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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第137話:ただの粗大ゴミ回収と、奈落の機巧邪神の強制リサイクルセンター化(総合ライフサポート企業の不用品回収・分別業務)

第137話:ただの粗大ゴミ回収と、奈落の機巧邪神の強制リサイクルセンター化(総合ライフサポート企業の不用品回収・分別業務)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底から優雅な朝の目覚めを約束する甘いバターとバニラの香り、そしてカリッと焼けたベーコンの暴力的な香ばしさと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特大オーブンと厚底のフライパンに向かい、見事な手際と火加減で『特製・世界樹の極厚フレンチトースト〜星屑のメープルシロップ掛け〜と、幻獣豚の厚切りベーコン、天界卵のフワフワスクランブル、そして幻獣カボチャの濃厚ポタージュ』を仕上げていた。

「よし! メインは、神仙小麦と大精霊の天然酵母で焼き上げた世界樹の極厚食パンだ。これを、天界鶏の産みたて黄金卵、幻獣の特濃ミルク、そして星屑のバニラビーンズをたっぷりと混ぜ合わせた特製のアパレイユ(卵液)に丸一日じっくりと漬け込む! 中まで完全に液を吸い込んだパンを、神仙バターを引いたフライパンで表面をカリッと香ばしく焼き上げ、仕上げにオーブンで中までふっくらと火を通す。ナイフを入れた瞬間、まるでプリンのようにトロける極上のフレンチトーストの完成だ! そこに、大精霊の森で採れた純度100パーセントの星屑メープルシロップを滝のように回しかける! 付け合わせには、幻獣豚の脂の甘みが際立つ極厚ベーコンのカリカリ焼きと、バターたっぷりで仕上げた天界卵の黄金スクランブルエッグ。そして、甘みが限界突破している幻獣カボチャを裏ごしして生クリームと合わせた、濃厚で熱々のポタージュスープ! 完璧なモーニングプレートの完成だよ!」

 アルドがエプロン姿で、黄金色に輝き、甘い湯気と共に暴力的なまでの幸福感を放つ特大のプレートをダイニングテーブルに運ぶと、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上モーニング、一口食べれば世界樹の小麦と卵のアミノ酸が全身の魔力回路を限界突破させ、カボチャのポタージュの圧倒的なビタミンとカロテンが血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・ブレックファースト』である。

「うむ……! このフレンチトーストの表面のカリッとした食感と、中から溢れ出すプリンのような卵液の圧倒的な甘みのビッグバン! そしてベーコンの塩気とメープルシロップが織りなす悪魔的な甘じょっぱさの無限ループ! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の朝に王都の高級ホテルのテラス席で優雅にブランチを楽しむ貴婦人のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、ナイフとフォークを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ダージリンティーが振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。地下水脈の配管の詰まり直し(汚泥海竜の浄水プラント化)も終わって、世界中の水がすっかり綺麗になったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸東方の果て、『鋼鉄の廃都』における、極めて深刻な不法投棄と粗大ゴミの不法占拠被害に関するご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「東方の古代遺跡の奥深くに、長年封印されていた『奈落の機巧邪神・スクラップ・カタストロフ』が目覚めまして。膨大な鉄屑と有毒な廃液を組み合わせて巨大な機械兵装を構築し、周囲の自然や街を片っ端から無機質なスクラップの山に変えようとしております。さらにタチの悪いことに、その機巧邪神が生み出す『鉄屑の殺人機兵ども(※触れるものを粉砕し同化させる自律型スクラップ群)』が廃都から溢れ出し、人々の街に雪崩れ込んでは、建物を破壊し、全てを瓦礫と鉄屑のゴミ山に変えようと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(奈落の機巧邪神だと……!? あれは世界の有機物を全て破壊して無機質な鋼鉄に置換し、星を生命が存在できない永遠の機械の墓場へと変貌させる神話級の機魔。それが覚醒したとなれば、東方諸国はおろか、世界の全生命が歯車と鉄屑に挽き潰されて死に絶える。本来なら全国家の雷鳴魔導士と重装騎士団を総動員して命がけの超極大電磁パルス結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい散らかった鉄屑や瓦礫(殺人機兵群)の『徹底的な粗大ゴミ回収(粉砕と分別)』と『不法投棄の親玉(機巧邪神)の解体と撤去』、そして『資源のリサイクルと景観の改善』です。このまま放置すれば、道端が危ないゴミだらけになって歩けなくなり、有毒なサビや油が土壌を汚染して、人々が安全に生活できなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「空き地に危ない鉄屑や壊れた機械の粗大ゴミが山積みになってて、不法投棄の温床になっちゃってるんだね! おまけに尖った金属片が散らかってて、子供たちが怪我でもしたら大問題だ。綺麗な街並みを守って、使える資源はしっかり分別してリサイクルするためにも、不用品回収とゴミ拾いはしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。道端に散らばる鬱陶しいデカいゴミ(鉄屑の機兵ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。邪魔なスクラップを一つ残さず綺麗に細断して、ただの鉄くず以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧を大型カッターのように構えながら不敵に笑う。

「ええ。ゴミが撒き散らすガンコなサビや漏れ出た油汚れ(※致死の重金属汚染と猛毒)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製のパーツクリーナー(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして洗浄し、無害化して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、鋭利な破片や有毒な廃液(※魔獣の残党)が周囲の街へ飛散しないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な飛散防止用ブルーシート(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 粗大ゴミの回収は破片が飛んで危ないから、しっかりブルーシートで養生してくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(重金属汚染と鋭利な刃を完全に弾く特製防刃作業着と安全靴、厚手の革手袋)に着替え、手には巨大なゴミバサミと、何でも入る特大のゴミ袋を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象分別の神仙ゴミバサミ』と『絶対圧縮のリサイクルゴミ袋』を持っていくよ! 世界の人たちの綺麗な街を守るために、邪魔な不法投棄を片付けて、鉄屑をピカピカの資源にリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、不用品回収仕様(特大クレーンと荷台付き)に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が鋼鉄のスクラップに覆われつつある大陸東方の『鋼鉄の廃都』へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、大陸東方の『鋼鉄の廃都』の中心。

 世界の生命を有機物から無機質な鉄屑へと変え、星を機械の墓場に沈める鋼の悪夢『奈落の機巧邪神・スクラップ・カタストロフ』が、巨大な歯車と鋼鉄の腕を軋ませながら、傲慢な駆動音を響かせていた。

「ギガガガガ……! 素晴らしいぞ! この星の脆い有機物を全て粉砕する我が鋼鉄の軍団さえあれば、地上の生命など一瞬でスクラップと化す! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な無機質の絶望を!」

 機巧邪神は、巨大な排気管からドス黒い廃煙を吹き出し、無数の鉄屑の殺人機兵たちを廃都の外へと放った。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に血肉の温もりはないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを挽き潰し、大陸全土を永遠の錆びた瓦礫の山に変えよ!」

「我ら機巧の眷属の粉砕力は絶対だ! この鋼鉄と汚染の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 機巧邪神が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な重金属の粉塵が舞う廃都のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の重力場と鋼鉄の防壁をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、ゴミバサミと特大ゴミ袋を持った青年の明るい声が、駆動音のノイズを完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた粗大ゴミの回収と不法投棄の撤去に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどいゴミの散らかりっぷりと、道端に放置されたタチの悪い鉄屑(殺人機兵)だね! こりゃ徹底的に分別しがいがあるや!」

 アルドは、革手袋をキュッとはめながら、プロの回収業者としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対鋼鉄ノ領域ニ、地上ノ有機物(虫ケラ)ガ何ノ用ダ!」

 機巧邪神が驚愕のモーター音を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながらスクラップの山へと降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい道端に散らばるデカいゴミ(殺人機兵の群れ)どもから、綺麗に『粗大ゴミ解体』して差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の廃都で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ機械軍団ヲ『粗大ゴミ』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ殺人機兵デ、貴様ラノ血肉ヲ永遠ニ挽キ潰シテクレルワ!」

 機巧邪神の怒号と共に、廃都を覆うほどのドス黒いサビと刃を纏った機兵群が、一斉にアルドたちに向かって致死のチェーンソーとドリルを振りかざしながら襲い掛かった。

「うわっ、このゴミ、すっごく尖っててサビだらけだ! そのまま素手で触ったら破傷風になっちゃって危ないぞ!」

 アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年の不法投棄でサビついたタチの悪い危険なスクラップの塊」と完全に誤認し、ゴミバサミの柄を強く握りしめた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。尖った破片や有毒な油が外に漏れないよう、まずは私が飛散防止用ブルーシートを張ります」

 シノンが音もなく跳躍し、廃都の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、廃都全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の不用品回収用養生結界』が展開された。これで、致死の重金属汚染や鋼鉄の破片は一ミリたりとも外の大地へ漏れ出すことはない。

「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はゴミが撒き散らすガンコなサビや廃液(致死の猛毒汚染)を、特殊クリーニングで綺麗に分解して無害化いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光浄化魔法』が、超強力なパーツクリーナーのミストのように周囲の狂気の鉄屑を包み込んだ。

「ギィガガガガッ!?」

 万物を汚染する重金属の毒は、その浄化の光のミストを浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害でピカピカに脱脂された綺麗な鉄へと変わっていく。

「フンッ! 魔力を抜かれたただの鉄クズなど、ただの金属カッターのマトだ! そして、邪魔なデカいゴミは私が綺麗に細断してやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、無害化した機兵の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「粗大破片細断斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、魔獣の鋼鉄ボディの「装甲の隙間」を完璧に見切り、まるで巨大な粗大ゴミをハンディカッターでサクサクと切り刻むかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、持ち運びやすいサイズのただのスクラップにしてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ殺人機兵ガ、タダノ『洗浄スプレー』ト『ゴミ解体』ノ前ニ、一瞬デただの資源ゴミニサレテイクゥゥッ!?」

 機巧邪神は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの綺麗な鉄片」に変わり、有毒な廃液が消え去った光景に、驚愕のあまりメインカメラのレンズを激しく点滅させた。

「よし、みんなのおかげで散らかってた危ないゴミは解体できたね! あとは、あの一番デカくて不法投棄されてる『ゴミの親玉(機巧邪神)』をゴミバサミで分別して、袋に詰め込むだけだ!」

 アルドは、特製『事象分別の神仙ゴミバサミ』を構え、機巧邪神の巨大な鋼鉄の本体へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。ゴミバサミは星の引力と斥力を操る絶対干渉武具であり、大宇宙のいかなる強固な装甲や神話級の質量すらも、物理的に『挟んで仕分ける』だけで完璧にパーツごとに分解する『究極のゴミ分別ツール』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ有機物! 我ガ本気、世界ヲ瓦礫ニ変エル『終焉ノ絶対粉砕アビス・クラッシャー』デ、貴様ラゴト奈落ノ底ニ挽キ潰シテクレルワ!」

 機巧邪神が残されたエネルギーを暴走させ、周囲の空間ごと全てを圧殺する超巨大な鋼鉄のプレス機を上空から落下させてきた。

「うわっ! ゴミの奥から、すっごく重くてデカい鉄骨が落ちてきた! でも、この特製ゴミバサミの前には、どんなにデカいゴミも一発でヒョイッだ!」

 アルドが落下してくる超絶プレス機(鋼鉄の塊)に向けて神仙ゴミバサミを伸ばし、容赦なくガシィィィッ!と挟み込み、そのまま「燃えないゴミ」として空中に放り投げた。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶プレス機ガ、タダノ火バサミデつまみ出サレタダトォォォッ!?」

「よし、ガンコなデカいゴミは綺麗に仕分けられたぞ! 最後に、この『絶対圧縮のリサイクルゴミ袋』に親玉の部品をポンポン入れて……あ、そうだ。このゴミの親玉、綺麗に解体してサビを落としたら、凄く高品質でレアな金属パーツの塊になってるね。ちょっとベルトコンベアと溶鉱炉を整備してあげれば、世界中の鉄屑を最高の資材に生まれ変わらせてくれる『超巨大な全自動・神仙リサイクルセンター(資源再生工場)』にできそうだよ!」

 アルドが機巧邪神のコアと良質なパーツを事象調律のリサイクルボックスに放り込み、事象固定の精製プラントへとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた機巧邪神の禍々しい汚染と破壊のエネルギーは、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ機械ノ墓場ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【鉄屑ヲ極上ノ純金ヤミスリルニ精製スル為ノ溶鉱炉】ノヨウニ……!? イヤ、分別サレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ再資源化ト、極上ノマテリアルヲ提供スル超大型リサイクルプラント】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ豊カナ資源ト無限ノ可能性ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙マテリアルセンター」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした無機質の化身は、アルドの「粗大ゴミ回収と分別作業」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を粉砕する禍々しい機巧邪神は、気がつけば「廃都を美しくクリーンな巨大エコプラントに変え、世界中のどんなゴミやスクラップも一瞬で最高級の建築資材や希少金属に錬成し、24時間提供し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動リサイクルセンター(見た目は巨大でピカピカに輝く未来型のクリーン工場)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌な不法投棄と有毒なサビの被害は片付いて、すっごく綺麗でエコなリサイクル工場になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちがいつでも新しくて頑丈な材料を使って家を建てたり道具を作ったりできるね。これで大陸の人たちも、ゴミのない綺麗な街で安全に暮らせるよ!」

 アルドがゴミ袋とハサミを片付けて額の汗を拭うと、廃都を覆っていたドス黒い重金属の粉塵は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく稼働する奇跡のエコプラントと、澄み切った空気が広がっていた。

 ***

 数日後。大陸東方を統べる諸国の王室や工業ギルド本部。

 各国の王たちは、ゴミ問題と汚染が完全に解消され、前代未聞の超巨大な資源錬成インフラが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が世界を機械の墓場に沈めるはずだった奈落の機巧邪神が、たった数時間で『完全な粗大ゴミ回収』をされ、あまつさえ機巧邪神が『超巨大な資源リサイクルインフラ』に転職して、国中の工業素材と廃棄物処理を完璧に独占しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(不用品回収とリサイクルインフラ整備業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる環境修復・資源再生インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の粗大ゴミ回収料金はサービスさせていただいております。……が、機巧邪神の完全浄化、汚染土壌の再構築、そして『大陸全土に極上の希少金属と資材を供給する巨大リサイクルプラントの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間工業・採掘収益の九割と、資源リサイクルネットワークの独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。大陸東方の鋼鉄の廃都における粗大ゴミ回収、および分別作業完了。世界をスクラップに沈める奈落の機巧邪神スクラップ・カタストロフ(神話の厄災)を事象のゴミバサミとリサイクル袋で分別し、立派な特大マテリアルセンターへと改修。重金属汚染と不法投棄の修復を完了し、大陸全土の工業発展と環境保護(SDGs)に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、資源再生インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)、世界の視界と景観、食の鮮度(低温物流)、住環境と天候からの防壁、生命の癒やし(温泉)、世界の気候と空調管理、上下水道網に続き、ついに「世界の資源循環とリサイクル」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の機械神すら分別ゴミに変える(物理的にゴミバサミで拾い上げた)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝のフレンチトーストのアパレイユが余ったから、たっぷりフルーツを入れた特製パンプディングだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のプディングは、ことのほかカラメルのほろ苦さが身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの不用品回収」は、世界瓦礫化の危機をただの粗大ゴミ回収として解決し、機巧邪神の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高のリサイクル・資源再生インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に資源循環と工業素材の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のゴミ出し業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

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