第136話:ただの配管の詰まり直しと、深淵の汚泥海竜の強制浄水プラント化(総合ライフサポート企業の水回り・配管メンテナンス)
第136話:ただの配管の詰まり直しと、深淵の汚泥海竜の強制浄水プラント化(総合ライフサポート企業の水回り・配管メンテナンス)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底から理性を溶かすような濃厚なチーズの香り、そして極上の豚肉がカリカリに焼ける暴力的な香ばしさと共に幕を開ける。
今日のアルドは、朝からキッチンの特大フライパンと巨大なパスタ鍋に向かい、見事な手際と火加減で『特製・幻獣豚の極厚パンチェッタと天界卵の濃厚カルボナーラ、世界樹のハーブと星屑トマトの彩りサラダ』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の森でどんぐりを食べて育った幻獣豚のバラ肉を、星屑の岩塩と神仙ハーブで三ヶ月間じっくりと塩漬け・熟成させた極上の特製パンチェッタだ。これを厚切りにしてフライパンで弱火からじっくりと炒め、脂の甘みを限界まで引き出しつつ表面をカリッカリに仕上げる! そこに、神仙小麦で打ったモチモチの極太生パスタを茹で上げ、パンチェッタの極上脂と絡ませる。火から下ろした絶妙なタイミングで、天界鶏の産みたて黄金卵の卵黄と、数百年熟成させた幻獣のペコリーノ・ロマーノ(羊乳チーズ)をたっぷりと混ぜ合わせた濃厚なソースを一気に投入し、余熱だけでトロトロのクリーム状に仕上げるんだ! 付け合わせには、世界樹の朝摘みハーブと、甘みが限界突破している星屑のフルーツトマトを、幻獣のオリーブオイルでサッと和えたサラダ! 仕上げに、パスタの上に特大の粗挽き黒胡椒をガリガリとたっぷりと挽いて……熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、黄金色に輝く濃厚なソースが絡んだ巨大なカルボナーラと、色鮮やかなサラダをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでのチーズと黒胡椒の香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。
この極上パスタ朝食、一口食べれば幻獣豚の極上のビタミンB群と天界卵のアミノ酸が全身の魔力回路を限界突破させ、熟成チーズの圧倒的なカルシウムとコクが血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・イタリアンフルコース』である。
「うむ……! この極太パスタに絡みつく卵とチーズの圧倒的な濃厚さと、カリカリのパンチェッタが弾ける暴力的なまでの肉の旨味! そして黒胡椒のピリッとした刺激が織りなす宇宙的ビッグバン! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の昼下がりにローマの下町でワイングラスを傾ける伊達男のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、フォークを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上エスプレッソが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。大陸南方のエアコン清掃(狂乱の熱砂風神の空調システム化)も終わって、世界中の気候がすっかり快適になったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸地下に張り巡らされた『大地の水脈』における、極めて深刻な水質汚染とヘドロの詰まり被害に関するご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「世界の地下水脈が交わる『深淵の澱み』に、長年封印されていた『深淵の汚泥海竜・アビス・リヴァイアサン』が目覚めまして。強烈な猛毒のヘドロで大地の血管たる水脈を完全に詰まらせ、世界中の水を腐らせようとしております。さらにタチの悪いことに、その汚泥海竜が生み出す『腐臭のヘドロ魔獣ども(※触れるものをドロドロに溶かす悪臭の粘体群)』が水脈から地上へと逆流し、人々の街の井戸や川から溢れ出して、全てを悪臭と猛毒の海に沈めようと暴れ回っているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(深淵の汚泥海竜だと……!? あれは世界の清らかな水を全て致死の猛毒に変え、星の生命の源を絶ち切る神話級の水魔竜。それが覚醒したとなれば、水脈はおろか、世界の全生命が飲み水を失い、腐敗した泥の中で渇きと猛毒に苦しみながら死に絶える。本来なら全国家の聖職者と水霊使いを総動員して命がけの超極大浄化・水脈遮断結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「各国の水道局からの要望は、この鬱陶しい配管に詰まった髪の毛や汚れ(ヘドロ魔獣群)の『徹底的なパイプ洗浄(粉砕と溶解)』と『詰まりの原因であるヘドロの親玉(汚泥海竜)のラバーカップによる貫通作業』、そして『排水トラップの清掃と水回りの改善』です。このまま放置すれば、排水溝から水が逆流して家の中が水浸しになり、ドブの臭いで人々が生活できなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「洗面所やお風呂の排水溝の奥に、長年の髪の毛や石鹸カスがドロドロになって詰まっちゃってるんだね! おまけに水が逆流してきて、下水の嫌な臭いまで上がってきてるなんて、衛生的にも最悪だし水漏れの原因になるから大問題だ。毎日綺麗なお水を使って気持ちよく生活するためにも、配管の詰まり直しとパイプ洗浄はしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。配管にこびりつく鬱陶しい固形のゴミ(ヘドロの魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。詰まりの核を一つ残さず綺麗に削り落として、ただのチリ以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧をパイプブラシのように構えながら不敵に笑う。
「ええ。ヘドロが撒き散らすガンコなヌメリや下水臭(※致死の猛毒瘴気)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製のパイプ洗浄液(※極大の聖水浄化魔法)で一瞬にして溶かし、除菌・消臭して差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、汚水やヘドロ(※魔獣の残党)が周囲の床へ飛び散らないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防水養生シート(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 水回りの修理は汚水が飛び散るから、しっかり防水シートを敷いてくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(猛毒と汚水を完全に弾く特製ゴムエプロンと長靴、厚手のゴム手袋)に着替え、手には巨大な柄のついたラバーカップ(スッポン)と、強力なパイプクリーナーのボトルを握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象開通の神仙ラバーカップ』と『絶対溶解の魔導パイプクリーナー』を持っていくよ! 世界の人たちの綺麗なお水を守るために、邪魔な詰まりをスッポンと抜いて、水脈をピカピカにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、水回りメンテナンス仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が猛毒の泥水に覆われつつある世界の地下水脈『深淵の澱み』へと向けて出勤したのである。
***
その頃、大陸地下の『深淵の澱み』の中心。
世界の清らかな水を猛毒に変え、全ての生命を腐敗の底に沈める水脈の悪夢『深淵の汚泥海竜・アビス・リヴァイアサン』が、巨大なヘドロの体を水脈に詰まらせながら、傲慢な濁音を響かせていた。
「ドロドロドロ……! 素晴らしいぞ! この星の血管を全て詰まらせる我が猛毒のヘドロさえあれば、地上の生命など一瞬で腐り落ちて泥に還る! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な死の汚水を!」
汚泥海竜は、巨大な泥の尾を振り回し、無数のヘドロ魔獣たちを水脈から地上へと逆流させた。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に清らかな水はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを詰まらせ、大陸全土を永遠のドブの底に沈めよ!」
「我ら泥竜の眷属の腐敗力は絶対だ! この猛毒の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
汚泥海竜が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な悪臭と泥水が渦巻く深淵のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の猛毒瘴気とヘドロの沼をものともせずにドリフト着水する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、ラバーカップとパイプクリーナーを持った青年の明るい声が、腐敗のノイズを完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 各国の水道局の方々からご依頼いただいた配管の詰まり直しとパイプ洗浄に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどいヘドロの詰まりっぷりと、排水溝から逆流してるタチの悪いゴミ(ヘドロ魔獣)だね! こりゃ徹底的にスッポンしがいがあるや!」
アルドは、ゴム手袋をキュッとはめながら、プロの配管業者としてのダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対腐敗ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」
汚泥海竜が驚愕の泥しぶきを上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら深淵へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい配管から逆流してきたゴミの塊(ヘドロ魔獣の群れ)どもから、綺麗に『削り落として』差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の地下水脈で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ猛毒水脈ヲ『配管の詰まり』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガヘドロノ魔獣デ、貴様ラノ血肉ヲ永遠ニ腐ラセテクレルワ!」
汚泥海竜の怒号と共に、深淵を覆うほどのドス黒いヘドロの魔獣群が、一斉にアルドたちに向かって致死の毒水と悪臭を放ちながら襲い掛かった。
「うわっ、このゴミ、すっごくドロドロしてて下水の嫌な臭いがする! 放置してたら床が水浸しになっちゃうぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年の放置で髪の毛と石鹸カスが絡み合ったタチの悪い排水溝のゴミ」と完全に誤認し、クリーナーのボトルの蓋をポンッと開けた。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。汚水や悪臭が外に漏れないよう、まずは私が防水養生シートを張ります」
シノンが音もなく跳躍し、深淵の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、地下空間全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の水回り修理用養生結界』が展開された。これで、致死の猛毒や悪臭は一滴たりとも外の地下水脈へ漏れ出すことはない。
「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はヘドロが撒き散らすガンコなヌメリや下水臭(致死の猛毒瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に溶かして消臭いたしますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖水浄化魔法』が、超強力なパイプ洗浄液の泡のように周囲の狂気のヘドロを包み込んだ。
「ギィヤアアアアッ!?」
万物を腐らせる猛毒瘴気は、その浄化の光と泡を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害で爽やかな香りのする石鹸水へと変わっていく。
「フンッ! 魔力を抜かれたただのゴミカスなど、ただのパイプブラシのマトだ! そして、邪魔なこびりつきは私が綺麗に削り落としてやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、泡に包まれた魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「配管汚泥削落斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔獣の粘体ボディの「結合の隙間」を完璧に見切り、まるでパイプの壁面にこびりついた汚れをブラシでゴシゴシと削り落とすかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、無害な水溜まりにしてしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノヘドロノ眷属ガ、タダノ『パイプ洗浄液』ト『ブラシがけ』ノ前ニ、一瞬デただの石鹸水ニサレテイクゥゥッ!?」
汚泥海竜は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの泡水」に変わり、猛毒の臭いが消え去った光景に、驚愕のあまり巨大な泥の体を震わせた。
「よし、みんなのおかげで手前のガンコなゴミは片付いたね! あとは、あの一番配管の奥で詰まってる『ヘドロの親玉(汚泥海竜)』にクリーナーをドバッと流し込んで、ラバーカップで一気に押し引きするだけだ!」
アルドは、特製『絶対溶解の魔導パイプクリーナー』のボトルを構え、汚泥海竜の巨大な本体へと向けて突撃した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。パイプクリーナーは星の浄化の海を極限まで濃縮した絶対溶解液であり、大宇宙のいかなる猛毒の泥や神話級の質量すらも、物理的に『かけて放置する』だけで完璧にドロドロに溶かす『究極の配管洗浄ツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ腐敗ニ変エル『終焉ノ絶対汚泥』デ、貴様ラゴト泥ノ底ニ沈メテクレルワ!」
汚泥海竜が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てを呑み込む超巨大な猛毒の渦を無数に巻き起こしてきた。
「うわっ! 配管の奥から、すっごくガンコな泥水が逆流してきた! でも、この特製パイプクリーナーとラバーカップの前には、どんなに詰まった汚れも一発でスッポンだ!」
アルドが汚泥海竜の巨大な本体に向けてクリーナー液を容赦なくドボドボドボッ!と注ぎ込み、すかさず『事象開通の神仙ラバーカップ』を巨大な渦の中心に押し当て、力の限り押し引きした。
――ズボォォォォンッ!! スッポォォォォォンッ!!!
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶汚泥渦ガ、タダノトイレ用スッポンデ引キ抜カレタダトォォォッ!?」
「よし、ガンコな詰まりは綺麗に流れていったぞ! 最後に、この『絶対浄化の事象トラップ』を配管の途中に取り付けて……あ、そうだ。この詰まりの親玉、綺麗に掃除して開通させたら、凄く勢いよく綺麗な水が流れるようになってるね。ちょっと水路を整えれば、世界中の人にいつでも美味しくて安全なお水を届けてくれる『超巨大な全自動・神仙浄水プラント(大地の湧水池)』にできそうだよ!」
アルドが汚泥海竜の本体があった場所に事象トラップ(下水臭と汚れを完璧に遮断する神仙の管)をカポッと嵌め込み、事象固定の濾過フィルターを設置して美しい泉へとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた汚泥海竜の禍々しい猛毒と腐敗の魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ腐敗ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【不純物ヲ完全ニ取リ除ク為ノ超高性能濾過システム】ノヨウニ……!? イヤ、ラバーカップデ通水サレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ浄化力ト、極上ノミネラルウォーターヲ提供スル超大型浄水プラント】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ清ラカナ水ト生命ノ源ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙上水道」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした腐敗の化身は、アルドの「パイプ洗浄とスッポン作業」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を溶かす猛毒の汚泥海竜は、気がつけば「深淵を美しく澄み渡る巨大な湧水池に変え、世界中のどんな汚染水も一瞬で純度100%の神仙水に浄化し、大地の水脈へと24時間送り出し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動浄水インフラ(見た目は美しく輝く神秘的な地下神殿の泉)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な詰まりと悪臭の被害は片付いて、すっごく綺麗で流れのいい配管になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちがいつでも蛇口から美味しいお水を飲めて健康だね。これで大陸の人たちも、毎日綺麗なお水でお料理したり、お風呂に入ったりできるよ!」
アルドがラバーカップを片付けて額の汗を拭うと、地下水脈を覆っていたドス黒い毒ガスは一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく透き通る奇跡の泉と、心地よい水の流れる音が広がっていた。
***
数日後。大陸を統べる諸国の王室や水道管理ギルド本部。
各国の王たちは、水質汚染が完全に解消され、地下水脈に前代未聞の超巨大な全自動浄水プラントが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が世界を猛毒の泥海に沈めるはずだった深淵の汚泥海竜が、たった数時間で『完全な配管の詰まり直し』をされ、あまつさえ汚泥海竜が『超巨大な浄水・上水道インフラ』に転職して、国中の飲み水と水脈を完璧に管理しているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(配管洗浄と浄水インフラ整備業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる水脈修復・上下水道インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本のパイプ洗浄料金はサービスさせていただいております。……が、汚泥海竜の完全浄化、水脈の再構築、そして『大陸全土に極上の清らかな水を供給する巨大浄水プラントの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間水道・インフラ収益の九割と、上下水道ネットワークの独占管理権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。大陸地下の深淵における配管の詰まり直し、およびパイプ洗浄作業完了。世界の水を腐らせる深淵の汚泥海竜アビス・リヴァイアサン(神話の厄災)を事象のラバーカップ(スッポン)とパイプクリーナーで開通させ、立派な特大浄水プラントへと改修。水質汚染の修復を完了し、大陸全土の公衆衛生と上水道インフラの発展に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、上下水道インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)、世界の視界と景観、食の鮮度(低温物流)、住環境と天候からの防壁、生命の癒やし(温泉)、世界の気候と空調管理に続き、ついに「世界の水資源と上下水道網」の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の猛毒海竜すら浄水プラントに変える(物理的にスッポンで引き抜いた)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、新しく湧き出た極上の天然水で淹れた、特製フルーツ水出し紅茶とシフォンケーキだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後の水出し紅茶は、ことのほか水の清らかさが五臓六腑に染み渡ろう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただの配管修理」は、世界腐敗の危機をただの水回りメンテナンスとして解決し、汚泥海竜の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の浄水・上下水道インフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に水資源とインフラの覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のトイレ・お風呂の詰まり直し業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
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