノ用ダ!」
腐界粘菌が驚愕の胞子ブレスを吹き上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃・解体用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながらカビだらけの大地へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい壁に湧いた胞子ども(魔獣の群れ)と、湿気でブヨブヨになった古い壁紙から、綺麗に『下地処理・剥がし作業』して差し上げましょう」
CDOのレイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の、完璧な役割分担による社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死のカビの中で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ浸食軍団ヲ『壁紙のカビと胞子』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ腐食ノ胞子デ、貴様ラノ血肉ヲ永遠ニ溶カシ尽クシテクレルワ!」
粘菌の怒号と共に、空間を覆うほどのドス黒いカビと粘液を纏った魔獣群が、一斉にアルドたちに向かって致死の腐敗弾を放ちながら襲い掛かった。
「うわっ、このカビ、すっごく繁殖力が高くて新しい部屋まで汚そうとしてる! 放置してたら家全体がカビだらけになっちゃうぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年放置されて大繁殖したタチの悪い壁紙の黒カビ」と完全に認識し、神仙カビ取りスプレーのトリガーに指をかけた。
(僕の神仙の力が、この世界の異常を『壁紙の劣化とカビ被害』として認識させてるんだ。よし、ならば僕は内装業者として、こいつらを完璧に除菌して綺麗な壁にするだけだ!)
自覚を持ったアルドの明確な意志により、周囲の空間がぐにゃりと、より強固な「日常の壁紙張り替え現場」のルールへと書き換えられていく。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。壁紙剥がしで落ちてくる古い糊のゴミやカビ取り剤の飛沫が周囲の街に漏れないよう、まずは私が完璧に内装用マスカーテープと養生シートを張ります」
CSOのシノンが音もなく跳躍し、腐界と粘菌の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を宙に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、腐界全体をすっぽりと覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の内装工事用防護結界』が展開された。これで、致死の猛毒カビや胞子は一ミリたりとも外の世界へ漏れ出すことはない。
「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はカビが撒き散らすガンコな腐敗臭と猛毒の胞子(致死の瘴気)を、環境浄化の力で綺麗に除菌・防カビ処理いたしますわ!」
CEOのエルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖水除菌魔法』が、超強力な次亜塩素酸の光のミストとなって周囲の狂気のカビを包み込み、一気に浄化した。
「ギィヤアアアアッ!?」
万物を腐らせる猛毒の胞子は、その浄化の光のミストを浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害で真っ白な灰へと変わっていく。
「フンッ! 魔力を抜かれたただのカビや古い紙など、ただのスクレーパーのマトだ! そして、邪魔なこびりつきは俺が綺麗に削ぎ落としてやろう!」
CDOのレイヴンが神具の斧を大上段に構え、無害化した魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「壁装劣化腐朽菌解体剥離斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、腐食の胞子群ボディの「因果の隙間」を完璧に見切り、まるで壁にこびりついた古い壁紙の裏紙を専用のヘラでガリガリと綺麗に削り落とすかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、ただの無害な紙くずにしてしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ腐食ノ胞子ガ、タダノ『除菌スプレー』ト『壁紙剥ガシ』ノ前ニ、一瞬デただの部屋ノゴミクズニサレテイクゥゥッ!?」
腐界粘菌は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただのゴミ」に変わり、腐界の視界がクリアになっていく光景に、驚愕のあまり巨大な粘液の体を激しく震わせた。
「よし、みんなのおかげで古い壁紙の撤去と下地処理は完璧だね! あとは、あの一番デカくて空気をカビさせている『壁の下地のガンコな黒カビの親玉』に、事象漂白の神仙カビ取りスプレーをシュッシュッ!と吹きかけて根まで真っ白に漂白し、因果密着の神仙糊付き壁紙を上からパサッ!と当てて、絶対平滑の神仙撫でバケとジョイントローラーでシワ一つなくピシッと仕上げるだけだ!」
アルドは、特製『事象漂白の神仙カビ取りスプレー(強力密着泡タイプ)』を粘菌の巨大な本体(腐敗と浸食の中核)へと向けて構え、突撃した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。神仙カビ取りスプレーは星の因果の腐敗を物理的に漂白し死滅させる絶対事象除菌剤であり、神仙壁紙と撫でバケは大宇宙のいかなる次元の浸食や神話級のカビすらも、物理的に『真っ白な空間で覆い隠す』だけで完璧に無害化し、極上の清潔な空間を取り戻す『究極の内装メンテナンスツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ノ空間ヲ溶カス『終焉ノ絶対腐食』デ、貴様ラノ存在ゴト永遠ノカビノ底ニ沈メテクレルワ!」
腐界粘菌が残された全ての魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てをドロドロに溶かす超巨大な猛毒の粘液を放ってきた。
「うわっ! 壁の奥から、すっごくガンコなカビの根っこが押し寄せてきた! でも、この特製カビ取り泡と新しい壁紙の前には、どんなに酷い汚れも一発で真っ白な新築の壁だ!」
アルドが粘菌の巨大な体に向けてカビ取りスプレーをシュワァァァッ!!と限界まで吹きかけ、事象のカビの根を完璧に漂白し分解する。そして、無害化された空間の壁(狂乱の魔力)の上から、因果密着の神仙糊付き壁紙(純白の抗菌仕様)を「バサッ!」と大きく広げて貼り付ける。
仕上げに、絶対平滑の神仙撫でバケで空気を「サッサッ」と抜きながらシワを伸ばし、つなぎ目をジョイントローラーで「コロコロッ」と完璧に圧着していくと、こびりついた腐敗の魔力ごと完璧にコーティングされ、美しく輝く純白の無菌空間へと姿を変えていった。
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶猛毒粘液ガ、タダノカビ取リスプレーデ漂白サレ、新シイ壁紙デ因果ゴト覆イ隠サレテ、一ミリモ空間ヲ溶カセナクナッタだトォォォッ!?」
「よし、ガンコなカビは綺麗に漂白されて、壁紙もシワ一つなくピシッと張れたぞ! 最後に、仕上げの『因果調律の24時間・全自動プラズマ空気清浄ユニット』を壁にカチッと取り付けて……あ、そうだ。このカビの親玉、綺麗に除菌して抗菌壁紙を張ったら、凄く強力で絶対にカビが生えない、巨大な全自動の広域空間浄化・クリーンルームみたいになってるね。ちょっと魔力の流れを調整してあげれば、世界中の有害な菌や腐敗を完全に浄化して、代わりに極上のクリーンな空気と無菌空間だけを世界中に供給してくれる『超巨大な全自動・神仙広域空間浄化&無限クリーンルームインフラ』にできそうだよ!」
アルドが粘菌の本体であった場所に空気清浄ユニットを施し、事象調律のスイッチを「強力除菌モード」にピッ!と操作して巨大な空間浄化施設へとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた粘菌の禍々しい腐敗と浸食の魔力は、瞬く間に安全でクリーンな浄化エネルギーと無限の無菌維持機能へと漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲカビ地獄ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【部屋オ綺麗ニ保ッテ清潔ナ空気オ出ス為ノ最新ノ抗菌壁紙】ノヨウニ……!? イヤ、撫デバケデ擦ラレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ浄化力ト、極上ノ無菌空間オ提供スル超大型環境インフラ】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ清潔ナ空間ト極上ノ綺麗ナ空気オ提供スル「極上ノ全自動・神仙クリーンルーム」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした腐敗と空間浸食の化身は、アルドの「壁紙の張り替えとカビ取り」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を腐らせる禍々しい腐界粘菌は、気がつけば「浸食の腐界を美しく真っ白な巨大なクリーンルームに変え、世界中のどんなカビや腐敗も一瞬で無害化し、極上の清潔な空気を24時間供給し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動広域空間浄化・無限クリーンルームインフラ(見た目は巨大でシワ一つなく張られた純白の壁と巨大空気清浄機)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌なカビ臭さと壁の剥がれ被害は片付いて、すっごく綺麗で空気が美味しいお部屋になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちがカビの病気や家の腐敗を気にせずに、いつでも清潔な部屋の中で笑顔で暮らせるね。僕の神仙の力も、こうやってみんなの健康と綺麗な住空間を守るために使えば、凄く素敵なことだよね!」
アルドが撫でバケを片付けて額の汗を拭うと、腐界を覆っていたドス黒いカビの胞子は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく輝く奇跡の純白空間と、澄み切った清らかな空気が広がっていた。
その光景を見て、新役職のメンバーたちは、誇らしげに胸を張った。
「見事な現場指揮でした、社長。我が社の広域空間浄化・クリーンルームシステムは、これより大陸全土の建築・衛生基準のデファクトスタンダードとなるでしょう」
CFOのアーキヴァルが、うやうやしく一礼する。
「これからは、どんな神話のバケモノが出ようが、社長の作業前に俺が全部『ブヨブヨの古い壁紙の削ぎ落とし』してやりますよ」
CDOのレイヴンが頼もしく笑う。
大公レオハルトも「これで各国の空間浄化・衛生利権は完全に我々のものだ」と悪徳代官のように頷いている。
アルドは、彼らの頼もしい姿を見て、心の底から嬉しそうに笑い返した。
***
数日後。大陸諸国を統べる王室や建築・公衆衛生ギルド本部。
各国の王たちは、猛毒のカビ被害が完全に解消され、腐界の跡地に前代未聞の超巨大な広域空間浄化・クリーンルームインフラが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が世界をカビの海に沈めるはずだった浸食の腐界粘菌が、たった数時間で『完全な壁紙の張り替えとカビ取り』をされ、あまつさえ粘菌が『超巨大なクリーンルームインフラ』に転職して、国中の空間と空気の管理権を完璧に独占しているだと……!?」
そこへ、アステリア王国の大公にして【最高渉外・政府関係公使(GA)】であるレオハルトが、圧倒的な威圧感と外交特権を纏って現れた。
「各国の代表諸君。我が国が誇る総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の『CSR活動(内装設備メンテナンスと広域環境インフラ整備業務)』をご利用いただき、誠に感謝する」
レオハルトの重厚な声と共に、アーキヴァルが【完全なる空間修復・浄化施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「社長(アルド様)の理念により、基本の壁紙張り替え・カビ取り料金はサービスとさせていただく。……が、粘菌の完全浄化、空間の再構築、そして『大陸全土に極上の安全な空気と無菌空間を供給する巨大システムの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただこう。支払いは、各国の年間建築・衛生事業収益の九割と、空間浄化ネットワークの独占プロデュース権で手を打つ。これは提案ではない、決定事項だ」
レオハルトの政治的圧力とアーキヴァルの冷たい宣告と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)兼・神仙社史編纂室長】の元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな正史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。大陸北東部の浸食の腐界における壁紙の張り替え、およびカビ取り作業完了。世界を猛毒のカビと腐敗に沈める浸食の腐界粘菌イロージョン・スライム(神話の厄災)を事象のカビ取りスプレーと糊付き壁紙で除菌・コーティングさせ、立派な特大全自動広域空間浄化・無限クリーンルームシステムへと改修。猛毒のカビ汚染と空間浸食被害の修復を完了し、大陸全土の住環境保護と極上の清潔な空気の提供に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のGAレオハルト閣下とCFOアーキヴァルの連携により、世界各国からは莫大な賠償金と、空間浄化・衛生インフラの独占管理権を合法かつ迅速に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、信仰、光、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、生命の息吹(農業)、食の鮮度(低温物流)、住環境からの防壁、生命の癒やし(温泉)、天蓋修復と気象防壁、次元境界修復と絶対防虫、物質修復と外壁防護、光明修復と電力供給、空間境界修復と絶対防犯、歴史因果修復と物資保管、水質衛生と癒やしの循環、大気環境と換気浄化、大地生態系と食糧生産、天候制御と清浄浄水、地殻構造と地熱エネルギー、次元外装と絶対防壁、光学透視と天蓋シールド、空調管理と気候制御、衛生配管と下水処理、電力網と光エネルギー、海洋海流と無限水循環、造園緑化と無限農業、排熱管理とクリーン暖房、熱源管理と広域給湯、時空安定と標準時管理、屋根外装と広域気象シールド、大気清浄とクリーン換気、空間透視と絶対防虫、地盤強化と無限資源採掘に続き、ついに「世界の空間浄化と無菌環境(内装・壁紙メンテナンス)」の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長が神仙としての自我を覚醒させて以降、我々の業務はもはや「世界の神話」を「家事のログ」として上書きする領域へと達している。社長は己の全知全能のセンサーで世界の危機を感知し、それを「便利屋の日常業務」として処理することで、世界を極上の平穏へと導いている。新役職のメンバーたちも、各々の専門分野で遺憾なくその力を発揮し、社長の「家事」を最高の形でサポートしている。
完全覚醒した神仙社長と、大宇宙最強の経営陣。この完璧な布陣の前に、もはや世界のいかなる絶望も、ただの「内装・ハウスクリーニングメンテナンス業務」として処理される運命にある。ワシはこの究極の平穏の歴史を、永遠に記録し続ける。』
ゾルタンが深い満足感と共にペンを置くと、ドアの向こうから「みんな、お仕事お疲れ様! 今日の3時のおやつは、新しく張り替えた真っ白な壁紙みたいにフワフワな『特製・天界生クリームの純白純生ロールケーキ〜大精霊のイチゴをたっぷりと〜』だよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「全知全能の神が仕上げるロールケーキは、ことのほかスポンジの柔らかさとクリームの甘さが五臓六腑に染み渡ろう」とぼやきながらも、この上ない幸福な笑みを浮かべて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただの壁紙の張り替えとカビ取り」は、世界腐敗化の危機をただの内装メンテナンスとして解決し、腐界粘菌の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の広域空間浄化・無限クリーンルームインフラを誕生させてしまった。
神仙の力を自覚し、新役職で完全体となったクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に世界の空間浄化と衛生環境の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のメンテナンス業務として永遠に葬り去る、究極の平穏なる企業伝説の新たな1ページを、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
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