第138話:ただの電球交換と、常闇の影魔神の強制イルミネーション化(総合ライフサポート企業の照明・電気設備メンテナンス)
第138話:ただの電球交換と、常闇の影魔神の強制イルミネーション化(総合ライフサポート企業の照明・電気設備メンテナンス)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底から野生の食欲を呼び覚ますような極上のスパイスの香り、そして揚げたての衣が放つ暴力的なまでの香ばしさと共に幕を開ける。
今日のアルドは、朝からキッチンの特大の寸胴鍋と深い揚げ鍋に向かい、見事な手際と火加減で『特製・天界豚の極厚ロースカツカレー〜数十種の星屑スパイス煮込み〜と、幻獣野菜の自家製ピクルス』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の森で育った天界豚の極厚ロース肉だ。分厚く切った肉を特製のフルーツ液に漬け込んで限界まで柔らかくした後、神仙小麦と天界卵、そして特製の粗挽きパン粉をたっぷりと纏わせ、幻獣のラードでカラッと二度揚げにする! ザクッとした衣の中に、噛めば肉汁が滝のように溢れ出す極上のトンカツだ! そしてカレーは、幻獣の玉ねぎを三日三晩アメ色になるまで炒め、星屑のスパイスを数十種類も独自にブレンドして煮込んだ、漆黒に近い超濃厚な無水カレー! 神仙米の銀シャリの上にカツを豪快に乗せ、その上からスパイシーな香りが脳髄を刺激するカレールーをたっぷりと回しかける! 付け合わせには、幻獣のキュウリやパプリカを星屑のリンゴ酢で漬け込んだ、酸味が爽やかな自家製ピクルス! 仕上げに特製のガラムマサラを振りかけて……熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、黄金色に輝く特大のカツが鎮座し、湯気と共に圧倒的なスパイスの香りを放つ大皿カレーをダイニングテーブルに運ぶと、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。
この極上カツカレー朝食、一口食べれば天界豚の極上のビタミンB1とカレーのスパイス群が全身の魔力回路を限界突破させ、ピクルスのクエン酸が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない闘争本能と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・エナジーフルコース』である。
「うむ……! このザクッとした衣を噛み破った瞬間に溢れ出す豚肉の甘みと、スパイシーで奥深いカレーのコクが織りなす圧倒的なビッグバン! そしてピクルスの酸味がもたらす無限の食欲ループ! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、部活帰りに定食屋で特盛りカツカレーを掻き込む男子学生のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、スプーンを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて額に汗を滲ませながら感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ラッシー(ヨーグルト飲料)が振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。東方の廃都の粗大ゴミ回収(機巧邪神のリサイクルセンター化)も終わって、世界中の資源がすっかり綺麗に循環するようになったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸北西部の『常闇の峡谷』における、極めて深刻な視界不良と大規模な停電被害に関するご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「北西部の深く暗い峡谷に、長年封印されていた『常闇の影魔神・エクリプス・ノクターン』が目覚めまして。あらゆる光を呑み込む絶対の暗闇を撒き散らし、周囲の大地から太陽の恵みを奪い去ろうとしております。さらにタチの悪いことに、その影魔神が生み出す『漆黒の影獣ども(※触れるものの光と熱を喰らう暗黒の魔獣群)』が峡谷から溢れ出し、人々の街に雪崩れ込んでは、街灯や家の明かりを全て消し去り、人々を永遠の暗闇の恐怖に突き落とそうと暴れ回っているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(常闇の影魔神だと……!? あれは世界の光を全て喰らい尽くし、星を生命が生きられない絶対零度の暗黒空間へと変貌させる神話級の影魔。それが覚醒したとなれば、北西部はおろか、世界の全生命が光を失い、凍てつく闇の中で発狂しながら死に絶える。本来なら全国家の光と炎の魔導士を総動員して命がけの超極大極光結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい切れた電球やショートした配線(影獣の群れ)の『徹底的な回収と撤去(粉砕と浄化)』と『停電の原因である配電盤の親玉(影魔神)のメンテナンス』、そして『新しい高寿命LED電球への交換と照明設備の改善』です。このまま放置すれば、夜道が暗くて転んだり、犯罪が増えたりして、人々が安全に生活できなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「街灯や家の電球が一斉に寿命で切れちゃって、街中が真っ暗になってるんだね! おまけに配電盤までショートして漏電の危険があるなんて、火事の原因にもなるし防犯上も大問題だ。明るくて安全な街並みを守るためにも、電球の交換と電気設備のメンテナンスはしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。道端に転がる鬱陶しい切れた電球(影の魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。邪魔なゴミを一つ残さず綺麗に叩き割って、ただのガラス屑以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を絶縁仕様のワイヤーカッターのように構えながら不敵に笑う。
「ええ。暗闇が撒き散らすガンコな静電気や漏電の危険(※致死の暗黒瘴気)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の接点復活スプレー(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして通電させ、無害化して差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、古い電球の破片やショートした火花(※魔獣の残党)が周囲の家へ飛散しないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な遮光カバーと絶縁シート(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 電気工事は感電しないように絶縁対策が大事だし、明るさを逃がさないようにカバーを張ってくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(暗黒瘴気と高圧電流を完全に弾く特製絶縁ゴム手袋と安全帯付き作業服)に着替え、手には巨大な脚立と、眩い光を放つ特大の電球を握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『絶対通電の神仙脚立』と『事象照破の高寿命LED電球』を持っていくよ! 世界の人たちの明るい夜を守るために、邪魔な暗闇を払って、照明をピカピカにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、高所電気工事仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が絶対の暗闇に覆われつつある大陸北西部の『常闇の峡谷』へと向けて出勤したのである。
***
その頃、大陸北西部の『常闇の峡谷』の中心。
世界の光を奪い去り、全ての生命を暗黒の底に沈める影の悪夢『常闇の影魔神・エクリプス・ノクターン』が、巨大な影の触手を蠢かせながら、傲慢な低周波のノイズを響かせていた。
「ズズズズズ……! 素晴らしいぞ! この星の忌まわしい光を全て呑み込む我が暗闇さえあれば、地上の生命など一瞬で恐怖に狂い死ぬ! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な絶対の夜を!」
影魔神は、巨大な影の腕を広げ、無数の漆黒の影獣たちを峡谷の外へと放った。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に希望の光はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを喰らい尽くし、大陸全土を永遠の盲目の牢獄に沈めよ!」
「我ら影魔の眷属の捕食力は絶対だ! この暗黒の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
影魔神が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、一寸先も見えない暗黒の峡谷のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の暗闇と空間の歪みをものともせずにヘッドライトをハイビームにしてドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、脚立と電球を持った青年の明るい声が、絶望のノイズを完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた電球の交換と電気設備メンテナンスに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい暗闇と、あちこちに転がってるタチの悪い切れた電球(影獣)だね! こりゃ徹底的に交換しがいがあるや!」
アルドは、絶縁手袋をキュッとはめながら、プロの電気工事業者の顔でダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対暗黒ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」
影魔神が驚愕のノイズを上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら暗黒の大地へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい道端に転がる切れた電球(影獣の群れ)どもから、綺麗に『回収・粉砕』して差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の常闇で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ暗黒軍団ヲ『切れた電球』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ影獣デ、貴様ラノ光ヲ永遠ニ喰ライ尽クシテクレルワ!」
影魔神の怒号と共に、峡谷を覆うほどのドス黒い影の魔獣群が、一斉にアルドたちに向かって致死の暗黒瘴気を放ちながら襲い掛かった。
「うわっ、この切れた電球、すっごく黒ずんでて変な静電気を出してる! 放置してたら漏電して火事になっちゃうぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣の群れを「寿命で真っ黒に焼き切れたタチの悪い古い白熱電球」と完全に誤認し、特大のLED電球を胸に抱えた。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。古いガラスの破片や漏電が外に広がらないよう、まずは私が絶縁・遮光カバーを張ります」
シノンが音もなく跳躍し、峡谷の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、峡谷全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の電気工事用安全結界』が展開された。これで、致死の暗黒瘴気や漏電の火花は一ミリたりとも外の大地へ漏れ出すことはない。
「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私は影が撒き散らすガンコな暗闇や接触不良(致死の暗黒瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に接点復活させて通電いたしますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光浄化魔法』が、超強力な接点復活スプレーの光のように周囲の狂気の影を包み込んだ。
「ギィヤアアアアッ!?」
万物を飲み込む暗闇は、その浄化の光のミストを浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの薄い影法師へと変わっていく。
「フンッ! 魔力を抜かれたただのゴミ電球など、ただのハンマーのマトだ! そして、邪魔な不良品は私が綺麗に叩き割ってやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、無害化した魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「廃電球粉砕斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔獣の影のボディの「繋ぎ目の隙間」を完璧に見切り、まるで古いガラス球を安全に細かく砕くかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、ただの無害な塵にしてしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ影獣ガ、タダノ『接点復活剤』ト『ゴミ回収』ノ前ニ、一瞬デただの塵ニサレテイクゥゥッ!?」
影魔神は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただのゴミ」に変わり、暗黒が晴れていく光景に、驚愕のあまり影の巨体を激しく明滅させた。
「よし、みんなのおかげで危ない切れた電球は片付いたね! あとは、あの一番デカくてショートしてる『配電盤とソケットの親玉(影魔神)』に脚立で近づいて、新しい電球をねじ込むだけだ!」
アルドは、特製『絶対通電の神仙脚立』をガシャンと設置し、影魔神の巨大な頭部へと向けて軽快に登り始めた。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。脚立は世界樹の最も強固な枝から削り出された絶対安定の台座であり、電球は大宇宙の創世の光を凝縮した絶対発光体。いかなる暗闇や神話級の絶望すらも、物理的に『ソケットにねじ込む』だけで完璧に光で満たす『究極の照明機器』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ盲目ニ変エル『終焉ノ絶対暗黒』デ、貴様ラゴト奈落ノ底ニ呑ミ込ンデクレルワ!」
影魔神が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全ての光を吸い込む超巨大なブラックホールを頭上に展開してきた。
「うわっ! ソケットの奥が、すっごく真っ黒に焦げ付いてショートしてる! でも、この特製LED電球の前には、どんなに深い暗闇も一発でピカッだ!」
アルドが影魔神の頭部のブラックホール(ソケット)に向けて特大のLED電球を押し込み、容赦なくキュッ、キュッ、ガチィィィッ!と限界までねじ込んだ。
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶暗黒穴ガ、タダノLED電球デ照ラシ出サレタダトォォォッ!?」
「よし、ガンコな暗闇は綺麗に吹き飛んで、バッチリ通電したぞ! 最後に、この『事象調律のスマートリモコン』で明るさを調整して……あ、そうだ。この照明の親玉、綺麗に電球を交換したら、凄く大きくて色んな色に光れる立派なタワーになってるね。ちょっとプログラムを組んであげれば、世界中の夜を安全で美しく照らしてくれる『超巨大な全自動・神仙イルミネーションタワー(超広域照明・発電インフラ)』にできそうだよ!」
アルドが影魔神のコアに事象調律のリモコンを向けてスイッチをオンにすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた影魔神の禍々しい暗黒と絶望の魔力は、瞬く間に光り輝くエネルギーへと漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ暗闇ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【夜道ヲ安全ニ照ラス為ノ極上ノ街灯】ノヨウニ……!? イヤ、スイッチヲ入レラレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ光量ト、極上ノ夜景ヲ提供スル超大型イルミネーション】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ光ト美シイ夜ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙タワー」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした暗黒の化身は、アルドの「電球交換と照明メンテナンス」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物の光を喰らう禍々しい影魔神は、気がつけば「常闇の峡谷を美しく輝く光の観光名所に変え、世界中のどんな暗闇も一瞬で優しい光で満たし、無限のクリーン電力を24時間提供し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動照明・発電プラント(見た目は巨大で七色に輝く美しいクリスタルタワー)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な停電と暗闇の被害は片付いて、すっごく明るくて綺麗なイルミネーションになったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちが夜でも安心して出歩けるし、電気代もかからないね。これで大陸の人たちも、毎日綺麗な夜景を見て、安心して眠れるよ!」
アルドが脚立を片付けて額の汗を拭うと、峡谷を覆っていたドス黒い闇は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく七色に輝く奇跡の光のタワーと、安全で明るい光で満たされた空間が広がっていた。
***
数日後。大陸北西部を統べる諸国の王室や魔法技術ギルド本部。
各国の王たちは、停電問題と暗闇が完全に解消され、前代未聞の超巨大な照明・電力インフラが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が世界を絶対の暗黒に沈めるはずだった常闇の影魔神が、たった数時間で『完全な電球交換』をされ、あまつさえ影魔神が『超巨大なイルミネーション・電力インフラ』に転職して、国中の照明とエネルギーを完璧に独占しているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(照明器具メンテナンスと電力インフラ整備業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる環境修復・電力・照明インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の電球交換料金はサービスさせていただいております。……が、影魔神の完全浄化、光の再構築、そして『大陸全土に極上の光とクリーン電力を供給する巨大タワーの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間エネルギー・観光収益の九割と、電力・照明ネットワークの独占プロデュース権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。大陸北西部の常闇の峡谷における電球交換、および照明メンテナンス作業完了。世界を暗黒に沈める常闇の影魔神エクリプス・ノクターン(神話の厄災)を事象のLED電球と脚立で通電させ、立派な特大イルミネーションタワーへと改修。光の喪失と停電の修復を完了し、大陸全土のエネルギー産業と夜間の治安維持に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、電力・照明インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)、世界の視界と景観、食の鮮度(低温物流)、住環境と天候からの防壁、生命の癒やし(温泉)、世界の気候と空調管理、上下水道網、世界の資源循環とリサイクルに続き、ついに「世界の光と電力(照明)」の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の暗黒神すらLED電球に変える(物理的にソケットにねじ込んだ)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝のカレーをちょっとアレンジした、サクサクの特製焼きカレーパンだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のカレーパンは、ことのほかスパイスの香りが身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただの電球交換」は、世界暗黒化の危機をただの照明メンテナンスとして解決し、影魔神の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の電力・照明インフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に光とエネルギーの覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の電気工事として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
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