第139話:ただの床下ネズミ駆除と、大地の貪食竜の強制地下鉄・免震システム化(総合ライフサポート企業の床下メンテナンス業務)
第139話:ただの床下ネズミ駆除と、大地の貪食竜の強制地下鉄・免震システム化(総合ライフサポート企業の床下メンテナンス業務)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底から理性を吹き飛ばすような極上の肉汁の焦げる匂い、そして濃厚なソースが熱々の鉄板で弾ける暴力的なまでの香ばしさと共に幕を開ける。
今日のアルドは、朝からキッチンの特大鉄板と巨大な寸胴鍋に向かい、見事な手際と火加減で『特製・幻獣牛と天界豚の極厚黄金比ハンバーグ〜星屑の特濃デミグラスソース〜と、世界樹の彩り温野菜、そして天界卵の完璧な目玉焼き』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の牧草を食べて育った幻獣牛と天界豚のひき肉を、門外不出の黄金比でブレンドした特大ハンバーグだ。神仙の玉ねぎをアメ色になるまで炒めて甘みを限界まで引き出し、星屑のナツメグと黒胡椒で味を整えて、空気を抜きながら分厚く成形する。これを、高温の鉄板で表面をカリッと焼き上げて旨味のコーティングを施し、少量の神仙ワインを振って蓋をして蒸し焼きにする! ナイフを入れた瞬間、肉汁が噴水のように溢れ出す極上の仕上がりだ! そしてソースは、幻獣牛の牛骨と香味野菜を三日三晩煮詰めた漆黒のデミグラスソースに、赤ワインとバターを加えてコクを極限まで高めたもの。熱々のハンバーグの上にこれを滝のように回しかけ、その頂には天界鶏の産みたて卵で作った、黄身がトロットロの半熟目玉焼きを乗せる! 付け合わせには、世界樹の森で採れたブロッコリーやニンジンを神仙バターでソテーした温野菜! 炊きたての神仙米の銀シャリと一緒に……熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、ジュージューと音を立てる鉄板に乗った特大ハンバーグと、山盛りのご飯をダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの肉とソースの香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。
この極上ハンバーグ定食、一口食べれば幻獣牛と天界豚の極上のタンパク質と脂質が全身の魔力回路を限界突破させ、デミグラスソースの圧倒的な鉄分と旨味が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な闘争本能を湧き上がらせる『究極の超覚醒・洋食フルコース』である。
「うむ……! このハンバーグを割った瞬間に決壊する肉汁の大洪水と、濃厚なデミグラスソースが織りなす圧倒的な旨味のビッグバン! そして目玉焼きの黄身を絡めた時の悪魔的なまろやかさ! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日のランチに老舗の洋食屋で童心に帰ってご馳走を頬張る少年のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、ナイフとフォークを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ストレートティーが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。北西部の常闇の峡谷での電球交換(影魔神のイルミネーション化)も終わって、世界中の夜がすっかり明るく安全になったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸中部の『奈落の地溝帯』における、極めて深刻な地盤沈下と害獣被害に関するご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「大陸中部の地下深く、大地を支える岩盤の奥底に長年封印されていた『大地の貪食竜・テラ・グラトニー』が目覚めまして。強靭な顎と爪で星の基礎たる岩盤を食い荒らし、度重なる大地震と地割れを引き起こしております。さらにタチの悪いことに、その貪食竜が生み出す『岩喰いの地竜群ども(※触れるものを粉砕して喰らう狂暴な地底魔獣群)』が地下から溢れ出し、人々の街の地下を穴だらけにして、建物を次々と奈落の底へ沈めようと暴れ回っているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(大地の貪食竜だと……!? あれは星の地殻そのものを喰らい尽くし、世界を永遠に崩壊し続ける奈落へと変貌させる神話級の地魔竜。それが覚醒したとなれば、中部諸国はおろか、世界の全大陸が砕け散り、全ての生命が地の底へ呑み込まれて圧死する。本来なら全国家の土の魔導士と重力使いを総動員して命がけの超極大岩盤補強・耐震結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい床下を這い回るネズミやモグラ(地底魔獣群)の『徹底的な害獣駆除(粉砕と浄化)』と『基礎を齧っている親玉(貪食竜)のネズミ捕りによる捕獲』、そして『床下のジャッキアップと耐震補強の改善』です。このまま放置すれば、夜中にネズミが走り回る音で眠れないばかりか、家の基礎がボロボロになって床が傾き、最悪の場合は家が倒壊してしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「家の床下にデカいネズミやモグラが住み着いちゃって、大事な家の基礎や柱を齧ってボロボロにしてるんだね! おまけにそのせいで床が傾いてミシミシ鳴ってるなんて、地震が来たらひとたまりもないし、生活する上でも大問題だ。安心して暮らせる頑丈なお家を守るためにも、床下のネズミ駆除と基礎の補強はしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。床下をチョロチョロと這い回る鬱陶しい害獣(地竜の魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。床下を荒らすネズミを1匹残さず綺麗に駆除して、ただの土塊以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧をツルハシのように構えながら不敵に笑う。
「ええ。害獣が撒き散らすガンコな糞尿の臭いやバイ菌(※致死の腐敗瘴気と毒素)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の床下用除菌・消臭剤(※極大の聖土浄化魔法)で一瞬にして浄化し、清潔にして差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、駆除した害獣や土埃(※魔獣の残党)が周囲の部屋へ上がってこないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な床下点検口の養生と防音・防振シート(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 床下の作業は狭くて土埃が舞うし、大きな音が出ないように防音シートを張ってくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(地震の衝撃と地底の瘴気を完全に弾く特製ヘッドライト付きヘルメットと防塵ツナギ、安全靴)に着替え、手には巨大なネズミ捕りカゴと、頑丈な金属製のジャッキを握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象捕縛の神仙ネズミ捕り』と『絶対耐震の神仙床下ジャッキ』を持っていくよ! 世界の人たちの安全なお家を守るために、邪魔な害獣を捕まえて、家の基礎をピカピカにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、床下潜入・基礎工事仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が激しい地震でひび割れつつある大陸中部の『奈落の地溝帯』へと向けて出勤したのである。
***
その頃、大陸中部の『奈落の地溝帯』の奥深く。
世界の岩盤を食い荒らし、全ての生命を崩壊の奈落に沈める大地の悪夢『大地の貪食竜・テラ・グラトニー』が、巨大な顎で岩盤を粉砕しながら、傲慢な地鳴りを響かせていた。
「ゴゴゴゴゴ……! 素晴らしいぞ! この星の脆い地殻を全て喰らい尽くす我が顎さえあれば、地上の生命など一瞬で奈落へ真っ逆さまだ! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な崩壊と絶望を!」
貪食竜は、巨大な爪で大地を引き裂き、無数の岩喰いの地竜たちを地表へと放った。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に安住の地はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを食い荒らし、大陸全土を永遠の瓦礫の底に沈めよ!」
「我ら貪食の眷属の粉砕力は絶対だ! この崩壊の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
貪食竜が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、激しい地響きと地割れが続く地溝帯のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の大地震と地割れをものともせずにオフロードドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、ネズミ捕りとジャッキを持った青年の明るい声が、地鳴りのノイズを完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた床下のネズミ駆除と基礎のジャッキアップに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい基礎の齧られっぷりと、床下を走り回ってるタチの悪いデカいネズミ(地竜の魔獣)だね! こりゃ徹底的に駆除しがいがあるや!」
アルドは、ヘルメットのヘッドライトを点灯させながら、プロの床下業者の顔でダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対崩壊ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」
貪食竜が驚愕の地響きを上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら崩れゆく大地へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい床下を荒らし回るネズミ(地竜の群れ)どもから、綺麗に『害獣駆除』して差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の奈落で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ地底軍団ヲ『床下のネズミ』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ地竜群デ、貴様ラノ血肉ヲ永遠ニ噛ミ砕イテクレルワ!」
貪食竜の怒号と共に、地溝帯を覆うほどのドス黒い土煙と鋭い牙を纏った地竜群が、一斉にアルドたちに向かって致死の突進を放ちながら襲い掛かった。
「うわっ、このネズミ、すっごくデカくて歯が鋭い! 放置してたら家の柱が全部折られちゃって危ないぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣の群れを「異常繁殖して凶暴化したタチの悪い特大のドブネズミとモグラ」と完全に誤認し、ジャッキのハンドルを強く握りしめた。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。土埃やネズミの死骸が上に上がらないよう、まずは私が防音・防振シートを張ります」
シノンが音もなく跳躍し、地溝帯の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、地溝帯全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の床下工事用安全結界』が展開された。これで、致死の大地震や土砂崩れは一ミリたりとも外の大地へ影響を及ぼすことはない。
「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はネズミが撒き散らすガンコなバイ菌や悪臭(致死の腐敗瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に浄化して消臭いたしますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖土浄化魔法』が、超強力な床下用消臭・除菌スプレーの光のように周囲の狂気の土砂を包み込んだ。
「ギィヤアアアアッ!?」
万物を腐らせる土壌の毒は、その浄化の光のミストを浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害でフカフカな栄養満点の土へと変わっていく。
「フンッ! 魔力を抜かれたただのネズミなど、ただのツルハシのマトだ! そして、邪魔な害獣は私が綺麗に叩き潰してやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、無害化した魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「床下害獣粉砕斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔獣の岩石ボディの「地層の隙間」を完璧に見切り、まるで床下の害獣を一撃で仕留めるかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、ただの無害な砂利にしてしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ地竜ガ、タダノ『除菌スプレー』ト『ネズミ退治』ノ前ニ、一瞬デただの砂利ニサレテイクゥゥッ!?」
貪食竜は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの石ころ」に変わり、地盤が安定していく光景に、驚愕のあまり巨大な顎をガクガクと震わせた。
「よし、みんなのおかげでチョロチョロしてるネズミは片付いたね! あとは、あの一番デカくて基礎を齧ってる『ネズミの親玉(貪食竜)』の前に美味しいエサを入れたネズミ捕りを仕掛けて、捕獲するだけだ!」
アルドは、特製『事象捕縛の神仙ネズミ捕り』をガシャンと設置し、中におとりの『極上幻獣チーズ』をセットして、貪食竜の巨大な鼻先へとスッと押し出した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。ネズミ捕りカゴは星の核を覆う絶対不壊の金属から作られた次元捕縛檻であり、大宇宙のいかなる巨大質量や神話級の怪力すらも、物理的に『エサにつられて入る』だけで完璧に閉じ込める『究極の害獣捕獲ツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ粉砕スル『終焉ノ絶対貪食』デ、貴様ラゴト奈落ノ底ニ噛ミ砕イテクレルワ! ……ン? ナンダコノ美味ソウナ匂イハ……?」
貪食竜が残されたエネルギーを暴走させ、周囲の空間ごと全てを噛み砕く超巨大な顎を開こうとした瞬間、極上チーズの暴力的な香りに抗えず、スルスルと巨大な頭をカゴの中に突っ込んでしまった。
――ガシャンッ!!
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶地震ガ、タダノネズミ捕リデ捕獲サレタダトォォォッ!?」
「よし、ガンコなデカいネズミは綺麗に捕まえたぞ! 最後に、この『絶対耐震の神仙床下ジャッキ』を基礎の下に入れて、傾いた床をググッと持ち上げて……あ、そうだ。このネズミの親玉、綺麗に捕獲して躾けたら、凄く力持ちで地下を掘るのが得意みたいだね。ちょっと地下の空間を綺麗に掘り進めてもらえば、世界中の地下を安全に繋ぐ『超巨大な全自動・神仙地下鉄網&免震システム』にできそうだよ!」
アルドが傾いた地盤の下に神仙ジャッキを噛ませてキリキリと大地を水平に直し、捕獲した貪食竜に事象調律の首輪(安全運転モジュール)を取り付けて地下トンネル掘削係へとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた貪食竜の禍々しい崩壊と地震の魔力は、瞬く間に安定したエネルギーへと漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ崩壊ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【地下トンネルヲ安全ニ掘リ進メル為ノシールドマシン】ノヨウニ……!? イヤ、ジャッキデ基礎ヲ直サレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ耐震力ト、極上ノ地下交通網ヲ提供スル超大型地下鉄システム】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ安全ナ地盤ト便利ナ交通網ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙地下鉄」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした崩壊の化身は、アルドの「ネズミ駆除とジャッキアップ」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を噛み砕く禍々しい貪食竜は、気がつけば「奈落の地溝帯を強固で安全な地下ターミナルに変え、世界中のどんな地震も一瞬で吸収する免震基礎となり、安全で快適な地下鉄を24時間運行し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動地下交通・免震プラント(見た目は美しく輝く未来型の地下鉄駅と強固な岩盤)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な害獣と床の傾きの被害は片付いて、すっごく頑丈で地震にも強い立派な基礎になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちが安全な地下鉄でどこへでも行けるし、地震が来てもお家が揺れなくて安心だね。これで大陸の人たちも、毎日平和な家でゆっくり眠れるよ!」
アルドがジャッキを片付けて額の汗を拭うと、地溝帯を覆っていたドス黒い土埃は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく稼働する奇跡の地下鉄網と、ピタリと安定した強固な大地が広がっていた。
***
数日後。大陸中部を統べる諸国の王室や建築・交通ギルド本部。
各国の王たちは、地震被害が完全に解消され、前代未聞の超巨大な地下鉄網と免震インフラが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が世界を奈落に沈めるはずだった大地の貪食竜が、たった数時間で『完全なネズミ駆除』をされ、あまつさえ貪食竜が『超巨大な地下交通・免震インフラ』に転職して、国中の地盤と交通を完璧に独占しているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(床下害獣駆除と基礎・地下交通インフラ整備業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる地盤修復・地下交通・免震インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本のネズミ駆除料金はサービスさせていただいております。……が、貪食竜の完全浄化、地盤の再構築、そして『大陸全土に極上の安全と地下鉄網を供給する巨大地下インフラの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間交通・建築収益の九割と、地下鉄・免震ネットワークの独占プロデュース権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。大陸中部の奈落の地溝帯におけるネズミ駆除、および床下のジャッキアップ作業完了。世界を崩壊に沈める大地の貪食竜テラ・グラトニー(神話の厄災)を事象のネズミ捕りとジャッキで捕獲・補強し、立派な特大地下鉄・免震プラントへと改修。大地震と地盤沈下の修復を完了し、大陸全土の交通網発展と建築の安全性向上に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、地下交通・免震インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)、世界の視界と景観、食の鮮度(低温物流)、住環境と天候からの防壁、生命の癒やし(温泉)、世界の気候と空調管理、上下水道網、世界の資源循環とリサイクル、世界の光と電力(照明)に続き、ついに「大地の基礎と地下交通(免震)」の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の地底竜すら地下鉄に変える(物理的にネズミ捕りで捕獲した)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝のハンバーグの極上肉汁をたっぷり使った、サクサクの特製ミートパイだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のミートパイは、ことのほか肉の旨味が身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただの床下メンテナンス」は、世界崩壊の危機をただの害獣駆除として解決し、貪食竜の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の地下鉄・免震インフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に大地の基礎と地下交通の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のネズミ退治業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!




