第178話:ただの壁掛け時計の電池交換と歯車への注油と、時の狭間の暴食時計魔竜の強制全自動標準時管理・無限時間インフラ化(総合ライフサポート企業の時計・精密機械メンテナンス業務)
第178話:ただの壁掛け時計の電池交換と歯車への注油と、時の狭間の暴食時計魔竜の強制全自動標準時管理・無限時間インフラ化(総合ライフサポート企業の時計・精密機械メンテナンス業務)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝。そこは、大宇宙の根源たる神仙へと完全覚醒したアルドが、あえて「ただの便利屋」としての日々を選択し固定したことで、もはや何者にも侵し得ぬ絶対的な聖域と化していた。
キッチンからは、魂の最深部を震わせるような、芳醇な湯気と上質な豚肉の脂の香り、そして奥深い海鮮の出汁の匂いが暴力的なまでに漂い、城塞の廊下を満たしていく。
「よし! 今日のメインは、大精霊の清冽な泉の蒸気でふっくらと蒸し上げた『幻獣黒豚と天界毛蟹の極上・爆汁小籠包〜星屑の黒酢と世界樹の千切り生姜添え〜』だ。まずは幻獣黒豚の最も旨味が強い肩ロースを極細かく叩き、そこに天界毛蟹の濃厚なカニミソとほぐし身をたっぷりと練り込む。味の決め手は、数百年熟成させた神仙の鶏ガラスープを極寒でゼラチン状に固めた『煮こごり』だ! これを餡と一緒に、神仙小麦で極限まで薄く、かつ破れないように手延べした特製の皮で美しく包み込む。これを特大の竹せいろに並べ、強火で一気に蒸し上げるんだ! せいろの蓋を開けた瞬間、もうもうと立ち上る湯気と共に、透き通った皮からたっぷりの熱々スープが透けて見える寸法さ。これに、芳醇な香りの星屑の黒酢をチョンとつけ、針のように細い世界樹の生姜を乗せてレンゲで一口でいく! 付け合わせには、大精霊のフカヒレと幻獣鶏を三日三晩煮込んだ黄金の薬膳スープと、朝積み青菜の強火炒め。……熱々のうちに完成だよ!」
アルドがエプロン姿で、湯気と共に圧倒的なカニと豚肉の香りを放つ特大の竹せいろをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの食欲をそそる匂いに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振っていた。
この極上モーニング、レンゲの上で皮を破った瞬間に溢れ出す幻獣肉とカニの圧倒的なアミノ酸が全身の魔力回路を限界突破させ、特製黒酢のクエン酸が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・至高の点心フルコース』である。
「うむ……! この極薄の皮を少し噛み破った瞬間にレンゲいっぱいに溢れ出す、黄金色の爆汁スープの視覚的ビッグバン! そして火傷覚悟で一口で頬張れば、黒豚の暴力的なまでの旨味と毛蟹の濃厚な甘みが口の中で奇跡のハーモニーを奏でる! すかさず黒酢の酸味と生姜の辛味が脂っぽさを完璧に洗い流し、美味さのあまり魂が魔界の果てまで吹き飛びそうになる無限の食欲ループ! とろとろのフカヒレスープを流し込めば、我が最高福利厚生責任者の職務が、高級茶館で至福の朝食を楽しむ大富豪のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
【最高福利厚生責任者(CHO)兼・毒見役役員】の元・魔界大帝サタナスが、レンゲと箸を両手で震わせ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
賑やかな朝食の喧騒が一段落し、食後の極上ジャスミンティーが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲を囲むのは、完全覚醒した神仙社長を支える、大宇宙最強の経営陣。レイヴン、エルミナ、シノン、アーキヴァル。そして、歴史を刻むゾルタンと外交を司るレオハルト。
「さて、みんな。今日も美味しいご飯を食べてエネルギー満タンだね!」
アルドはニコッと微笑みながら、ふと視線をリビングの壁に掛かっている大きなアンティーク調の壁掛け時計へと向け、少しだけ眉をひそめた。
「……ねえ。今朝からなんだけど、なんだか『壁掛け時計の針が進んだり戻ったりして、奥からギシギシと歯車が錆びたような嫌な音が鳴っている』ような違和感を感じたんだ。僕の全知全能のセンサーで見ると、それがはるか東の『時の狭間の時計谷』から、世界の時間を通じて伝わってきているのがわかる。時計の電池が切れかかってるし、中の細かい歯車にホコリとサビがビッシリ詰まっちゃってる……そんな、早急な電池交換と精密機械のメンテナンスが必要な嫌な予感がするんだよね」
神仙としての自覚を完全に取り戻したアルドが感知する「時計の電池切れと歯車のサビ」。それはすなわち、大宇宙の時間の流れと因果を司る時空基盤そのものが破壊され、世界が狂乱のタイムパラドックスと永遠の停止に呑み込まれようとしているという、世界滅亡レベルの緊急事態のサインである。
しかし、覚醒したアルドは一切パニックにならない。彼の「この世界を正しい時間で規則正しく動く快適な環境にする」という鋼鉄の意志こそが、大宇宙の絶対ルールなのだ。
「社長の『全知全能のセンサー』が捉えた時間・因果律の異常……間違いありませんね」
【最高財務責任者(CFO)兼・グローバル戦略最高責任者】のアーキヴァルが、優雅に眼鏡を押し上げ、分厚いバインダーを開く。
「我が社の情報網にも、今朝早くから大陸東部の『時の狭間の時計谷』周辺における、極めて深刻な時間の停止と急激な老化・若返りの被害報告が届いております。社長の感知された通り、谷の最深部に長年封印されていた『暴食の時計魔竜・クロノス・ギア・ドラグーン』が目覚めかけ、大陸全土の時間を喰らい尽くし、世界を永遠の静止へと変えようとしているのです。さらにタチの悪いことに、その魔竜が生み出す『時喰いの錆び歯車ども(※触れるものの時間を強制的に削り取る魔獣群)』が次元の裂け目(時計の隙間)から溢れ出し、人々の街に雪崩れ込んでは、全てを絶望の時空の底に沈めようと暴れ回っております」
「なるほど! やっぱり長年時計のメンテナンスをサボったせいで、機械の奥(時の狭間)にガンコなサビの塊(時計魔竜)が詰まって、そこにタチの悪いホコリ(錆び歯車)が絡まって針が動かなくなってるんだね!」
アルドはバインダーの報告書を見て、プロの時計・精密機械メンテナンス業者としての血を騒がせた。
「僕の力なら時間のズレなんて一瞬で直せるけど、時計のお手入れはやっぱり、裏蓋を開けてエアダスターで細かいホコリを吹き飛ばし、歯車の一つ一つに専用の潤滑油を丁寧に差し、最後に古い電池を最新の長寿命アルカリ電池に交換するのが一番確実で正確に時を刻んでくれるからね! このまま放置すれば、家(世界)中の時間が狂ってみんな待ち合わせに遅れちゃう。安全で正確な時間管理を守るためにも、時計をピカピカに修理して、極上の時間インフラにリフォームしてこよう! よーし、僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役員たちも一斉に凄まじい気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。時計に詰まった鬱陶しいサビ歯車ども(魔獣群)と、腐食した古いネジの解体・撤去は、この【最高開発・解体執行責任者(CDO)】たる俺にお任せを。邪魔な障害物を専用の精密ピンセットと小型ハンマーで一つ残さず取り除き、完璧な『下地処理(部品整理)』をしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を大型の精密ドライバーのように構えて不敵に笑う。
「ええ。サビが撒き散らすガンコな金属臭や時間の淀み(※致死の瘴気)は、【環境浄化・概念調律最高責任者(CEO)】の私が、特製の強力防錆・潤滑魔法(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして概念ごと滑らかにし、清潔な駆動環境を整えて差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら頷く。
「……作業中、エアダスターで吹き飛ばす時空のホコリやサビの粉が周囲の部屋に飛散しないよう、【絶対防壁・空間隔離最高責任者(CSO)】として、現場の周囲に完璧な精密機械用防塵シートと静電気防止マット(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」
シノンが短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 時計の修理は細かい部品が飛んでいくし、ホコリが大敵だから、しっかりシートで養生してくれると助かるよ!」
アルドは満足げに頷き、自身の作業着(時間の歪みと静電気を完全に弾く特製精密メンテ用静電防止ツナギとルーペ付きゴーグル、指サック)に着替え、手には巨大な「事象調整の神仙精密ドライバーセット」と、プロ仕様の「因果潤滑の神仙時計オイル」、そして「絶対駆動の神仙無限バッテリー(単三形)」を握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、この『時計・精密機械メンテナンス道具一式』を持っていくよ! 世界の人たちの時間の遅れと電池切れの不安を解決するために、邪魔なサビを落として、時計をピカピカにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、精密機械メンテナンス仕様に改造された魔導軽トラ(無塵室搭載)に乗り込み、空間がドス黒い時空の歪みとサビに覆われつつある大陸東部の『時の狭間の時計谷』へと向けて出勤したのである。
***
その頃、大陸東部の『時の狭間の時計谷』の中心部。
世界の時間を喰らい、全ての存在を永遠の停止と狂乱のパラドックスに沈める悪夢『暴食の時計魔竜・クロノス・ギア・ドラグーン』が、山のように巨大な真鍮の歯車と振り子を軋ませながら、傲慢な秒針の音を響かせていた。
「カチ……カチ……ギガァァァァッ! 素晴らしいぞ! この星の忌まわしい進み続ける時間を全て喰らい尽くし、我が動力に変える暴食の歯車さえあれば、地上の生命など一瞬で老化し、あるいは赤子に戻り、永遠の混乱に絶望する! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な死の時空崩壊を!」
時計魔竜は、巨大な顎から錆びた時空のブレスを吐き出し、無数の時喰いの錆び歯車たちを次元の裂け目へと放った。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの世界のどこにも明日を迎える時間などないと知れ! さあ、もっとだ! 全ての時間を停止させ、大陸全土を永遠の静止の底に変えよ!」
「我ら時空の眷属の停止力は絶対だ! この猛毒とパラドックスの領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! カチャァァンッ!!
魔竜が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な時空の嵐が吹き荒れる谷のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の時間の歪みとサビをものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、精密ドライバーと単三電池を持った青年の明るい声が、魔竜のノイズを完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 各国の方々からご依頼いただいた壁掛け時計の電池交換とメンテナンスに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい歯車のサビっぷりと、隙間にビッシリ詰まってるタチの悪いホコリ(錆び歯車魔獣)だね! 針も変な動きしてるし、電池の液漏れも起きてる。こりゃ徹底的にお手入れと注油のしがいがあるや!」
アルドは、ルーペ付きゴーグルの位置をキュッと直しつつ、プロの時計メンテナンス業者としてのダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対停止ノ領域ニ、地上ノ有機物ガ何ノ用ダ!」
魔竜が驚愕の時空ブレスを吹き上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃・解体用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら歯車の谷へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい内部に詰まったホコリども(魔獣の群れ)と、サビついた古い部品から、綺麗に『下地処理・分解清掃作業』して差し上げましょう」
CDOのレイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の、完璧な役割分担による社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の時空の中で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ時空軍団ヲ『時計のホコリとサビ』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ錆ビ歯車デ、貴様ラノ寿命ヲ永遠ニ削リ取ッテクレルワ!」
魔竜の怒号と共に、空間を覆うほどのドス黒い時の歪みと錆びた金属片を纏った魔獣群が、一斉にアルドたちに向かって致死の老化弾を放ちながら襲い掛かった。
「うわっ、このホコリ、すっごくガンコで大事なテンプ(心臓部)に絡みつこうとしてる! 放置してたら完全に時計が壊れちゃうぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年放置されて大繁殖したタチの悪い精密機械のホコリとサビ」と完全に認識し、エアダスターのトリガーに指をかけた。
(僕の神仙の力が、この世界の異常を『壁掛け時計の故障被害』として認識させてるんだ。よし、ならば僕はメンテナンス業者として、こいつらを完璧に分解清掃して正しい時間を刻ませるだけだ!)
自覚を持ったアルドの明確な意志により、周囲の空間がぐにゃりと、より強固な「日常の時計修理現場」のルールへと書き換えられていく。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。エアダスターで吹き飛ばすサビの粉や時間の欠片が周囲の街に漏れないよう、まずは私が完璧に精密機械用防塵シートと静電防止マットを張ります」
CSOのシノンが音もなく跳躍し、谷と魔竜の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を宙に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、谷全体をすっぽりと覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の時計修理用無塵結界』が展開された。これで、致死の時空の歪みやサビの粉は一ミリたりとも外の世界へ漏れ出すことはない。
「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はサビが撒き散らすガンコな金属臭と時間の淀み(致死の瘴気)を、環境浄化の力で綺麗に防錆・潤滑処理いたしますわ!」
CEOのエルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光防錆魔法』が、超強力な時計用クリーナーの光のミストとなって周囲の狂気のパラドックスを包み込み、一気に浄化した。
「ギィヤアアアアッ!?」
万物の時間を狂わせる猛毒のサビは、その浄化の光のミストを浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害でピカピカの真鍮の粉へと変わっていく。
「フンッ! 魔力を抜かれたただのホコリやサビなど、ただの精密ピンセットのマトだ! そして、邪魔なこびりつきは俺が綺麗に取り除いてやろう!」
CDOのレイヴンが神具の斧を大上段に構え、無害化した魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「精密機械劣化塵芥解体摘出斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、錆び歯車ボディの「因果の隙間」を完璧に見切り、まるで細かい部品の間に挟まったホコリを専用のピンセットでヒョイッと綺麗につまみ出すかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、ただの無害なチリにしてしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ錆ビ歯車ガ、タダノ『防錆スプレー』ト『ピンセット摘出』ノ前ニ、一瞬デただの時計ノゴミクズニサレテイクゥゥッ!?」
時計魔竜は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただのホコリ」に変わり、谷の視界がクリアになっていく光景に、驚愕のあまり巨大な真鍮の体を激しく震わせた。
「よし、みんなのおかげで内部のホコリ取りと下地処理は完璧だね! あとは、あの一番デカくて時間を止めている『時計の中枢のガンコなサビ(クロノス・ギア・ドラグーン)』の裏蓋を事象調整の神仙精密ドライバーでカチャッと外し、因果潤滑の神仙時計オイルを歯車に丁寧に一滴ずつ差し、最後に切れた電池を絶対駆動の神仙無限バッテリーにカチッと交換するだけだ!」
アルドは、特製『事象調整の神仙精密ドライバー』を魔竜の巨大な本体(時間の中核たる裏蓋)へと向けて構え、突撃した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。神仙ドライバーは星の因果の歪みを物理的に分解・調整する絶対事象工具であり、神仙オイルとバッテリーは大宇宙のいかなる次元の停止や神話級のタイムパラドックスすらも、物理的に『滑らかに動かし電力を供給する』だけで完璧に無害化し、極上の正確な時間を取り戻す『究極の時計メンテナンスツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ノ時間ヲ止メル『終焉ノ絶対静止』デ、貴様ラノ存在ゴト永遠ノ停止ノ底ニ沈メテクレルワ!」
時計魔竜が残された全ての魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全ての時間を止める超巨大な灰色の波動を放ってきた。
「うわっ! 歯車の奥から、すっごくガンコな液漏れとサビの塊が押し寄せてきた! でも、この特製オイルと最新の電池の前には、どんなに酷い停止も一発で正確なチクタク音だ!」
アルドが魔竜の巨大な裏蓋に向けてドライバーをカチャカチャッ!!と限界まで素早く回して事象の装甲を完璧に外し、露出した巨大な歯車(狂乱の魔力)に因果潤滑の神仙オイルを「ポトッ…ポトッ…」と極めて繊細に注油していく。
サビが溶けて滑らかに動き出した魔竜の心臓部から、液漏れした古い電池を引き抜き、代わりに絶対駆動の神仙無限バッテリー(単三形)を「カチッ!」と完璧にはめ込むと、こびりついた静止の魔力ごと完璧に駆動・調律され、美しく正確な「チク……タク……」という鼓動へと姿を変えていった。
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶時間停止ガ、タダノ時計オイルデ滑ラカニサレ、単三電池デ因果ゴト再起動サレテ、一ミリモ時間ヲ止メラレナクナッタだトォォォッ!?」
「よし、ガンコなサビは綺麗に落ちて、電池も新品になって完璧に正確な時間が刻まれるようになったぞ! 最後に、仕上げの『因果調律の電波受信アンテナ』をカチッと取り付けて……あ、そうだ。この時計の親玉、綺麗に修理して無限電池を入れたら、凄く強力で絶対に時間が狂わない、巨大な全自動の標準時電波塔みたいになってるね。ちょっと魔力の流れを調整してあげれば、世界中の時間のズレやパラドックスを完全に修正して、代わりに極上の正確な時間と無限の時空安定だけを世界中に供給してくれる『超巨大な全自動・神仙広域標準時管理&無限時間インフラ』にできそうだよ!」
アルドが魔竜の本体であった場所に電波アンテナを施し、事象調律のリセットボタンをピッ!と押して巨大な時間管理施設へとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた魔竜の禍々しい静止と狂乱の魔力は、瞬く間に安全でクリーンな時間エネルギーと無限の時空安定機能へと漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ静止ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【時間オ正確ニ刻ンデ生活オ整エル為ノ最新ノ電波時計】ノヨウニ……!? イヤ、電池オ入レ替エラレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ時空安定力ト、極上ノ標準時オ提供スル超大型時間インフラ】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ正確ナ時間ト極上ノ時空安定オ提供スル「極上ノ全自動・神仙標準電波時計」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした時間停止の化身は、アルドの「時計の電池交換と注油メンテナンス」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を停止させる禍々しい時計魔竜は、気がつけば「時の狭間の時計谷を美しく荘厳な巨大な時計塔に変え、世界中のどんな時間のズレも一瞬で正確な標準時に合わせ、極上の安定した時空を24時間供給し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動広域標準時管理・無限時間インフラ(見た目は巨大でピカピカに磨き上げられた黄金のビッグベン型電波時計塔)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な時間の遅れと電池切れの被害は片付いて、すっごく正確で狂わない時計になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちが待ち合わせの遅刻や時計のズレを気にせずに、いつでも正しい時間で笑顔で暮らせるね。僕の神仙の力も、こうやってみんなのスケジュールと正確な時間を守るために使えば、凄く素敵なことだよね!」
アルドがドライバーを片付けて額の汗を拭うと、谷を覆っていたドス黒い時空の歪みは一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく輝く奇跡の黄金時計塔と、澄み切った清らかな空気が広がっていた。
その光景を見て、新役職のメンバーたちは、誇らしげに胸を張った。
「見事な現場指揮でした、社長。我が社の広域標準時・無限時間システムは、これより大陸全土の暦・物流スケジュールのデファクトスタンダードとなるでしょう」
CFOのアーキヴァルが、うやうやしく一礼する。
「これからは、どんな神話のバケモノが出ようが、社長の作業前に俺が全部『裏蓋外しとホコリ取り』してやりますよ」
CDOのレイヴンが頼もしく笑う。
大公レオハルトも「これで各国の標準時管理・時空安定利権は完全に我々のものだ」と悪徳代官のように頷いている。
アルドは、彼らの頼もしい姿を見て、心の底から嬉しそうに笑い返した。
***
数日後。大陸諸国を統べる王室や暦・天文ギルド本部。
各国の王たちは、時間停止と老化被害が完全に解消され、時計谷の跡地に前代未聞の超巨大な広域標準時管理・無限時間インフラが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が世界を永遠の静止に沈めるはずだった暴食の時計魔竜が、たった数時間で『完全な時計の電池交換と注油』をされ、あまつさえ魔竜が『超巨大な標準時インフラ』に転職して、国中の時間と暦の管理権を完璧に独占しているだと……!?」
そこへ、アステリア王国の大公にして【最高渉外・政府関係公使(GA)】であるレオハルトが、圧倒的な威圧感と外交特権を纏って現れた。
「各国の代表諸君。我が国が誇る総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の『CSR活動(精密機械メンテナンスと広域時間インフラ整備業務)』をご利用いただき、誠に感謝する」
レオハルトの重厚な声と共に、アーキヴァルが【完全なる時空修復・時計塔施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「社長(アルド様)の理念により、基本の電池交換・注油料金はサービスとさせていただく。……が、魔竜の完全浄化、時空の再構築、そして『大陸全土に極上の正確な時間と永遠の安定を供給する巨大システムの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただこう。支払いは、各国の年間物流・暦事業収益の九割と、標準時ネットワークの独占プロデュース権で手を打つ。これは提案ではない、決定事項だ」
レオハルトの政治的圧力とアーキヴァルの冷たい宣告と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、【最高情報・歴史管理責任者(CIO)兼・神仙社史編纂室長】の元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな正史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。大陸東部の時の狭間の時計谷における壁掛け時計の電池交換、および歯車への注油作業完了。世界を時間停止と狂乱に沈める暴食の時計魔竜クロノス・ギア・ドラグーン(神話の厄災)を事象のドライバーと単三電池で修復・再起動させ、立派な特大全自動広域標準時管理・無限時間システムへと改修。猛毒のパラドックスと時空崩壊被害の修復を完了し、大陸全土のスケジュール保護と極上の正確な時間の提供に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のGAレオハルト閣下とCFOアーキヴァルの連携により、世界各国からは莫大な賠償金と、標準時・時間インフラの独占管理権を合法かつ迅速に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、信仰、光、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、生命の息吹(農業)、食の鮮度(低温物流)、住環境からの防壁、生命の癒やし(温泉)、天蓋修復と気象防壁、次元境界修復と絶対防虫、物質修復と外壁防護、光明修復と電力供給、空間境界修復と絶対防犯、歴史因果修復と物資保管、水質衛生と癒やしの循環、大気環境と換気浄化、大地生態系と食糧生産、天候制御と清浄浄水、地殻構造と地熱エネルギー、次元外装と絶対防壁、光学透視と天蓋シールド、空調管理と気候制御、衛生配管と下水処理、電力網と光エネルギー、海洋海流と無限水循環、造園緑化と無限農業、排熱管理とクリーン暖房、熱源管理と広域給湯に続き、ついに「世界の時空安定と標準時管理(時計・精密機械メンテナンス)」の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長が神仙としての自我を覚醒させて以降、我々の業務はもはや「世界の神話」を「家事のログ」として上書きする領域へと達している。社長は己の全知全能のセンサーで世界の危機を感知し、それを「便利屋の日常業務」として処理することで、世界を極上の平穏へと導いている。新役職のメンバーたちも、各々の専門分野で遺憾なくその力を発揮し、社長の「家事」を最高の形でサポートしている。
完全覚醒した神仙社長と、大宇宙最強の経営陣。この完璧な布陣の前に、もはや世界のいかなる絶望も、ただの「時計・精密機械メンテナンス業務」として処理される運命にある。ワシはこの究極の平穏の歴史を、永遠に記録し続ける。』
ゾルタンが深い満足感と共にペンを置くと、ドアの向こうから「みんな、お仕事お疲れ様! ちょうど3時ぴったりのおやつの時間だよ! 今日は、朝の小籠包の蒸し器で作った、時計みたいに真ん丸でフワフワな『特製・大精霊の黄金カステラ〜星屑のハチミツをたっぷり染み込ませて〜』だよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「全知全能の神が仕上げるカステラは、ことのほかハチミツの甘さと卵の香ばしさが五臓六腑に染み渡ろう」とぼやきながらも、この上ない幸福な笑みを浮かべて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただの壁掛け時計の電池交換と注油」は、世界時間停止の危機をただの精密機械メンテナンスとして解決し、時計魔竜の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の広域標準時管理・無限時間インフラを誕生させてしまった。
神仙の力を自覚し、新役職で完全体となったクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に世界の時空と暦の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のメンテナンス業務として永遠に葬り去る、究極の平穏なる企業伝説の新たな1ページを、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作「アークライト廃墟ダンジョン再興記――追放管理士と精霊少女のゼロから始める逆転経営譚――」を鋭意執筆中です。
アークライト廃墟ダンジョン再興記――追放管理士と精霊少女のゼロから始める逆転経営譚――
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