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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第135話:ただのエアコン掃除と、狂乱の熱砂風神の強制空調システム化(総合ライフサポート企業の空調設備メンテナンス)

第135話:ただのエアコン掃除と、狂乱の熱砂風神の強制空調システム化(総合ライフサポート企業の空調設備メンテナンス)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底から理性を吹き飛ばすような極上のニンニク醤油の焦げる匂い、そして肉の焼ける暴力的な香ばしさと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特大鉄板と巨大な土鍋に向かい、見事な手際と火加減で『特製・天界牛の極上ローストビーフ丼〜星屑のガーリックオニオンソース〜と、幻獣キノコの黄金清湯チンタンスープ』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の加護を受けて育った天界牛の特大ブロック肉だ。表面に神仙ハーブと岩塩を擦り込み、鉄板で全面をこんがりと焼き上げて肉汁を限界まで閉じ込めた後、低温でじっくりと火を通す。美しいルビー色に仕上がった極上のローストビーフを薄くスライスし、土鍋でふっくらと炊き上げた神仙米の銀シャリの上に、まるで大輪の薔薇のように何重にも重ねて盛り付ける! そこに、幻獣の玉ねぎと星屑のニンニクをたっぷりと使い、赤ワインと神仙醤油で煮詰めた特製のガーリックオニオンソースを、これでもかと回しかける! 中央には天界鶏の黄金の卵黄を乗せ、最後に黒胡椒をカリッと挽く。そして付け合わせには、幻獣の鶏ガラから極限までアクを引いて澄み切らせた黄金の清湯スープに、天界キノコと三つ葉を浮かべた一杯! 熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、肉の山がそびえ立つ巨大なローストビーフ丼と、透き通るようなスープをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでのニンニクと肉の香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上肉朝食、一口食べれば天界牛の極上の鉄分とアミノ酸が全身の魔力回路を限界突破させ、清湯スープの圧倒的な滋味とキノコの栄養が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・スタミナ満点フルコース』である。

「うむ……! このローストビーフの舌の上でとろけるような柔らかさと、ガツンと脳天を直撃するガーリックソースのビッグバン! そして卵黄を絡めた時の圧倒的なまろやかさの宇宙! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日のランチに奮発して高級焼肉店の特上丼を頼む若手社員のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、スプーンを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上黒烏龍茶が振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。大陸南西部の毒沼のお風呂掃除(灼熱の泥湯魔神のスーパー銭湯化)も終わって、世界中の公衆衛生と癒やしの環境がすっかり整ったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸南方の『焦熱と極寒の狂砂漠』における、極めて深刻な異常気象と気圧変動被害に関するご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「南方の広大な砂漠地帯に、長年封印されていた『狂乱の熱砂風神・デザート・サイクロン』が目覚めまして。強烈な熱風と絶対零度の吹雪を交互に撒き散らし、周囲の大地の気候をめちゃくちゃに破壊しております。さらにタチの悪いことに、その熱砂風神が生み出す『砂塵の悪魔ども(※触れるものを削り取る異常気象の竜巻群)』が砂漠から溢れ出し、人々の街に雪崩れ込んでは、家屋を吹き飛ばし、急激な温度変化で生命を奪おうと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(狂乱の熱砂風神だと……!? あれは世界の気象を完全に狂わせ、星を灼熱と極寒が入り混じる永遠の嵐の地獄へと沈める神話級の気象魔神。それが覚醒したとなれば、南方諸国はおろか、世界の全土が異常気象に見舞われ、全ての生命が温度差と竜巻で引き裂かれて死に絶える。本来なら全国家の天候魔導士と大精霊を総動員して命がけの超極大気候固定結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しいこびりついたホコリやカビ(砂塵の悪魔群)の『徹底的なフィルター掃除(粉砕と浄化)』と『変な風を撒き散らすエアコンの親玉(熱砂風神)の内部洗浄』、そして『室外機のメンテナンスと温度設定の改善』です。このまま放置すれば、エアコンが効かなくて部屋が暑かったり寒かったりするばかりか、カビの臭いで喘息になり、人々が快適に生活できなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「長年掃除してないエアコンの内部にホコリが詰まってて、カビが繁殖して温度調節のセンサーが壊れちゃってるんだね! おまけに室外機も調子が悪くて、変な音と風を出してるなんて、電気代の無駄だし健康にも最悪だ。一年中快適な室温で過ごすためにも、エアコンのクリーニングとメンテナンスは定期的にやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。エアコンから吹き出す鬱陶しいホコリの塊(砂塵の悪魔ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。こびりついたゴミを一つ残さず綺麗に叩き落として、ただのチリ以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧をハンディモップのように構えながら不敵に笑う。

「ええ。ホコリが撒き散らすガンコなカビや嫌な臭い(※致死の異常気象瘴気)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製のエアコン用カビ取りスプレー(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして洗浄し、除菌して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、洗浄液やカビの胞子(※魔獣の残党)が周囲の部屋へ飛び散らないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧なエアコン清掃用養生カバー(※絶対封殺の気象隔離結界)を張り巡らせておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! エアコン掃除は汚水が壁や床に垂れるから、しっかり養生カバーを被せてくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(異常気象と砂塵を完全に弾く特製防塵カバーオールとゴーグル、マスク)に着替え、手には巨大な高圧洗浄ガンと、エアコン専用の洗浄液を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象洗浄のエアコンクリーナー』と『絶対防カビの神仙フィルター』を持っていくよ! 世界の人たちの快適な室温を守るために、邪魔なホコリとカビを洗い流して、空調設備をピカピカにリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、空調設備メンテナンス仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が灼熱と極寒の嵐に覆われつつある大陸南方の狂砂漠へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、大陸南方の『焦熱と極寒の狂砂漠』の中心。

 世界の気候を破壊し、全ての生命を異常気象の地獄に沈める大地の悪夢『狂乱の熱砂風神・デザート・サイクロン』が、天を突くほどの巨大な竜巻を巻き起こしながら、傲慢な轟音を響かせていた。

「ゴォォォォッ……! 素晴らしいぞ! この星の気候を全て狂わせる我が嵐さえあれば、地上の生命など一瞬で灼熱に焼かれ、極寒に凍りついて砕け散る! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な死の気象を!」

 熱砂風神は、巨大な風の腕を振り上げ、無数の砂塵の悪魔たちを砂漠の外へと放った。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に穏やかな季節はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを吹き飛ばし、大陸全土を永遠の嵐の牢獄に沈めよ!」

「我ら風神の眷属の破壊力は絶対だ! この狂乱の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 熱砂風神が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な砂嵐と吹雪が吹き荒れる砂漠のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の暴風と温度変化をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、洗浄ガンとフィルターを持った青年の明るい声が、暴風のノイズを完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいたエアコンの内部洗浄とフィルター交換に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどいホコリの詰まりっぷりと、吹き出し口から出てるタチの悪いカビの臭い(砂塵の魔獣)だね! こりゃ徹底的に洗い流しがいがあるや!」

 アルドは、防塵ゴーグルを直しつつ、プロの清掃業者としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対狂乱ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 熱砂風神が驚愕の突風を吹き出す中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら砂漠へと降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい吹き出し口から出てきたホコリの塊(砂塵の悪魔の群れ)どもから、綺麗に『叩き落として』差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の狂砂漠で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ異常気象ヲ『エアコンのホコリ』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ砂塵ノ悪魔デ、貴様ラノ血肉ヲ永遠ニ削リ取ッテクレルワ!」

 熱砂風神の怒号と共に、空を覆うほどのドス黒い砂塵と氷を纏った魔獣群が、一斉にアルドたちに向かって致死の竜巻を放ちながら襲い掛かった。

「うわっ、このホコリ、すっごく大きくて変な臭いがする! 吸い込んだらアレルギーになっちゃって危ないぞ!」

 アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年の放置でカビと絡み合ったタチの悪い特大ホコリの塊」と完全に誤認し、洗浄ガンのノズルを構えた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。汚水やカビが外に漏れないよう、まずは私が養生カバーを張ります」

 シノンが音もなく跳躍し、砂漠の周囲を囲むように、無数の札(神仙の気象隔離結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、砂漠全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙のエアコン清掃用養生結界』が展開された。これで、致死の暴風や異常温度は一ミリたりとも外の大地へ漏れ出すことはない。

「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はホコリが撒き散らすガンコなカビや悪臭(致死の異常気象瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に分解して除菌いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光浄化魔法』が、超強力なエアコン用カビ取りスプレーのミストのように周囲の狂気の暴風を包み込んだ。

「ギィヤアアアアッ!?」

 万物を破壊する異常気象瘴気は、その浄化の光のミストを浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害で清らかなそよ風へと変わっていく。

「フンッ! 魔力を抜かれたただのホコリなど、ただのモップがけのマトだ! そして、邪魔なゴミは私が綺麗に叩き落としてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、無害化した魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「空調ホコリ粉砕斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、魔獣の風のボディの「気流の隙間」を完璧に見切り、まるでフィルターに詰まったホコリをバンッと叩き落とすかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に粉砕し、無害なチリにしてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ砂塵ノ眷属ガ、タダノ『カビ取り剤』ト『ホコリ落とし』ノ前ニ、一瞬デただのチリニサレテイクゥゥッ!?」

 熱砂風神は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただのゴミ」に変わり、異常気象の嵐が消え去った光景に、驚愕のあまり竜巻の巨体を震わせた。

「よし、みんなのおかげで外に飛び出たガンコなホコリは片付いたね! あとは、あの一番風を暴走させてる『エアコンの親玉(熱砂風神)』の内部に洗浄液を高圧で吹きかけて、奥のカビまで洗い流すだけだ!」

 アルドは、特製『事象洗浄のエアコンクリーナー』のガンを構え、熱砂風神の巨大な竜巻の本体へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。エアコンクリーナーは星の創世の清浄水を極限まで圧縮した絶対洗浄水流であり、大宇宙のいかなる異常気象や神話級の暴風すらも、物理的に『高圧で洗い流す』だけで完璧に汚れを吹き飛ばす『究極の空調設備メンテナンスツール』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ嵐ニ変エル『終焉ノ絶対狂風アビス・サイクロン』デ、貴様ラゴト虚無ノ底ニ吹キ飛バシテクレルワ!」

 熱砂風神が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てを引き裂く超巨大な真空の刃を無数に放ってきた。

「うわっ! エアコンの奥から、すっごくガンコな真っ黒い汚水が噴き出してきた! でも、この特製高圧洗浄ガンの前には、どんなにこびりついた奥の汚れも一発でザーッだ!」

 アルドが熱砂風神の巨大な本体の内部(アルミフィンの奥)に向けて洗浄ガンを向け、容赦なくバシュゥゥゥゥッ!と限界まで強力な水流を撃ち込んだ。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶真空刃ガ、タダノエアコン洗浄機デ洗イ流サレタダトォォォッ!?」

「よし、ガンコな内部のカビとホコリは真っ黒な水になって綺麗に流れ落ちたぞ! 最後に、この『絶対防カビの神仙フィルター』をカチッと取り付けて……あ、そうだ。このエアコンの親玉、綺麗に内部洗浄したら凄く静かで、心地よい風を広範囲に送れるようになってるね。ちょっと設定温度と風向きを調整すれば、世界中の気候を一年中ずっと快適な状態に保ってくれる『超巨大な全自動・神仙気候コントロールインフラ(特大エアコン室外機)』にできそうだよ!」

 アルドが熱砂風神の本体に神仙フィルター(事象を完璧に濾過する光の網)を被せ、事象調律のリモコンで温度を「快適な25度・自動運転」に設定してリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた熱砂風神の禍々しい異常気象の魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ嵐ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【部屋中ヲ適温ニ保ツ為ノ静音ファン】ノヨウニ……!? イヤ、温度ヲ設定サレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ空調管理ト、極上ノ快晴ヲ提供スル超大型気候コントロールシステム】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ快適ナ季節ト穏ヤカナ風ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙エアコン」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした狂乱の化身は、アルドの「エアコン内部洗浄とフィルター交換」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を破壊する嵐を呼ぶ禍々しい熱砂風神は、気がつけば「狂砂漠を美しく緑豊かなオアシスに変え、世界中のどんな異常気象も完全に制御し、常に快適なそよ風と適温の気候を24時間提供し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動気候コントロールセンター(見た目は巨大でスタイリッシュな超静音エアコン室外機)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌なホコリと変な温度の風の被害は片付いて、すっごく綺麗で空調が完璧なエアコンになったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちが暑すぎず寒すぎず、一年中ずっと快適に過ごせるね。これで大陸の人たちも、毎日気持ちいい風を浴びて、健康に暮らせるよ!」

 アルドが洗浄ガンを片付けて額の汗を拭うと、砂漠を覆っていたドス黒い嵐の雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく澄み渡る奇跡の青空と、心地よい適温のそよ風が広がっていた。

 ***

 数日後。大陸南方を統べる諸国の王室や気象観測ギルド本部。

 各国の王たちは、異常気象が完全に解消され、前代未聞の超巨大な気候コントロールインフラが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が世界を永遠の嵐に沈めるはずだった狂乱の熱砂風神が、たった数時間で『完全なエアコン掃除』をされ、あまつさえ熱砂風神が『超巨大な気象制御・空調インフラ』に転職して、国中の気候と四季を完璧に管理しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(エアコン清掃と気候コントロールインフラ整備業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる気象修復・空調インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本のエアコン清掃料金はサービスさせていただいております。……が、熱砂風神の完全浄化、気象の再構築、そして『大陸全土に極上の快適な気候を供給する巨大エアコンの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間農業・エネルギー収益の九割と、気象コントロールの独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。大陸南方の狂砂漠におけるエアコン清掃、およびフィルター交換作業完了。世界の気候を破壊する狂乱の熱砂風神デザート・サイクロン(神話の厄災)を事象の高圧洗浄機とカビ取り剤で洗い流し、立派な特大気候コントロールシステムへと改修。異常気象の修復を完了し、大陸全土の農業と生活環境の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、気候コントロールインフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)、世界の視界と景観、食の鮮度(低温物流)、住環境と天候からの防壁、生命の癒やし(温泉)に続き、ついに「世界の気候と空調管理」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の異常気象すらエアコン室外機に変える(物理的に高圧洗浄機でカビを洗い流した)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝のローストビーフの端っこを使った、極上の特製ビーフカツサンドだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のカツサンドは、ことのほかソースの香りが身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただのエアコン掃除」は、世界異常気象の危機をただの空調設備メンテナンスとして解決し、熱砂風神の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の気候コントロールインフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に世界の気象の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の家電メンテナンス業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

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